117/132 (3/6)
二回戦一試合目、初日の最終戦、サカズキと皇国騎士第二席の試合が始まる前に、僕とルークの元に一人の女性が訪れた。
「君たち仲がいいんだね。隣失礼するよ」
彼女、カオスの女王リヴィはそう言って僕のすぐ隣に座った。
「リヴィ様……お久しぶりです」
「久しぶり。君とまた話せて嬉しいよ。力も健在みたいで良かった。死んで生き返ったと聞いたけど、実際は何が起きたの?」
「別の体に意識が移りました。教団の力も一緒に。ブラッド前統括からは、どこかの誰かの研究じゃないかと言われましたが……」
「へえ、なるほどね。アスラは元気にやってる?パールにでも逃れたらいいと、提案したのは私なんだ」
「そうでしたか。元気だとは思いますが、戦闘からは身を引くようです。今後どう生きていくのかは分かりません」
「そうか、まあ、それなりに長生きしてくれればいいよ。彼には世話をかけたからね……」
「戦争でのことですか?」
「もちろんそれもあるけど、私は元々彼の弱みを知っていたから。色々利用させてもらった、って言うと少し問題になるかな?特に、君たち二人を前に話すことじゃないか」
彼女の言葉にルークが反応した。
「はっ、別に興味ねえよ。アスラを統括に置くのはブラッドにとっても賭けだったんだ。それが外れたってだけだ」
「そう言ってもらえると助かるよ。今の統括はどう?アスラと比べれば真っ当だと思うけど」
「ベルクか?まあ、普通だ。トップに立つ資格はあるが、実力は頼りねえ。今だって情けねえ試合しやがった」
「ふふふ、厳しいね。じゃあ、私だったらどうかな?もし君の使える主が私だったら、君は私の指示に従う?」
「あ?何訳の分からねえこと……。待て、お前……それが目的か?」
「うん、この際だからはっきり言うよ。私は君たち二人を配下に置きたい。それだけで全てが丸く収まると思うんだ」
「二人……確かに、そうかもな」
「考えておいてよ。私はこの大会で力を示すから」
間もなくしてサカズキと皇国騎士第二席の試合が開始された。
第二席は皇国一の皇国流格闘術の使い手とされているが、彼の扱える皇国流の技は破空と破城の二つだけだった。彼は開始直後から破空を連発して立ち回ったが、サカズキに対して相性は最悪だったようで、反動のリスクを背負って放つ破空をサカズキは教団の能力で簡単に相殺していった。第二席は試合途中で教団の力を開放したが、それでもサカズキの優位は変わらず、第二席が気力を使い果たしたところで勝敗は決した。
彼らの試合を見て思ったが、空間制御の能力を持つサカズキ相手に、空間を捕らえる皇国流の技術は全くと言っていいほど通用しない。気力が尽きるまで戦い続けた第二席も相当の手練れであることは間違いないが、高い次元で相性が完全に噛み合ってしまったような、そんな試合に思えた。
その日の試合観戦を終え、女王は席を立った。
「それじゃあ、また。明日の試合、楽しみにしてるよ」
「はい。こちらこそ」
「ふふ、私の試合はどうだっていい。今世界が注目してるのは、君たち二人なんだから」
僕がパールの控室へ戻ると、治療を終えたアーティアがそこに戻っていた。
「アーティア様、一回戦お疲れさまでした」
「ああ、アラン。戻りましたか」
「勝利おめでとうございます。凄い試合でしたね」
「ありがとうございます。サカズキ様も勝利されたようで、初日は順調ですね。しかし、予想以上の大会です。参加者全員の実力が計り知れません」
「そうですね、本当に……」
彼女と話していると、サカズキも控室に戻り三人が揃った。
「ふぅ、お疲れ様。まずは一息って感じだね」
「お疲れ様です。勝利おめでとうございます」
「うん、ありがとう。これで皇国が一勝、パールが二勝だ。アーティアの決勝は皇国騎士第五席が相手になるけど……どうかな、勝てるビジョンは見えてる?」
「正直に申し上げますと、明確には見えていません。剣術では向こうに分がありますし、私の魔法もどこまで通じるか分かりませんから。皇国流格闘術に関してはどう対処すればいいか……」
「うーん、そうだね……。アラン、君ならどう戦う?」
「第五席は破空を扱うみたいですので、受け方を知っていればダメージを最小限に抑えられます。受け方というのは……」
僕はアーティアに皇国流の対処について知っている限りを伝えた。この知識が少しでも彼女の助けになればいいが、彼女の決勝はまだ先、三日目の話だ。まずは明日の試合、僕はルークに勝たなければならない。




