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街の教会へ入ると、中に居た人たちの視線が一斉にこちらに向いた。戦闘員とみられる者は、皆ローブを纏い多くの装飾品を身に着けている。装飾品は紫色が目立ち、全て同じ鉱石が使用されているようだ。
中にいた一人、シスターとみられる女性が蒼炎に声をかけてきた。
「蒼炎様……!帰還されていたんですね!」
「周囲の状況はどうなっている?戦闘員の不足している地域があれば我々が向かおう」
「ありがとうございます!ですが、その怪我は……」
「問題ない。今日は相方も居る」
「ええと、そちらの方ですか?戦闘員としての登録は……」
「登録は無いが、臨時の戦力として私に同行する。何か問題があるか?」
「いえ、貴方が仰るのでしたら信頼できる方ですね。周囲の状況ですが、現在は非戦闘員の方々の手も借りて対処しています。多くの地域で戦力が足りていません」
「ならば我々が一つずつ回ろう。優先順があれば教えてもらいたい」
「分かりました。では……」
彼は周辺の情報を受け取り、その後僕と二人で魔物の出現が多い区域へと向かった。
道中、平野を歩きながら僕は蒼炎に尋ねる。
「先ほど非戦闘員が魔物の対処をしていると言っていましたが、どういうことですか?」
「カオスでは全ての人間が戦闘に貢献できるよう教養を受けている。一般の住民であっても、大勢集まれば儀式の一つくらい発動できるということだ」
「そうなんですね……」
「とはいえ、彼らが戦闘に慣れているわけではない。これから向かう区域で戦闘中の者を見かけたら、すぐに介入し保護する必要がある」
「はい、分かりました」
その日僕は蒼炎と共にカオス領内の魔物を討伐して回った。蒼炎の剣術はブラッドでも見たことのないレベルで完成されており、低ランクの魔物を相手に戦うには片腕だけで十分なようだった。
僕は彼と共にカオス勢力のために戦い、カオスの人々を救い、カオスの街に貢献した。魔物の対処に駆り出されていた非戦闘員は街へ戻り、彼らによって戦地から帰還した怪我人が治療を受けられる体制が整うかもしれない。そして再び戦地へ向かう戦闘員がブラッドの街を破壊し、大勢の人の命を奪うかもしれない。今僕がここでカオスのために動くという行為がどういう結果をもたらすのか、考えるほどに迷いが生じる。
城へ帰ると蒼炎は言った。
「今日は助かった。明日以降も頼めるか?」
「僕は、本当にこれでいいんでしょうか……。どう行動するのが正しいのか分かりません……」
「そうか……そうだな、無理もない。私も、お前を信用することが正しいのかは分からない。お前がいつ我々に牙をむくのか、その可能性がどの程度あるのか、もっと考えて行動すべきだった」
「……」
「皆そんなものだ。答えの無い問いにあまり頭を使いすぎるな。正しさを突き詰めれば、身動きが取れなくなるぞ」
「そうですね……。では一つだけ、貴方の意見を聞かせてください。僕がカオスに貢献することで、ブラッドの被害が拡大すると思いますか?」
「思わない。その前に、戦争は終わる」
その後も僕はカオス領で魔物の討伐を続けた。行動に迷いが消えたわけではないが、かつて兄であった蒼炎の言葉を信じて終戦を待った。
数日が経ち、その日の魔物討伐を終え城へ帰ると、黒いドレスの少女、リヴィが僕を出迎えた。
「お帰り、アラン。随分貢献しているみたいだね。教会でも噂になってるよ」
「僕のことが?」
「うん。単独で成果を上げる戦闘員は珍しいから。蒼炎の見立ては当たっていたということだね。カオスに連れてきて正解だった」
「いえ、そんな……」
「このままカオスの一員になる気はないかな?私の直属の部下として蒼炎と組むんだ。君にとっても悪くないと思うけど」
「僕は……ブラッドの人間です。帰るべき場所がブラッドにあります」
「そうか、まあいいよ。なら終戦後、交渉の駒として使わせてもらう。それでいい?」
「はい、分かりました……。戦争は終わるんですか?」
「直にね」
「貴女は戦わないんですね」
「戦うよ。今はほんの少し、先を見据えているだけだ」
それから十日ほどで彼女の言った通り戦争は終わり、そして蒼炎の言った通りカオスの王は戦死し王の娘であったリヴィが女王に即位した。戦地で戦っていた戦闘員は街へ帰還し、同時に城周辺の魔物討伐という僕の役目も徐々に減っていった。




