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混沌一列はアポピスの硬い甲殻に阻まれた。ブラッドの頃と比べて技の威力が落ちたわけではなく、対象の甲殻がこれまで相手にしてきたランクAの魔物よりも更に硬いようだ。
「アラン、真っ向からじゃだめだ。狙いは目か口の中、そこなら打ち抜ける」
「はい……あ、いえ。もう一度だけ真っ向から行きます。見てください、今ので少しだけ亀裂が入りました」
「え?た、確かに……。ごめん、一度魔物が動き出すよ。また隙を見て動きを止める」
「はい、お願いします」
魔物が地中へ姿を消し、大地の揺れが更に大きくなった。パールの王は地面に両手を当て、能力で魔物の動きを感じ取っている。
「真下か。アラン、手を!」
彼が差し出した手を握り返すと、すぐに手を引かれ僕たちは上空に立った。何もない空間が固められ足場になっているようだ。
直後に先ほどまで僕たちが立っていた地面が崩壊し、口を開けた巨大な蛇の頭部が飛び出してきた。その両目が宙に浮かぶ僕たちの方を向くと、大地を揺るがす轟音と共に魔物は体をくねらせ方向を変え、口を開けて正面からこちらに突っ込んでくる。
「駄目だ、避けるよ!」
パールの王はそう言ってまた僕の手を引いた。僕たちはどうにか攻撃から逃れたが、魔物は固められた空間など物ともせず、足場を押しつぶしながら前進していく。
パールの王は攻撃を避けながら手のひらを魔物に向け、次の瞬間魔物の片方の目から紫の液体が飛び散った。再び地を揺らす轟音と共に、魔物は声を上げて暴れ出す。彼の能力による攻撃は目では見えない。どうにかして上手く対象の目を潰したのだろう。
「よし、止めるよ!道も作った!」
パールの王の言葉に僕は頷き、そして彼の手を放す。僕は黒い剣を両手で握りしめ、急激に動きを鈍らせていく魔物の、亀裂の入った甲殻へ向かって固められた空間の上を走った。
そこへたどり着くと、僕は黒い剣を甲殻の亀裂に差し込んだ。剣先から放たれた凝縮された魔力は無数の線を象り、対象の硬い甲殻に跳ね返された魔力が強烈な反動となって腕に響く。魔人の腕には力が込められ、腕力を底上げし反動を受け止め、やがて一点へと向かう魔力の線が交差するとき、僕はいつものように一列になるよう混沌を並べた。
零距離混沌一列。放たれた技は魔物の硬い甲殻をもうち破り、その巨体を反対側まで貫いていった。
「やるね、アラン」
隣を見るとパールの王が立っていて、彼は僕に優しく微笑み手のひらを魔物の傷口に向ける。するとその傷口が徐々に広げられ、紫の体液を周囲に撒き散らしながら魔物の巨体が内側から破壊されていく。
魔物は呻き声を上げ固められた空間を押しのけながら暴れ回り、僕たちは地上に降りて少しだけ距離をとった。
「まだ生きてるのか……」
「大丈夫。あとは仕上げだ。毒にだけ気を付けて。行くよ、アラン」
「はい、陛下」
その後僕たちは暫くの死闘の末アポピスの討伐を果たした。Sランク魔物の初討伐。それは人類にとっても非常に大きな一歩となった。




