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夜、自身の血で建てた高台の頂上にて、僕は床に寝転がって空いた天井から夜空の星々を眺めた。血の高台は既に雲の高さを超えており、星の光を遮るものは空間の歪み以外に何も無い。
『綺麗ですね。誰かと一緒にこんな景色を眺めることができるなんて、私は幸せです』
この前も見たと思うけど……ほら、ルークと一緒に。寮の屋上で。
『アラン様と視界を共有できるのは、力を開放している時だけですから』
じゃあ、普段は何も見えていないの?
『はい、基本的には見えません。アラン様の思考を読んだり、教団の力を感じ取ることはできますが、それだけです』
そうなんだ、知らなかったよ。
『瞳に宿る輝きは視界を共有している証です。失明してしまえば力を開放することもできなくなるので、他の所有者と戦闘する際は相手の目を狙うのも効果的かもしれません』
覚えておくよ。今日は長い間ずっと力を開放したままだけど、それは問題ないの?
『私の方は大丈夫です。アラン様自身に負担がないのであれば問題ありません』
なら良かった。暫くは開放が続くかもしれないけど、力を貸してほしい。
『はい、もちろんです』
十日後、僕たちは約束通りD地区八番街で合流した。
ルークは街からも見える山の上の巨大な高台を指さす。
「おい、何だあれ。お前が建てたのか?」
「うん。大変だったけど、どうにか天井まで伸ばせたよ」
「やるじゃねえか。あとは俺次第ってわけだな」
「調子はどう?」
「まあ、やってみるしかねえって感じだ。行こうぜ」
僕たちは三人で山を登り、そこから更に時間をかけて血の高台を登った。高台は内側側面に階段が続いていて、僕とルークはその階段を、アヤは飛行することで先に頂上へ向かった。
階段を登っていく途中、ルークが口を開く。
「竜の翼……あれが浮遊大陸に流れる血か」
「そうだね。教団の力ではないみたいだし、浮遊大陸出身っていうのは証明されたようなものだ」
「だとしたら、あいつはどうやって下へ来たんだ?」
「少なくとも、一人じゃないと思う。彼女は空間の歪みを突破する方法に対してずっと懐疑的だったから。自分は一度それを潜ってきている筈なのに」
「なるほど。何人かで協力して下へ来たんだな。その中に歪みを突破する力を持つ奴が居たってことか」
「だと思うよ。浮遊大陸で発達した戦闘技術の中に、歪みを突破するような技が完成している可能性が高いね」
「あり得るが……どうだろうな。個人的には無理だと思うぜ」
「えっ、どうして?」
「今俺たちの目の前にある空間が見えるか?この何もない空間をどうすれば破壊できると思う?形の無いものを破壊するってのはそういうことだぜ」
「あれ、でも君にはできるんだよね?」
「俺には皇国の血があるからな。拳で空間を捉えることもできる。だが、さっきの竜の力じゃどう考えても無理だろ」
「じゃあ、アヤはどうやって空間の歪みを潜り抜けたと思うの?」
「教団の力じゃねえのか?実際一人だけ心当たりもあるしな」
「え……誰のこと?」
「パールの王だよ。最近Sランクの魔物を撃退したって話で有名だろ」
「ああ、聞いたことはあるけど……」
「奴は空間制御の能力を使うらしい。それなら空間の歪みも突破できそうだろ?」
「確かに……。でもそれだと、浮遊大陸の出身者がパールを率いてることになる」
「だな。まあ、全部俺の勘だ。気になるならアヤに直接聞くのが早え」
「そうだね。時間があれば聞いてみるよ」




