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試合後、僕は医務室へ運ばれ暫くして意識が戻った。側では妹のアイカが椅子に座っていて、目を覚ました僕に気が付く。
「あ、起きた。帰って早々決闘とか、やめてよね……」
「アイカ……。無事でよかった……」
「こっちのセリフなんだけど。戦争で私が逃げた後、何があったの?どうしてカオスに連れていかれたの?」
「僕が負けたからだよ……。命が助かったのはカオスの慈悲だ。アイカも、街も、そこに住んでいた人も、僕が守ったわけじゃない」
「でも、カオスの炎の人を撤退させたんだから、凄いことじゃない?」
「それも違う。蒼炎が退いたのは、きっと僕が与えたダメージとは何の関係もない。腕一本折ったくらいで彼は退かない。その程度の負傷で戦えなくなったりしない……」
「そう……まあ、なんでもいいけど。とりあえず、生きて帰ってきてくれてありがとう。家は燃えちゃったから、暫く寮で過ごすことになるけど」
「寮って、学校の?」
「うん。戦争で帰る場所がなくなった生徒はみんなそこに居るよ」
「じゃあ、シルベも?」
「え、ああ……あの人ね。居るんじゃない?たまに見るし。なんでそんな気に掛けるの?」
「それは……同じ班だし、同じ街の出身だから」
「それだけ?」
「それだけじゃない。僕はシルベのことを尊敬してる。一人の戦闘員として、彼女は誰にも持っていない力を持ってるから」
「へえ……よく分かんないけど。好きってこと?」
「えっ……まあ、そうだね。そう聞こえたのなら、そうかもしれない」
「ふうん。うまくいくといいね。じゃあ、私そろそろ寮に戻るから」
「うん、ありがとう。話せてよかったよ」
アイカは医務室を出ていこうとしたが、何かを思い出したように立ち止まる。
「あ、そういえば。さっきルークって人もここに居たよ。私が入ったらすぐ出て行っちゃったけど」
「ルークも?治療を受けていたの?」
「そうだと思う。体中に包帯ぐるぐる巻いてたし。でも……あの人、どうなるんだろうね」
「どうって?」
「だって、もう学校には居場所無いでしょ?最悪除籍もあり得るんじゃないかってみんな言ってるけど。それだけ。じゃあね」
アイカが医務室のドアを開けると、外に誰か居たのか、彼女は軽く会釈して、良かったですね、と呟いた。それからすぐにその人、シルベが医務室へ入ってきて、さっきまでアイカの居た場所まで来ると、彼女は頬を赤く染めながら申し訳なさそうな表情をする。
「あ、アラン君……体、大丈夫?ごめんね、ちょっとだけ聞こえちゃって……」
「大丈夫だよ。来てくれてありがとう」
「ううん、そんな……。今の子、アイカちゃんだっけ。兄妹なんだよね」
「うん。元気そうでよかったよ。三番街で大勢の戦闘員が亡くなったって聞いてたから……。シルベも、無事でよかった」
「私は、何もできなくて……。アラン君も、アイカちゃんも、ほんとに凄いよ……」
「いや、僕が初めから戦闘に参加できていれば……そこにシルベが居てくれたらきっと勝てたよ。あの日は少し早く登校したせいで、街へ戻るのにも時間がかかって……本当にごめん」
「そんな、全然……。アラン君はいつも私のこと過大評価するから……。あの、そういえば、さっきの話なんだけど……」
「さっきの?」
「うん、アイカちゃんと話してたこと。ちょっとだけ聞こえちゃって……」
「ああ……ルークについては、僕もまだよく分かっていなくて……」
「えっ、あ……ルーク君のこと……?それも、心配だよね……」
「うん、さすがに除籍は無いとは思うけど……。どうしてルークに批判が向くのかはだいたい分かるよ。でも、僕は彼の力がこの学校でも認められるべきだと思う」
「そうだね。私もそう思う」
皇国の戦闘技術に関しては学校の座学で多少触れている。だからあの場で観戦していた生徒たちは、ルークが明らかに皇国の技を使っていることに気付いた。僕もカオスの蒼炎から教わった剣術を戦闘に用いたが、それとはわけが違う。
ブラッドの戦闘技術はブラッドの血が流れているからこそ扱えるものだ。ブラッドで戦闘技術を学ぶには、その血を引く人間でなければならない。
それは他勢力でも同じこと。カオスの技にはカオスの、皇国の技には皇国の血が必要だ。僕が教わった剣術は蒼炎が個人で培ったものに過ぎず、努力次第で誰でも身につけれらるものだ。しかし、ルークの扱った格闘術は完全な皇国の技に当たる。僕が努力したところで習得できない、皇国の人間にしか扱えない技だ。
あの試合で、ルークは皇国の人間であることが示された。ブラッドの技も扱えることを考えると、恐らく混血なのだろう。それを公表したことが問題なのではなく、悪かったのはタイミングだ。
ブラッドは今回の戦争でカオスと和解しているが、皇国に一部領地を奪われている。現状ブラッド領内ではカオスよりも皇国に敵意が向いていて、実際に戦地で戦った学校の生徒であれば尚更不満は強い。今その不満がルークに向けられようとしていて、だから彼は居場所をなくしてしまうかもしれないのだ。




