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議会を終え、各部隊は翌日に備えそれぞれが担当の街へ向かうため王都を出た。ラドは自身の配置へ向かう前に、ロダにあるものを手渡す。
「カートリッジだ。一応持っておけ」
「カートリッジ?なんですか?」
「剣に組み込んでおけば気力が尽きても技が打てる。これは試作品らしいが、まあ使えるだろ」
「ありがとうございます。ラド卿もお気をつけて」
「てめえの心配だけしとけ。じゃあな、ロダ。勝てよ」
「はい、必ず」
翌日、カオスブラッド両軍が皇国への侵攻を開始した。アランはブラッドの立場をとったが女帝は相手にされず、王都に残ったロダとの交戦に入る。ロダは腕を一本失いながらも皇国流剣術の覚醒によりアランにダメージを与えるが、アランの二教団同時開放を前に再び希望を見失っていた。
床に広がった血が黒く淀み、無数の線が空へ向かってのびると、ロダはそれを目で追いながら明確に死を悟った。
「な……なんだよそれ……。能力が、二つ……?」
「行くよ、ロダ。これが僕の全力だ」
アランが両腕を前方に向けると、直後にその技が放たれた。混沌一列。Aランクを魔物を葬ってきた彼の最大の技。まさに人の域を超えた力だ。
ロダは口元に僅かな笑みを浮かべると、その一撃に刺空を合わせた。死線を超えるためでなく、勝利に向かい前進するための一手。ロダは最後まで、勝つためだけに剣を振った。
刺空による空間の歪みは混沌の線の軌道を僅かにずらし四散させた。それによりかろうじて即死は免れたが、飛び散った混沌の残骸がロダの片足を吹き飛ばし、切断された方の腕を更に大きく肩まで欠損させる。ロダはその場に倒れたが、意識を失うことは無かった。そして、握られた剣を手放すこともなかった。
ロダは剣を支えに残った方の足で立ち上がる。アランの方を見ると、彼は無慈悲にも再び同じ技を放つための準備を始めていて、同時にロダは体の気力が反応しないことにも気づく。尽きたのではなく、ルドラの毒に侵されたのだ。これまで気力操作により最小限にとどめていた出血に歯止めが利かなくなり、意識は急激に遠のき視界はぼやけ始める。死のビジョンが目の前に浮かび、過去の出来事が走馬灯のように脳裏を巡る。
彼が目の前の死を受け入れたとき、手に握る剣にほんの少しの輝きを見た。それは決して幻覚ではなく、カートリッジの起動により失われた気力が補完されていたのだ。
「剣帝の名に……恥じぬ勝利を……」
ロダはそう呟くと、片足でバランスをとり、輝く剣を上段に構える。磨き続けた技術、蓄え続けた知識、内に秘める全てを総動員し、彼はアランが再びその技を完成させる前に最後の一撃を放った。
「未来の剣士に……道を拓け……!」
皇国流剣術刺空、完成させた技の更に先の覚醒。貫かれた空間の亀裂が弾丸のような速度で放たれると、その一撃はルドラの毒の効果を期待したアランの、ほんの僅かな油断により生じた隙を突いた。空間の亀裂はアランの頭部を完璧に貫き、彼の瞳から教団の輝きが失われる。
アランはその場に倒れるとそれ以上動かなくなり、ロダは戦いの終わりと友の死を見届けた。




