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案内された部屋に入ると、ブラッド前統括アスラの姿があった。彼はいつもの遮光眼鏡を外していて、異形の研究の代償である黒い眼球が目立っている。
「あ、アラン……!?何故ここにいる……!?」
「お久しぶりです、統括……」
「皇国で戦死したと聞いたが……何があった?」
「実際に死んだとは思いますが、その後パールにあったこの体に意識が移りました。僕の体はこの世界に複数あるみたいです」
「体が複数……。ああ、そういうことか。それがお前の正体なんだな。推測だが、ブラッドの体に意識が入る前にも一度死んでるんじゃねえのか?」
「えっ……はい、まだ子供だった頃に……。どうして分かったんですか?」
「やっぱそうか。お前は恐らく死んだ回数に応じて教団の力をストックできるんだ。だから二つの教団を同時に持つことができた。どっかのイカれた研究者がお前を作ったんだろうな」
「そうか、それで……」
「しかし、ブラッドの最高傑作が皇国の第十二席ごときに敗れるとはな。敗因はなんだ?どうせ慈悲か油断だろ」
「は、はい……すみません……」
「まあ、気にするな。俺も謝罪されるような立場にねえからよ……。互いにやらかしたな。全く、笑えねえぜ」
「統括の方は何があったんですか?先ほど少し聞きましたが、ブラッドの暴動を止める際に皆殺しにしたって……」
「ああ……怒りで理性が飛んで、気づいたときには引き返せねえところにいた。統括としてはあり得ねえ失態だが、どうしても止まらなかった」
「何故ですか?誰よりブラッドのことを考えていた筈なのに、貴方の行動とは思えません」
「俺はガキの頃親に捨てられカオスで拾わた。暴動を起こしたブラッドの連中が潰したのは、俺の育った街だったんだ。俺が統括になったとき、いち早くカオスと和解したのもそれが理由だ。これまでカオスとの関係を良くしようと立ち回ってきたのも、全部そうだ。口ではブラッド最優先と言っておきながら、結局俺が一番半端だったんだ……」
「そうだったんですね……。これからのブラッドは、大丈夫でしょうか……」
「さあな。まあ、ベルクがうまくやるだろ。元々統括としての適正はあいつの方があったわけだしな。それに、ブラッドにはルークがいる。あいつは今回の戦争でも馬鹿みてえな功績を上げやがった」
「ルークも参戦していたんですね。彼は誰に勝ったんですか?」
「第八席と第九席の二人を同時に相手して勝利し、その後負傷した状態で第二席とも交戦し退けた。ここまで来ると、もうあの男には誰も勝てねえ気がするぜ」
「す、凄いですね……。僕とは大違いだ……」
「単純な実力なら、お前も負けてねえ筈なんだがな……」
「いえ、流石にかなりの差を付けられたと思います……。ルインブラッドの方はどうなりましたか?統括の代役は……」
「それなら赤髪が指揮をとることになってる。お前が抜けた穴は、アイカに期待だな」
「アヤさんはどうですか?アイカから受けた怪我は治りましたか?」
「ああ、怪我は完治してる。だが……状態がいいとは言えねえな。お前が死んだことに一番キレてたのがあいつで、皇国との戦闘にも積極的じゃなかった。アイカに負けたことも気にしてるみてえだし、色々悩んでるだろうな」
「そうですか……。統括はこれからどうするんです?いつまでもこの城に留まるわけにはいきませんよね」
「俺か?まあどうにでもなるだろ。とりあえず戦闘に関しては引退だな。俺の力はお前にでも預けておくか」
「えっ……」
「餞別だ。パールでも暴れてこい。三つの能力があれば、それだけでもう無敵だろ」
「いいんですか……?」
「ああ、俺にはもう必要ねえよ。他に譲る奴もいねえし、せっかく三番目の体になったんだろ?三つの力で無双する姿、パールで見せてくれ」
僕は彼から第二期教団の能力を譲渡された。二度の死、三番目の体、そして三つ目の能力だ。




