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二日目の初戦が終わり、いよいよ大将戦の準備が始められた。観客はそのほとんどが撤退し、静まり返った場内には次に試合を行う二名が入場してきた。一人は皇国騎士第一席、無刀流の称号を持つ剣士。そしてもう一人は現在のカオスを束ねる女王、リヴィエラ・ベルガモット。
「女王はどう戦うんだろうね。アラン、君は何か知ってる?」
入場した二人を見てサカズキが僕に尋ねた。
「教団の力を主に使うのだと思いますが、それ以上は何も。どういった能力なのかも、その能力だけで第一席を相手にまともに戦えるのかも、正直よく分かりません」
「そうか。何にせよ、自信はあるみたいだね。彼女のあの表情、敗北なんてあり得ないって顔だ」
「確かに、そうですね……」
試合が開始されると、女王はすぐにその能力を開放した。闘技場全体を覆うように結界が張られると、第一席は何かを察したように剣を抜く。彼が剣を構えると巨大な炎の球がフィールドに現れ、直後に発生した蒸気でスクリーンからは何も見えなくなってしまった。
蒸気が収まるまでにかなりの時間を要し、晴れた頃には勝敗は決していた。
女王は体に幾つかの傷を負い、片側の目からの出血を手で抑えて膝を着いている。それでも口元には笑みを浮かべ、その場に倒れる第一席を見ていた。
どのような攻防があったのか詳しくは分からないが、試合は女王が勝ったようだ。
試合の結果にサカズキは険しい表情で口を開く。
「第一席を上回るか……。よく見えなかったけど、女王は炎を水で消したのかな……」
「最初の炎が第一席の技ということですか?魔法の様でしたが……」
「あれは魔法じゃない。彼の剣術の一つ、アリスと呼ばれている技だ。実際に見たのは僕も初めてだけど」
「アリス?人の名前みたいですね」
「そうだよ。今の無刀流がその席に就く前、第一席として活躍していたのがアリスという名前の女性だ。彼女の称号は太陽の騎士だった」
「太陽……」
「彼女を模した技なんだろうね。彼が本気を見せた証でもある」
「そうですか……。最初から剣を抜いたことにも驚きました。無刀流というのはなんだったんですか?」
「簡単に言うと手加減だよ。彼は普段剣を一振りする度に鞘に納める。その一連の動作が早すぎて、まるで剣を抜かずに戦っているように見えるんだ。今日みたいに初めから全力を出す場合はちゃんと剣を抜く。ただでさえ目で追えない剣の振りは更に速度を上げ、大気との摩擦で発火させ、魔法の様な技さえ可能にしている」
「そういうことですか……」
「さて、そろそろ君の番だよ。まずは目の前の試合に集中しよう」
「はい、行ってきます」
二日目の最終試合、僕は闘技場の中央で対戦相手のルークと対峙した。観客はほとんどが居なくなっていて、静けさの中で彼は口を開いた。
「静かだな。ブラッドでの試合を思い出すぜ」
「そうだね。今日が終わっても、また次があるかな?」
「さあな。強い力がぶつかれば、普通片方が砕け散る」
「前回は運が良かったね」
「もしくは、まだ弱かった」
「そうかもしれない。何にせよ、次があることを願うよ」
「俺もだ、アラン」
「じゃあ、始めようか」
「ああ、世界に見せつけてやろうぜ」
「人類が到達した境地をね」




