124/132 (4/5)
僕の全力の攻撃を受けてもアポピスは倒れなかった。僕はそれから何度も混沌一列を放ったが、アポピスの体に空いた穴は紫色の粘液で覆われ次第に塞がれていく。通常のアポピスには無かった性質、再生する体を前に、明確なダメージを与えることはできなかった。
その間もアポピスは暴れ回り、島は揺れ続け、小さな土地は徐々に削られていく。これ以上の戦闘は危険と判断し、僕はメアにも逃げるよう説得したが、しかし彼女は動こうとせず、結局僕はアキトと二人で島を出た。
アキトは教団の力を保有しており、冷気を操る能力を持っている。彼はその力で過去にも何度か大陸へ渡ったことがあり、今回も彼の能力で海を渡った。僕がアキトの体を抱え、彼が凍らせた海の上を魔人化の能力で走り抜けた。
暫くすると大陸の影が見えてきて、僕は一度立ち止まり来た道を振り返る。遠方では巨大な蛇の影が今も蠢いていたが、島は完全に沈んでしまったようだ。僕は寂しさをこらえて前を向き、また走り出す。皆の待つ大陸へ、僕たちは急いだ。
大陸に着くと、僕たちは浜辺に上陸しそれぞれ教団の力を解除した。
僕は呼吸を整えながら口を開く。
「ふぅ……どうにか着いたね。アポピスもこっちに向かってきてるのかな……」
「どうだろう。ある程度島に引き付けておくような仕掛けが作動しているかもしれない。メアさんならそれくらい考えそうだ」
「確かに……。だから一人で残る必要があったのかな」
「何にせよ時間は無いよ。まずは街へ行って兄さんの知り合いを……。見て、煙が上がってる」
アキトが指さす方向を見ると、付近で煙が上がっているのが見えた。街が魔物に襲われているのだろうか。昔からそうだが、海に近い街ほど魔物の襲撃を受けやすい。
「本当だ……。行ってみよう。まだ戦闘中かもしれない」
僕たちは二人で煙の方へと向かった。
街での戦闘は既に終わっていた。魔物の残骸が転がる中、一人の女性が立ち上る煙を見つめながらそこに立っている。
彼女は僕たちに気が付くと、手に握られた赤く輝く剣を柄に収めてから口を開いた。
「アラン……?貴方、本当に不死身なんですね……」
「リサさん、ですか……?ここって皇国領でしたっけ……」
「いいえ、カオス領です。それを言うなら貴方の方こそ、こんな場所で何をしているのですか?今度はカオスの一員にでも生まれ変わったのですか?」
「今は僕も貴女と同じ、皇国の人間です」
「そうですか……。もう何を言われても驚きませんが。闘技大会の後、どこで何をしていたのですか?もしかしたら貴方がまた別の体へ意識を移している可能性があると、世界中で貴方を探すために呼びかけられていたのに」
「えっ……そうだったんですか……」
「それで、そちらの方は?」
「弟です。彼も皇国の人間で、僕を支えてくれる一人です」
「弟……まあいいでしょう。二人共ついてきなさい。女王陛下の元まで案内します」
「女王陛下って……シルヴィア様のことですか?」
「いいえ、私にとっての皇国は死にました。今はリヴィ様の元、彼女の指示で動いています」
「な、何があったんですか……?」
「皇国の全ギルド統括が、リヴィ様によって殺害されたのです。皇国は女帝であるシルヴィアを統括の後見とし再起を図ろうとしていますが、我々混沌の勢力によって日々その領地を奪われています」
「えっと……何を、言ってるんですか……?」
「もうすぐこの世界はリヴィ様によって統治されます。勢力の境界は無くなり、新たな混沌の血族として栄えるのです」




