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翌日朝、学校にてヴィオラの元に呼び出された三人が揃い、彼女は早速依頼内容について話を始める。
「届いている依頼は浮遊大陸の調査だ。口で言うのは簡単だが、実際には不可能に近い。ランクも不定とされている」
「ランクが不定……そんな依頼が学校に?ルインブラッドの意図としては、やはりアヤさんに向けての依頼ということでしょうか」
「それが一番だとは思うが……。ルークにアラン、学校がこれほどの戦力を保有するのも稀だ。遊ばせるのはもったいないと思ったんじゃないか?」
「そうですか……。依頼内容としては調査だけですか?」
「いや、調査に加えて、そこに生息する異形の血を採取することも含まれている。異形という書き方は少し気になるが、特有の魔物という意味だろう」
「異形って……」
「何か気になるか?」
「……いえ、依頼の期限は?」
「アヤとルークの卒業までで構わない。期間中は登校も免除する。他に質問は?」
「僕は大丈夫です」
アヤとルークも頷き、その場は解散となった。
ヴィオラとの話を終え、僕たちは三人で学校を出た。
「ルーク、君の予感は多分当たってるよ」
「さっきの異形って奴の話か?何か知ってるのか?」
「以前カオス領で図鑑を見たことがあって、その存在についても少し話を聞いたんだ。確か、異形の血には強力な毒があって、触れるだけで感染し異形化してしまう。他者から他者へ伝染する、病のようなものだと聞いたよ」
「触れるだけでか……それは厄介だな。先に聞いておいてよかった」
しかしアヤは首を振って否定した。
「さすがに触れるだけじゃ何も起きない筈だけど……。浮遊大陸にそういう生物がいるのは確かよ」
「え……ああ、そうですか。じゃあ僕が聞き違えただけかもしれません」
「でも危険なことには変わりないし、異形の血が少しでも体に入れば助からないと思う。だから、生きて帰れる保証もない。引き返すならまだ間に合うけど、本当に大丈夫?」
「僕たちなら大丈夫ですよ。事前に危険と分かっていれば対策できますし、この三人ならどうにかなりそうな気がします」
「確かにそうね。ありがとう」
「それで、これからどうしますか?浮遊大陸がどこにあるか分かるんですか?」
「もちろん空にあるよ。地上からだと見えないのは、天井が邪魔しているから」
「天井……?」
「聞いたことない?上へ昇り続けるとやがて天井にぶつかって、形ある物はそれより上へ行けないの」
「初めて聞きました。じゃあ、その天井を壊して空を飛ぶことができれば、浮遊大陸に辿り着けるということですね」
「そうなんだけど、天井を壊すっていうのが問題で……天井自体には形が無いから、普通に攻撃しても当たらないと思う」
「そうですか……いまいちイメージできませんが……」
「天井の正体は空間の歪みだと言われていて、その歪みに入った物体は原型を留めることができない。何も通さない空間の層があるような感じかな」
アヤの言葉にルークが反応した。
「なるほど。穴を開けるくらいならできそうだ。アランの能力で人の通れるサイズまで広げるとして、あとは空を飛べれば……」
「それは私に任せて。二人くらい持ち上げて飛んであげる」
「そうか、なら決まりだ。集合場所だけ決めてくれ。俺の方は少し時間がほしい」
「集合場所……アラン、どこがいいと思う?」
「えっと……標高で考えればD地区八番街でしょうか。ルークはどれくらい時間がほしいの?」
「そうだな……まあ、十日くらいか……」
「分かった。じゃあ十日後にD地区八番街で集合しよう。それまでにこっちもできる準備を進めておくよ」
「おう、じゃあな」
ルークは僕たちの元を離れ、学校の方へと引き返していった。
「大丈夫なのかな……。アラン、私たちは先に行こうか」
「はい。その前に、妹にだけ挨拶してきてもいいですか?」
「分かった。じゃあ地下で待ってるから」
アヤは地下の方へと向かい、僕はアイカを探しに学校へ向かった。
アイカは演習室で彼女の班のメンバーと一緒に居た。僕は恐る恐る部屋のドアをノックしてアイカを呼び出し、二人で話せる場所へ向かった。
「急にどうしたの?」
「ごめん、依頼で遠出することになって……。今から出発するんだけど、いつ帰れるか分からなくて……」
「依頼?依頼を受けるのは最上級生からでしょ?」
「特例だと思う。今日の朝先生に呼ばれて……メンバーはルークと、あと最上級生のアヤさんの三人なんだけど……」
「アヤ……学内で最強かもって言われてた人だっけ。なんか凄い三人だね。どんな依頼なの?」
「それは……詳しくは言えないけど、ランクは不定みたいでかなり危険だと思う。もし帰れなかったら……」
「そうね。墓でも作って泣いてあげればいい?」
「あ、いや……」
「生きて帰れ。駄目だったら諦めればいいんだから」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、頑張って。帰ってきたら色々聞かせてね」




