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皇国騎士第四席リサ。ブラッドE地区にてルークに敗れて以降、彼女は皇国内で批判の的にされてきた。後にAランク魔物との戦闘で撤退し街への被害が拡大したことで彼女への批判はより苛烈になり、合同大会への出場も第五席に譲る形で見送られた。
「私は皇国が嫌いでした。リヴィ様からの誘いは、私にとって皇国を捨てるいい機会になったのです」
僕とアキトはリサと共にカオスの城を目指して歩いていた。道中彼女は自身のことを悲し気な表情で話した。
「僕たちが、リサさんの人生を狂わせてしまったんですね……」
「驕りはよしなさい。皇国の腐敗した部分を知ることができて、良かったとさえ思います。それで、貴方はどうするのですか?」
「どうって……」
「どの立場をとるのですか?皇国の血を理由にシルヴィアの元へ行くのなら、私とはまた敵対することになります」
「そうですね……リヴィ様の話を聞いて決めます。貴女とまたすれ違いにならないことを祈ります」
「そうですか。では私も、同じように祈っておきましょう」
カオスの城に着くとすぐに女王の元まで通され、城の一室にて彼女は笑顔で僕たちを迎えた。以前と違うのは片方の目を覆う眼帯。第一席との試合で受けた傷のためだろう。
「やっぱり生きていたんだね。また会えて嬉しいよ。そっちの彼は弟?」
「はい、アキトです。知っているんですか?」
「まあ、少しだけね。手紙で聞いたんだ」
「メアさんにですか……」
「うん。彼女は元気?君たちと一緒に来てくれたら良かったのに」
「メアさんは……島と共に沈みました。アポピスの襲撃に遭って……逃げるよう説得したのですが……」
「そう……。彼女に会うことは叶わなかったか……。残念だけど、仕方ないね。そのアポピスは君の力でも撃退できなかったの?」
「はい、以前パールで交戦した個体とは違っていて……。体は何倍もの大きさがあり、傷を再生するような性質も持ち合わせていました」
「なるほど、進化したんだね。Sランクの上が現れたってことか……」
「メアさんも言っていましたが、あれはもう人の太刀打ちできる相手ではありません。いずれこの地に上陸したら……人の歴史は、そこで終わるかもしれません……」
「何もしなければ終わるだろうね。私は諦めないけど、君たちはどうする?」
「えっ……何か策が?」
「まあね。君たちにも協力してほしいことがあるんだ。私と一緒に魔物を滅ぼして、人類の未来を拓こう」
一度アキトの方を見たが、彼は迷わず頷いていた。
僕は戸惑いながらも尋ねる。
「僕は……貴女の判断が、全て魔物を滅ぼすためのものだとは思えません。何故皇国に侵攻するのですか?ギルバード統括は、どうして死ななければならなかったのですか?」
「リサに聞いたの?」
「はい、詳細までは聞いていませんが……リヴィ様によって殺害されたと」
「うん、私が殺した。リサを使って呼び出して、この手で彼の首を撥ねたんだ。どうしてかって?魔物を滅ぼすために必要だからだよ。人類の未来のためなら、多少の犠牲は厭わない」
「意味が分かりません……。どうして魔物の前に皇国を滅ぼさなきゃいけないんですか?」
「残念だけど、理由を詳しく話している時間はないかな……。簡単に言うと、大陸の土地を枯らす必要があって、暫くは人が住めなくなるかもしれない。だから私の統治下に置いて管理したい」
「枯らす……?」
「詳細はまた時間が出来たら話すとして、今の君の選択を聞きたい。私を信じるか、未来を諦めるかだ」
「そんなの……信じる以外、無いじゃないですか……」
「ありがとう。君の信頼には必ず応える」
女王が手を差し出してきて、僕はその手を握り返した。
僕は女王の配下に下った。残された時間が僅かな中で、これから僕は彼女と共にこの世界をカオスに染める。




