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翌日、寮の一室で寝ていたところ、ドアを叩く音で目を覚ました。ベッドから起きて鍵を開けると、妹のアイカが中へ入ってきた。
「あれ、今起きたの?」
「うん……。何かあった?」
「いや、今日予定空いてるかなって」
「えっと、学校……」
「休みでしょ?」
「ああ、そっか……。じゃあ、空いてるけど」
「ならちょっと家の様子見に行かない?私もまだ行けてなくて」
「家の……。そうだね、分かった。すぐに支度するよ」
その日僕はアイカと二人で寮を出て、地下から舟でD地区三番街へと向かった。
街に到着し地上へ上がると、辺り一面に瓦礫が積み上げられていた。周辺には仮設テントがいくつか張られていて、復興へ向け動き出している様子だ。
瓦礫の中を歩きながら、アイカが口を開いた。
「ねえ、もし街が元通りになったらどうする?またここに戻って暮らす?」
「どうしようか……。卒業後、僕たちを受け入れてくれる部隊があればいいんだけど」
「あー、そっか……。部隊の立て直しもまだこれからだよね……」
「うん。今後その辺がどうなっていくかは分からないけど。また一から編成し直されるかもしれない」
「そうだね……。あ、私たちの家この辺じゃない?流石に何も残ってないか……」
アイカの言葉に足を止めたが、そこにあるのは変わらず瓦礫の山だ。
その場で暫く周囲を見渡していると、知っている人物が視界に入った。赤い髪にルインブラッドの仮面。統括と共にカオスへ来てくれた人だ。
仮面の男は僕に気付くと、こちらに近づき声をかけてきた。
「来ていたのか。あれからどうだ?学校には復帰できたか?」
「はい、問題なく。えっと、貴方はどうしてここに……」
「部隊の代わりだ。復興までは俺がこの周辺の魔物を対処することになっている」
「大変ですね……。いずれはまた正式な部隊が配置されますか?」
「そうだな、時間はかかるかもしれないが……」
「僕が学校を卒業できたら、この街の部隊の一員になれるでしょうか」
「それは……まあ、俺が決めることではないか。俺の口からお前の未来を決めつけるようなことは言えない。だが、力を持つ者の選択肢は案外狭いぞ」
「それって……」
「そっちは誰だ?恋人か?」
「いえ、妹です」
「家族ならまだいいか……。お前の今思った通りだ。統括がその力を見逃すとは思えない。じゃあ、俺はそろそろ行く」
赤い髪の男は僕たちの前から立ち去り、アイカは複雑そうな表情で口を開く。
「今の人、ルインブラッドの?」
「うん、あの仮面はそうだと思う」
「知り合いなの?」
「知り合いというか……カオスまで来てくれた人だよ。戦争中には学校へ来て、生徒に指示を出していた」
「そうなんだ……。何か、探してたのかな」
「え……?」
「いや、なんかそんな風に見えたけど。ここには瓦礫しか無いし、魔物の捜査ってわけでもないんじゃない?」
「確かに……。あれ、そういえば……この街って、どうして焼かれたんだっけ……」
「戦争だからでしょ?」
「いや……確か、カオスは目的を果たしたって……」
「ん?何の話?」
「蒼炎がそんな話をしていたような……」
結局、カオスの目的とは何だったのだろうか。住民を避難させたのは殺しが目的ではなかったから。僕を倒した後で侵攻をやめたのは、戦争に勝つことが目的ではなかったから。恐らく蒼炎はこの街を焼き払うことを目的としていた。この街には元々カオスにとって都合の悪い何かがあって、燃やされたそれの断片を今ルインブラッドが探している……。
あるとしたら、恐らく研究資料だ。D地区三番街では以前から、不死の浄血という特殊な血の研究が行われていた。




