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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
13/15 合同大会編
120/132

120/132 (6/6)

 試合が開始されるとルークは初めから気力を全開にした。彼の周囲の空間が捻じれ、耐えきれなくなった部分が崩壊を始める。彼が片方の拳を地面につけると、空間の崩壊は更に勢いを増し、大気には亀裂が入り巨大な空間の塊が音もなく地面に落下していく。


 ルークは大きく息を吐き、両拳を構えると、一度上空に向かって吠えた。更に放たれた膨大な気力が崩れ行く空間を粉々に打ち砕きながら、大気の亀裂をまた一段と大きく拡大させていく。


 もはや拳を振るうまでもなく空間を破壊する、これが今の彼の全力。半端な実力では彼の前に立つことさえ許されないようだ。


 僕は口元に笑みを浮かべ、三つの能力を同時に開放すると、黒く濁った膨大な魔力が周囲に放たれルークの気力を受け止める。


 この試合のために照準を合わせてきて正解だった。今日、この一戦、彼に勝つことができたなら、そこで死んでも構わない。過去も未来も全て差し出して、今ここに僕が生きた証を刻もう。


 ルークが笑みを浮かべて僕に向かって何かを叫んだ。僕は頷いて彼に言葉を返す。


 少しして気力を抑え込んでいた魔力が四散し始め、しかし散った魔力はそれぞれが直線を象り、全部で六つの交点で交わるよう制御された。各交点から伸びた線が目標までの道を示すと、それに沿って混沌の魔力が次々と一列に並べられていく。


 混沌六列。混沌一列を六回同時に成立させるその技は、通常の六倍の火力となってルーク目がけて放たれた。


 六つの列はそれぞれが割れた空間に阻まれ、散り散りになった混沌の残骸さえもルークに到達することは無かった。少しでも掠れば毒で気力を抑え込めたが、空間の崩壊が盾のように作用している。彼の周囲は特に崩壊が酷く、それによって守られているようだ。


 ルークはその場で拳を振りかぶると、全開の気力を込めて振った。僕は急いで凝縮した魔力の鎧を纏い、魔人の腕を前方でクロスして守りの体制をとったが、直後に受けた衝撃は想像を遥かに超え、腕一本を犠牲にすることで衝撃の軌道を逸らした。それにより片腕が千切れて吹き飛んだが、どうにか致命傷は免れた。


 四肢程度なら少し時間をかければ魔人化の能力で再生できる。大丈夫、動揺するほどのダメージじゃ無い。


 しかし今の技はなんだ……?威力は破城にも匹敵するが、ルークとの距離はある程度離れていて、以前の彼なら破空でも届かない距離だ。破天の容量で打点を変え、そのうえで破城を打ったのか……?それができるのなら、もう距離など関係なくいつでも必殺級の威力が打ち放題になってしまう。


 まさに人の想像し得る理想の技。もう彼はそのレベルに達しているということか。


 ルークが再び拳を振りかぶるのを見て、僕は前方に分厚い魔力の壁を作った。破天の容量で空間をスキップしているのなら、間に別の物体を挟めばいい。これで防げるわけではないが、ある程度なら威力を抑えられるはずだ。


 そう思ったが、彼の繰り出す技は魔力の壁を完全に無視して直接僕に届いた。再生途中の腕でどうにか受け流したが、腕は先ほどよりも更に大きく欠損し噴き出した血が周囲に飛び散る。再生できるとはいえ無尽蔵ではない。このやり方では長くはもたない。


 まだまともに動ける今、早くこちらから仕掛けなければ勝機を逃すことになる。けれど、今の僕の最高火力はさっきの六連で放った混沌一列。もうあれ以上の技は無い。


 ルークの一撃が再び僕を襲い、今度は後方へ威力を流しながら体で受けた。纏っていた魔力の鎧はほとんど意味をなさず、僕は凄まじい勢いで闘技場の壁まで吹き飛び叩きつけられた。あまりの痛みに声も出なかったが、それでも片方の手に握られた黒い剣だけは手放さなかった。


 僕は剣で体を支えてふらふらと立ち上がり、一度口から大量の血を吐き出す。ルークの方に視線を向けたが、視界がぼやけてうまく彼を捉えられない。


 危険と判断されたのか、試合終了の合図が鳴っている。それでもルークは再び拳を振りかぶっていて、僕もそれに応えるように剣を上段に構えた。


 以前の僕ならとっくに意識を失って倒れているくらいの負傷だ。今立ち上がれたのは魔人化によって得られた生命力故だろうか。分からないが、お陰で戦闘は終わることなく再び死線を彷徨える。


 ルークが次の技を放つその瞬間、僕は足に力を込めると、全力で地面を蹴ってルークに向かっていった。ルークは僕の想定外の動きに対応しきれず、鎧貫きでスキップすべき空間の目測を誤った。結果、破天の出来損ないのような技が僕の体を貫通するだけで済み、それに怯まず前進すると彼を守る空間の亀裂が僕の体を引き裂いていく。それら一切に構わずルークの眼前に飛び出すと、勢いそのままに彼に向かって剣を突き出し、その先端が彼に刺さると同時に膨大な魔力を放出した。放出された魔力は無数の線を象り、やがて一点へと向かうそれらが交差するとき、僕は混沌とした魔力を一列になるよう並べていく。


 零距離混沌一列。必中必殺のその技はルークの体を引き裂き無数の風穴を開け、更には彼の気力さえ強力に封じ込んだ。確実に致命傷となった筈だが、それでもルークは倒れることなく僕の顔に拳を向ける。


 気力を封じられた中、ルークは力を上手く伝達させ零距離から拳を打ち込んだ。筋力だけで放たれた最後の一撃は僕の頭部を吹き飛ばし、残された胴体だけがその場に崩れ落ちた。

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