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アポピスの襲撃により僕の故郷であった街は甚大な被害と多くの犠牲を出した。家のカフェも倒壊してしまったが、姉のアカリは避難しており避難先で再開し無事を確認できた。リリアも怪我を負ったものの軽傷で済み、僕が彼女とその他ギルドメンバーたちの元へ向かうと、ギルド長は僕に頭を下げ除名について謝罪した。今回の襲撃によりギルドメンバーは凡そ半数が亡くなってしまったが、僕は生存したメンバーと共にその後暫く街の復興作業を手伝った。
時が経つとSランク魔物討伐の話は僕とパールの王の名と共に世界中で広まり、そのおかげで僕が皇国で戦死したという情報は、パールで生きているという情報へと更新された。王から聞いていた四勢力合同の闘技大会についても正式に開催が公表され、パールの王サカズキを含む、既に決定している参加者についても順次大々的に報じられていった。
パールの王都にはポスターも張り出され、そこにはサカズキを筆頭に他三勢力の参加者が各一名ずつ写真と共に載せられていた。皇国は皇国騎士第一席、カオスは女王リヴィ、そしてブラッドの代表としてはルークの写真が載っている。実質この四人が勢力の中で最も強い人物、世界を代表する四人となるのだろう。
「ルーク……」
ポスターの前で呟くと、隣にいたアカリが僕に尋ねる。
「知ってる人?」
「うん。彼が出るのなら、僕も同じ場所に立ちたい」
「そっか……。パールの大会、もうすぐだよね。そこで優勝しないといけないんだっけ」
「そうだね。必ず勝つから、見ていて」
「うん、楽しみにしてる。頑張ってね」
アカリは現在僕と一緒に王都で過ごしている。故郷の街ではいまだカフェの再建の目途は立たず、最近彼女は王都にあるレストランで店員として働き始めた。カフェについては諦めるかもしれないとこぼすようになったが、街の復興が完了すればまたそこへ帰りたいとも言っている。
もし僕がパールでの大会で優勝できたら、得られた賞金は全てカフェの再建にあてたい。姉のためにも、もちろん自分のためにも、絶対に負けられない大会になる。他の参加者には申し訳ないが、僕はこの力を存分に振るうつもりだ。過去に犯した全ての失敗と後悔を背に、油断も慈悲もなく順当に勝つ。
大会数日前、対戦のトーナメント表が公開された。参加者は全十六名で、僕の相手はアーティアという名前の女性。彼女はパールで名の知れた戦士で、勢力内の三強と噂される三人の姫の筆頭だ。情報によると、サカズキより以前の王の血筋で育ちも良く、親族から譲り受けた教団の力を保有しており、攻撃を反射する盾を召喚できるようだ。僕を除けば今大会で最も注目されている人物でもある。
更に分かりやすく言えば、現在のパールで王に次いで強いとされているのが彼女だ。
僕たちの試合は一回戦の第七試合。事実上の決勝とも囁かれる一戦となった。
大会当日、僕は王都にあるパール最大の闘技場へ向かった。闘技場の外観は皇国やブラッドのものと大差ない。
受付を済ませ控室で待機していると、今日の対戦相手であるアーティアに声をかけられた。
長身に碧色の髪、ドレスのような鎧を身に纏っている。
「貴方がアランですね。噂はかねがね伺っております。今日はよろしくお願いします」
「アーティア様。こちらこそ、よろしくお願い致します」
「良い目をしていますね。私の姿がどう映っているのか気になるところです」
「遥か格上に見えていますよ。場数の差でしょうか……。普通に挑めば到底及ばないでしょう」
「貴方……何を言っているのですか?」
「思ったことを。僕の専門は魔物の対処で、人間に勝つ方法をあまり知りません」
「ああ、なるほど……。でしたら、魔物のつもりで来ていただいて構いません。その方が私にとっても良い経験になりそうですから」
「そうですか……。分かりました」
「では後ほど。楽しみにしていますね」




