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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
4/15 浮遊大陸編
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 ルークと二人で高台の頂上に着くと、そこでアヤが待っていた。


「やっと来たね。二人共、準備できてる?」


「はい、いつでも大丈夫です」


「俺もいいぜ。始めるか?」


「うん、じゃあお願い」


 アヤはそう言い教団の力を開放して、背の両翼を羽ばたかせる。僕も同じく力を開放し、指を噛んで流した血を事前に増幅させておいた。ルークは上を見上げて拳に気力を込める。


「何も見えねえが……本当に届くんだな?」


「うん、歪みはすぐそこにあるよ」


「分かった。じゃあ、いくぜ」


 ルークは天に向かって拳を突き上げ、その拳は何もない空間を捕らえた。強烈な衝撃が上空へ伝わり、一瞬大気に亀裂が入ったようにも見える。僕はそれに合わせて血を操り亀裂に血を差し込もうとしたが、しかし途中で制御できなくなり周囲に散ってしまった。


「待て、アラン!駄目だ!」


 ルークの言葉に一度彼の方を見ると、その拳からは血が流れていた。今の一振りでかなりの反動を受けているようだ。


「くそ……もう一度だ。次は行ける」


「大丈夫なの?」


「ああ。技は出てる。あとは微調整だ」


 ルークは深く深呼吸をして、再び拳を構える。


 そして振り抜いた拳は空間を捉え、先ほどとも違う鋭く尖った衝撃を上空へと飛ばした。周囲には轟音が響き、今度ははっきりと打ち砕かれた空間を見た。僕は素早くその空間に血を滑り込ませると、教団の力を最大限利用することで穴をこじ開け、最後は血を硬化させて通路を作った。


 次の瞬間、強烈な上昇気流が吹き上げ、それと同時に腕を引かれる。


 全てが一瞬の事で、気付くと目の前には宙に浮く大陸が見えていた。僕はアヤに腕を掴まれ空を飛んでいて、すぐ隣ではルークも同様の状況で大陸を眺めている。


 大陸は全体が何かの結界で覆われていて、その結界に支えられ空中に留まっているようだ。


「上手くいったね!二人ともありがとう!」


「アヤさんは大丈夫ですか?重くないですか?」


「大丈夫!すぐに着くから!」


 そう言うアヤの手に少し力が入ったのか、彼女の鉤爪が僕の腕に食い込み血が流れた。彼女はそのことに気付いていない様子で、吹き抜ける風に乗り翼を羽ばたかせていた。




 大陸を覆っていた結界は、物理的には干渉されず通り抜けることができた。浮遊大陸に降り立つとそこは自然で満ちていて、上陸した場所も木々で囲まれた森の中だった。


「ごめん、強く掴み過ぎてた……」


 アヤは僕とルークの腕を放すと、そこから流れる血を見て謝罪する。


「大丈夫です。これくらいならすぐに治るので」


「ならいいけど……。ルークの腕は?」


 ルークの片腕は損傷が激しかった。一度目で既に相当の反動を受けていたが、同じ技を二度も撃ったのだから当然だ。


「右腕は暫く動かねえな。まあ、片腕あれば十分戦える。問題ねえよ」


「でも、あの技は暫く無理じゃない?」


「さすがにな。あれは右腕でしか打てねえ」


「じゃあ、とりあえず街に行こっか。ルークはそこで休んで、帰りのために回復させておいて」


「道が分かるのか?」


「もちろん。迷ったら飛べばいいから」




 森の中を進んでいると、前方から一頭の獣が現れた。犬のような外見で、向こうから襲ってくる気配は無い。


「なんだあいつ、気持ちわりいな……。あれが異形か?」


 ルークの言葉にアヤが頷く。


「うん、針金の犬だね。全身の毛が尖ってるけど、それくらいかな。そこまで危険はないと思う。血を採っておく?」


「そうしたいが、道具がねえ。襲ってこねえなら一旦無視だな」


「そうね、分かった」


 針金の犬、カオス領にあった異形の図鑑で見た姿だ。地上では絶滅したと言われる異形だが、この場所では今も生息している。過去に僕を殺したあの首の無い巨人も、この浮遊大陸から下の地上へ落下したのかもしれない。




 暫く歩くと森を抜けて街に出た。その街並みは地上のものと大差ないが、建物はほとんどが木造のようだ。


「じゃあ、適当に宿見つけて休んでて。私はやることがあるから」


 アヤはそう言いい立ち去ろうとしたが、僕は彼女を呼び止める。


「待ってください。何をしに行くんですか?」


「別に……ちょっと様子を見に行くだけ。この場所を離れてもう十年以上になるから」


「十年以上?そんなに前だったんですか?」


「そうだけど、なんで?」


「いえ……丁度重なるかもしれないと思って」


「重なるって、何が?」


「実は昔異形に襲われたことがあって……首の無い巨人の異形だったんですけど……」


「えっ……?地上で……?」


「はい、カオス領の街で……」


「何よそれ……。どういうこと……?」


「分かりません。ですが、この大陸と関係があるように思います」


「そうだね……。じゃあ、アランも一緒に行こう。ルーク、悪いけど一人で休んでて。色々確認したら戻るから」


 僕たちはルークを街に残し、二人で別の場所へと向かった。

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