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後日、ブラッドへ帰る日が決まった。城へ来て既に三十日以上、ここでの生活にも慣れ、剣の腕も上達した頃だった。
その日、ブラッドへの帰還を翌日に控え、僕は別れの挨拶のため教会へと向かった。シスターに街を離れることだけ伝え、その後すぐに教会を去ろうとしたが、一人の人物が目の前に立ちゆく手を阻む。白いローブを着た長身の女性で、蒼炎と同じく他の戦闘員と比べ装飾品の数が少ない。
『アラン様、所有者です』
所有者って……教団の?
『はい。マルコシアス教団の力……狼化する能力のようです』
その女性は笑みを浮かべ、僕に向かって口を開いた。
「お前がアランか?弱そうな目だ。所有者とは思えねえな」
「何か、用ですか?」
「用ですか、だと?お前、戦地に居たか?どこで戦っていた?」
「……D地区三番街ですけど」
「ああ?D地区三番街……なるほど、そういうことか。お前、一度街の外れに来い。実力を見てやる」
「それは……できません」
「いいから来い。何が嫌なんだ?能力を知られたくないのか?」
どうやら相手の能力が分かるのはイコル教団の特徴で、通常の能力者には他人の能力が分からないようだ。
彼女は僕の腕をつかみ強引に外へ連れ出そうとするが、教会の扉に手をかけようとすると扉は外側から開かれ蒼炎が中へ入ってきた。
彼は白いローブの女性を見て声をかける。
「白狼……何をしている?」
「ああ、蒼炎か。戦地で腕を折ったらしいな。どんな奴と戦ったんだ?」
「何をしているかと聞いたんだ。聞こえなかったか?」
「はっ、なんだよ……。ちょっとこいつと遊ぶだけだ。お前には関係ねえ」
「アランは私と同様、現在女王陛下直属の戦士だ。遊びで下手に消耗されるわけにはいかない」
「女王……?ああ、あのガキのことか。お前はあんなのを本気で王だと認めてんのか?」
「口を慎め。女王陛下はその座を継ぐに相応しい方だ。彼女はカオスをより良い方向へ導く」
「何を根拠に言ってやがる。ガキはガキだ。知恵も力も経験もない。お前が一番分かってんだろ?子守しながら戦地へ行って、腕折って速帰還してんじゃねえか。少しくらい不満はねえのか?」
「白狼よ……腕一本折ったくらいで、私が戦地を退くと思うか?たったそれだけの負傷で、私が戦えなくなるとでも?」
「あ……?何言ってんだ……?」
「ブラッドの地で我々は全ての目的を果たした。だから帰還したまでだ」
「目的だと?勝つこと以外に、何の目的がある?」
「言っているだろう。女王陛下の直属だと。私は旧王ではなく、女王陛下の考えに従っている。彼女は先を見越したうえでその選択をし、そして戦争を終わらせた。戦地で無駄な血が流れずに済んだのも、ブラッドと和解できたことも、全て彼女の功績だ。この戦争で彼女は王に足る器を証明して見せたのだ。不満などある筈がない」
「蒼炎……お前、正気か?」
「正気も何も、事実を述べた」
白狼と呼ばれた女性は一度舌打ちをすると、僕の腕を放してその場から去った。
「アラン、先に城へ戻っていろ」
「あ、ありがとうございます……。助かりました」
僕は蒼炎に礼を言い教会を出た。




