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地下へ向かうとそこでアヤが待っていて、僕たちは二人で舟に乗りD地区を目指した。
途中アヤが不安そうな表情で口を開く。
「ねえ……ルークって何者?」
「え……?それは、学校の生徒ですけど……。僕は一年目からずっと一緒の班で、学校では一番の友達です」
「ふぅん……そういうのはどうでもいいけど。アランは試合して負けたんだよね?教団の力を持ってて負けるとか信じられないんだけど、ちゃんと全力でやったの?」
「全力でしたよ。教団の力も使って、その上で彼の方が強かったです」
「アランは力を使いこなせてるの?」
「分かりません。まだ数回しか使ったことが無いので。あの、ルークの力を疑ってるんですか?」
「そりゃ疑うでしょ。強いのは分かったけど、空間の歪みに穴を開けるなんて流石に難しいと思うし」
「ルーク本人ができると言っていましたから、多分できると思います」
「そう……。まあ、期待はしておくけど」
D地区八番街に到着しアヤと二人で地上へ上がると、僕は遠方の山を指さした。
「見てください。あの山がブラッドでは最高峰だと思います」
「へぇ、詳しいね。じゃあ、とりあえず二人で登ってみる?」
「そうしましょう。山頂から僕の能力で可能な限り高い台を作ります」
「そこから飛ぶってことね。分かった」
アヤと二人で山を登ると、道中魔物に遭遇した。ダイアウルフという名前で、見上げるほどの巨体を持つ狼のような外見の魔物だ。その瞳には紫色の光が宿っている。
突如として襲い掛かってきたので、僕は無防備な状態でダイアウルフの攻撃を受けた。魔物の強靭な爪が体を切り裂き、衝撃で体ごと吹き飛ばされる。すぐに体制を立て直し追撃に備えようとしたが、直後に魔物の首元から血が噴き出した。
ダイアウルフが上空に顔を向けると、その方向から強風が吹きつけ、再び魔物の首元に何かが突き刺さる。更に噴き上がる血と共にその巨体が地に伏すと、そこに立っていたアヤの姿は先ほどとは別人のようだった。彼女は上の服を一枚脱いでいて、背に竜の翼、手に鉤爪、体中に竜の鱗、瞳は黄緑色の輝きを宿している。
「大丈夫?結構大怪我に見えるけど?」
アヤの言葉に、僕は戸惑いながらも頷く。
「だ、大丈夫です……。これくらいならすぐに治ると思うので。それより、その姿は……」
「ああ、うん。浮遊大陸の人間には竜の血が流れてる。戦闘員は翼や鉤爪を使って戦うの」
彼女はそう言いながら翼や鉤爪をしまい、脱いでいた服を着なおした。それから不思議そうに僕を見つめる。
「で、貴方はどうしてすぐに力を使わなかったの?」
「まだ慣れていなくて……。すみません、ここからは油断しないように進みます」
「うん、そうして。多分まだまだ出てくるよ。ダイアウルフは血の匂いを嗅ぎつけるからね」
彼女の言葉の通り、その後も山頂までに何度かダイアウルフに遭遇した。その度にアヤが一人で討伐し、僕は全く力になれなかった。決して僕の力がダイアウルフに及ばないわけではないが、アヤの対処のスピードに僕は追いつけなかった。
山頂に着くと、アヤは空を眺めながら口を開く。
「着いたね……。高台作るなら私は見張りでもしてようか」
「はい、お願いします。大量に血を使うので、魔物が寄ってくる筈です」
僕は懐からナイフを取り出して自分の手首を切り、高台を建てる作業を始めた。
教団の力を開放し、血を増幅させて固める。これを繰り返すことでより高い足場を形成していく。血の匂いを嗅ぎつけて寄ってくるダイアウルフたちは全てアヤが対処し、僕は塔の建設に集中した。
日が暮れてきた頃、アヤが高台の頂上で作業をする僕の元を訪れた。
「凄い高さね……。登るだけで大変だったんだけど。今日はこれくらいにしない?」
「そうですね。アヤさんは街に戻っていてください。僕はここに居た方がいいと思います」
「魔物が襲ってきても対処できるようにってこと?この塔そんなに脆いの?」
「僕が離れることで脆くなってしまう可能性があるので……」
「そういうこと……。一人で大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、また明日来るから。アランもちゃんと休んでね」
アヤはそう言って上着を脱ぐと、翼を広げて空いた天井から飛び立った。僕は彼女を見送ると、そのまま高台を建てる作業を続けた。




