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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
3/15 帰還
15/132

15/132 (1/12)

 翌日、ブラッドからの迎えが来た。


 僕は女王、蒼炎、ミラに別れを告げ、ブラッドの使者二人と共に帰りの馬車に乗り込む。


 ブラッドの二人はどちらも教団の力を宿した男で、一人は仮面を被り、もう一人は遮光眼鏡をかけていた。


 馬車の中で遮光眼鏡の男が口を開く。


「よく生きていてくれたな。それに、案外元気そうじゃねえか」


「はい。本当に、良くしてもらえて……」


「なるほど。カオスの女王はお前を取り込むつもりだったみてえだな。まあ、うまく交渉できて良かった。これでブラッドは巨大な戦力を失わずに済む」


「巨大な戦力……僕のことですか?」


「無論だ。お前はその力でカオスの蒼炎と交戦し、ブラッドから撤退させた。とんでもねえ功績じゃねえか。学校の生徒の中にこれほどの逸材がいたとは驚いたぜ」


「でも、街はもう……」


「そうだな、Dの三は焼き払われた。街の部隊も壊滅し、かなりの戦闘員が戦死している。だが、住民はほとんどが無事だ。復興に向けてすぐに動き出せる」


「そうなんですか?」


「ああ。街を焼かれる前、避難する時間があったそうだ。カオスの女王は色々と見越していたんだろう」


「元々和解を考えていたから、住民には手を出さなかったんですね」


「恐らくな。そして全てが女王の思い通りに進んだ。旧カオスの王は死に、ついでにブラッド統括も巻き添えで死んだ」


「ブラッドの統括も?じゃあ、次期統括は……」


「俺だ。カオスと和解交渉を進めていたのもな。正直、カオスの王が変わってくれて安心したぜ。あの女王でなけりゃ和解なんてできなかったからな」


「ブラッド側の戦況が悪かったということですか?」


「まあ、そうだな……。カオスとの戦争に限って言えばほとんど五分だったんだが……。皇国から侵攻を受け街を一つとられた。さすがに二勢力まとめて相手にはできず、交渉に出るしかなかったわけだ」


「そういうことですか……」


「皇国を許す気はねえが、今の俺たちに奴らと戦えるだけの戦力はねえ。だからこそ、お前を失わずに済んで良かった。本当によく戻ってきてくれたな」


「いえ、そんな……」


 仮面の男の方を見ると、彼は黙って外を眺めていた。赤い髪にルインブラッドの仮面。恐らく開戦の通達で学校に来ていた男だ。


 以前はイコルの反応が無かったように思うが……。


『新たに力を得たのではないでしょうか?』


 戦争中に?


『継承かもしれませんね。教団の力は他者へ受け継ぐことができますから』


 そうか……つまり、戦地で亡くなった所有者から力を受け継いだということ?


『可能性の話ですが』


 仮面の男は恐らくルインブラッド直属の戦士。現統括である遮光眼鏡の男がカオスへ赴くのは分かるが、何故ルインブラッドの戦士を連れているのだろうか。


 もしかしたら遮光眼鏡の男もルインブラッドの関係者かもしれない。だとすれば、ブラッドのトップに立つ人間がルインブラッド側の人間ということになり、それはブラッドという組織の体制が大きく変化したことを意味する。




 僕たちはブラッド領に入ったところで馬車を降り、そこからは地下水路を使った。


 舟での移動中、赤い髪の男が口を開いた。


「アスラ、少年に能力のことを聞かないのか?」


 アスラと呼ばれた遮光眼鏡の男は、口元に笑みを浮かべる。


「それを聞けば、俺は今すぐにでも動くかもしれねえ」


「ああ、だろうな。そうすると思っただけだ」


「本人が望まねえだろ。こいつは何のために戦地を生き抜いた?何のためにブラッドに帰った?」


「本人の意思を尊重すると?らしくもない」


「今の俺は統括だからな。ぬるいと思うか?」


「いや、今更と思っただけだ」




 暫くして舟は学校付近に到着した。その場で僕だけが舟を降り、二人とはそこで別れた。


 地上へ上がると教師のヴィオラが立っていて、彼女は笑顔で僕を抱きしめる。


「おかえり、アラン。無事でよかった」


「先生……」


「皆がお前を待っている。班の奴らも心配している」


「みんな無事ですか?シルベとアイカは……」


「無事だよ。お前が守ったんだ。本当によく戦ったな」




 僕は教師と二人で学校へ向かった。講義室の一つに入ると五年目の生徒達が迎えてくれたが、しかしその人数はいつもの演習のときより少ない。


「他の生徒は演習場ですか?」


「いや。全員集まっている」


「え……?でも……」


「残念だが、五年目の生徒はこれで全員だ。班二つと五名、合計十三名が戦地で命を落とした。今後はこのメンバーで過ごすことになる」


「そう、ですか……」


「失ったものは大きいが、受け入れるしかない。これが戦いに身を置くということだ。さあ、班のところへ戻れ」


「はい……」




 僕が班の元へ向かうと、ルークが目の前に立った。


「よお、アラン。また会えて良かったぜ」


「僕の方こそ。ルークも無事だったんだね」


「当たり前だろ。だが、そんなことはどうでもいい。お前の話は聞いてる」


「話って?」


「カオスの蒼炎って奴と戦闘して撤退させたらしいな。蒼炎はカオスの戦闘員の中でも特別警戒されていた男らしいぜ?」


「そうなんだ。確かに、ブラッドは炎に弱いからね」


「その蒼炎を、お前はどうやって止めたんだ?」


「止めたというか……えっと……」


「なんだよ」


「いや、教団の力を使った。それでどうにか対抗できた」


「教団、か……。お前はいつからその力を持ってんだ?」


「ずっと前からだけど……」


「そうか……まあ、そうだろうな。急に手に入るような力でもねえ。隠してやがったのか?」


「違うよ……でも、そう取られてもおかしくはないね」


「なら、これまでずっと手を抜いていたんだな?俺との実践でも」


「それは……どうだろう……」


 僕がルークから目を逸らすと、彼は僕の胸倉を掴んだ。


「なあ、アラン……お前がどんな力を持っていようと、戦争でどれほどの戦果を上げていようと、別に興味はねえんだ。周囲の連中と同じように賞賛してやってもいい。だがな、俺との試合で手を抜くことだけは許さねえ」


「ああ……君はそういう性格だったね……」


「俺と戦え。全力で」


「いいよ。でも、君がこの学校で積み上げてきたものを壊すことになる」


「はっ、言うじゃねえか。安心しろ。俺が負けることはねえからよ」

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