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不意のことで驚いたが、ルークを切り裂いた剣が手から離れ宙を舞った。すかさず僕が体の前で両腕をクロスすると、そこへ強烈な打撃が叩き込まれる。かなりの強度で固めた筈の手甲が砕け、あまりの衝撃に僕は体ごと吹き飛ばされた。そのまま闘技場の壁に打ち付けられ全身に痛みが走る。
カウンター……今のは拳か?それより、手甲が砕かれたのは何故……。以前とは比べ物にならない強度だった筈だが……。
その場に立ち上がりルークの方を見ると、彼の足元で固めた血も割れていた。しかし彼の体の出血は完全には止まっていない。傷の再生も無限ではないが、しかしそれが攻撃を捨ててまで伸ばした力だとしたら、尽きるのが早いようにも感じる。
硬化、軟化、増幅といった操作が一切できず、再生力すら微妙。変わりにあるのは謎の腕力や脚力……。彼は、本当にブラッドの戦士なのか?
ルークは表情を変え、立ち上がった僕を見て両拳を構える。
僕は彼に近づきながら砕けた手甲と剣を再構築し、教団の力によって限界まで強度を上げた。
一定の距離までルークに近づくと、彼は突如目の前から姿を消した。次の瞬間、真横から拳による打撃を受け、僕はその衝撃に怯む。すぐさま剣を横に一振りしたが、ルークは跳躍することで避け、そのまま空中で蹴りを放つ。この一撃を僕は剣で受け流し、今度は素早く縦に剣を振った。跳躍の隙を突いたと思ったが、剣は虚しく空を切る。
空中で回避された……身体能力が高いというレベルではないが、考える余裕もない。当たらないのなら捕らえればいい。
彼が着した瞬間、僕は地面の血だまりを増幅、硬化させることで彼の動きを止めた。それから渾身の力を込めて剣を素早く二度振り上げる。X字型に放たれた斬撃は再びルークの体に再び深い傷を刻んだが、ほぼ同時に僕の腹部に拳が突き刺さった。
ルークは雄たけびを上げながら拳を振り抜き、僕は一歩だけ後退する。その後で口から大量の血を吐き出し、地面に膝を着いた。吐き出した血が鎧の隙間から溢れ、地面に広がっていくのが見える。
これで明白になった。今のは鎧貫きという技で、皇国で発展している格闘技術の一つ。彼が扱っているのは単なる体術ではなく、本場皇国の、本物の技だ。
ルークは斬撃を受けた箇所を手で押さえながら僕から一度距離を置く。僕も痛みを我慢してどうにかその場に立ち上がった。
今は試合に集中しよう。余計なことは考えなくていい。勝つだけなら、いくらでも方法はある。
僕は地面の血を急激に増幅させ、ルークの周囲を血の壁で囲った。そのままルークを血の中に沈めようとしたが、彼が拳を振るうと血の壁の一部が消し飛んだ。その穴を潜ることで包囲をかわし、まだ僕と距離がある状態で拳を振るうと、彼の拳は何もない空間を捕らえた。そこから生み出された衝撃により一定空間内へ強烈な圧がかけられ、それを正面から受けた僕は瞬間的に息が詰まり体の動きを封じられる。
ルークはすばやく僕との距離を詰め大きく踏み込むと、再び拳を振りかぶった。僕は即座に血の糸で自身の体を縛り、無理やり体を動かすことで剣を振ったが、しかし彼の拳はまたしても何もない空間を捕らえる。そこから生み出される衝撃に僕の動きは再び停止し、剣と鎧に亀裂が入った。
僕はどうにか頭回転させて、ルークの背後にある血から槍を生成し、放つことで彼の背中から体の中心を貫いた。ルークの体から血が噴き出し一瞬倒れかけたようにも見えたが、しかし彼は再び雄たけびを上げて拳を振り抜く。その一撃は僕の頭部を完璧にとらえ、僕はよろめきふらふらと後方に倒れた。同時に鎧、剣、全ての武装が溶けていき、瞳からは教団の輝きが消える。
最後に見たのは拳を掲げて叫ぶルークの姿。その光景に観戦席の声援は止み静まり返っていた。息をのんでいるのではない。そこにあるのは怒りだ。
ルークは宣言通り僕に勝利し、そして僕の宣言通り、ルークはこの学校で積み上げてきたものを失うことになった。




