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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
12/15 パール編
105/132

105/132 (2/11)

 翌日、朝いつものようにギルド拠点となっている酒場へ向かうと、僕はギルド長の男に呼び出された。彼は申し訳なさそうな表情で告げる。


「アラン、非常に言いづらいのだが、君をこのギルドから外すことになった。今日からの仕事は別で探してもらえないか」


「えっ……除名、ですか……」


「ああ……すまないが、そうなる。君とパーティーを組んだ者たちから打診があってな……。今後は別の才能を探してみるのもいいんじゃないか?確か君の家は店を営んでいるだろう?まずはそこの手伝いをしてみるとか……」


「そうですね……少し考えてみます。今までお世話になりました」


 僕は一度深く頭を下げ、その場から立ち去った。


 酒場を出ると、丁度道の向こうにリリアの姿が見え、彼女は僕に手を振って声をかける。


「アラン、どうしたの?忘れ物?」


「いや、その……まあ、そんなところかな。いつ戻れるか分からないから、今日は先に依頼受けておいて」


「えっ、一緒に行こうよ。別に待ってるけど?」


「ごめん、今日は……また明日」


「ああ、うん……」




 僕が家のカフェに戻ると、アカリが少し驚いた表情で出迎える。


「あれ、アラン?忘れ物?」


「いや、その……今日からは別で仕事を探すように言われちゃって……」


「えっ……!?く、クビってこと……?」


「そうだね……。少しの間心配かけるかもしれないけど、僕は大丈夫だから」


「そ、そう……。ちょっと一回話し合う?今日はお店も閉めよっか」


「いや、大丈夫。寧ろ手伝えることがあれば言ってよ。今日はたぶん部屋で暇してるから」


「そう……?何かあれば言ってよ……?」


「うん、ありがとう」




 僕はカフェの二階にある自分の部屋に戻り、今後について考えた。


 今最も気がかりなのは皇国カオスブラッドの戦況だ。できる限り情報を集めたいが……それでもしブラッドが不利な状況だったとして、今の僕に何ができる?国境へ駆けつけて加勢するか、王都へ戻って統括と戦うか?


 違う。僕はもう、その争いからは退場したんだ。ロダに敗れた僕に、再び戦地へ戻る資格はない。今の僕は、パールの一戦闘員に過ぎないのだから。


 僕は大きくため息を吐き、部屋にある椅子に座った。


 パールの戦闘員、ということは血の色も変わっているのだろうか。僕は試しに自分の指を噛んでみたが、歯が平坦すぎるのか上手く出血ができない。ブラッドの人間は歯の形すら進化していたのかもしれない。


 その後部屋の中で刃物を探してみたが、ナイフの一本も見つからず、僕はカフェの包丁を借りるために店が閉まるのを待った。




 夜、カフェが閉店し姉の姿が無いことを確認すると、僕は一階へ降りて包丁を探した。台所でそれを見つけると、明かりを点けて手首を切った。痛みと共に血が流れ、その僅かに紫色を帯びた綺麗な色に驚く。


「これが、僕の血……?」


 何の改造も施されていない、研究される前の人間の血。傷口はすぐには塞がらず、絶えず血が流れることに不安を覚える。ブラッドの戦闘員が異常だっただけで、これがまともな人間の感覚なのだろう。


「アラン?何してるの?」


 振り向くと姉の姿があり、僕は慌てて包丁を隠そうとしたが、その拍子に手首から血が飛び散った。


「あっ、いや、これは……」


「ちょっと、血が……!何……!?包丁……!?」


 アカリは僕に近づくと、その手から包丁を奪い取り、一度台所を出るとすぐに救急箱を持ってきた。


「ごめんね……。もっとアランの気持ちを分かってあげなくちゃいけなかったね……」


「えっと……これは、そういうことじゃなくて……」


 アカリは僕の手首に包帯を巻き、そして優しく抱きしめてくれた。


「今後のことなんかすぐに決めなくていいから。ゆっくり考えていこうね。今日は私の部屋で一緒に寝よう?」


「ごめん、誤解なんだ……。ちょっと血の色を確認したかっただけで……」


「血の色……えっと、どういうこと?」


「昨日、顔つきが変わってきたって言ってくれたよね。嬉しかったし、その通りなんだよ。まさに昨日、僕は変わったと思う。もうすぐパールにも情報が入ると思うけど、今皇国はカオスブラッド連合軍と戦争をしてる。僕はその中心で戦ってきたんだ」


「へ……?ご、ごめんなさい、全然分からない……」


「今は分からなくていいよ。とにかく、僕は昨日から別人に生まれ変わった。部隊を除名されたのは一昨日までの僕で、そのころの僕はもうここには居ない」


「そう、なの……。そうなのね……。うん、分かった。信じてみる」


「ありがとう、姉さん。心配ばかりかけてごめん。今日はもう大人しく寝るから」


「ああ、うん……おやすみなさい……」

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