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ラドの部隊はガイアドラゴン討伐を完遂し王都へ帰還した。後日、ラドはある噂を耳にし、皇国第四皇女の元へロダを向かわせる。
ロダが使いから戻ると、彼は深刻な表情で口を開いた。
「アランという男に会ってきました。聞いていた以上に、あれはやばいですよ……」
「はっはっは、そうか。どんな奴だったんだ?」
「弱そうだったんです。僕のことも必要以上に警戒されて……。事前情報がなければ、席持ちに匹敵するとさえ思わないでしょうね。まして彼が第一席を超える実力者だなんて、想像もつきません」
「なるほど。それは確かに怖えな……。で、お前から見てそいつは今後皇国を裏切りそうなのか?」
「分かりやすい裏切りは無いと思います。皇女や統括を裏で暗殺したり、皇国の機密情報を抜き取ってブラッドに送ったり、そういうことが目的には見えませんでした。統括が彼を認めているのも、なんとく理解できます」
「なら目的はなんだ?皇国ブラッドの友好関係の足がかかりってか?世界はそんなに平和だったか?」
「どうでしょう……。彼自身がブラッドの真の目的を知らされていない可能性が高いかと。もし今のタイミングで皇国とブラッドが戦争を始めれば、彼はあくまでブラッド側の立場をとると思います」
「そうか、分かった。お前の意見も含めて統括と話し合っておく。ブラッドの目的が分かれば、アランって男を逆に利用できるかもしれねえ」
その年の闘技大会前日、第十三席を除く全席の騎士が統括の元に集められた。
その場には新たに即位した女帝シルヴィアの姿もあり、各自が自分の席に座ると、統括が話を切り出す。
「明日の闘技大会を延期することに決めた。理由はブラッドの皇国侵攻が予期されるためだ。発表は大会当日の朝、それまでは内部の人間にもこの情報を漏らすな。第十三席、アランも含めてだ」
シルヴィアは不満そうな顔で口を開いた。
「アランには共有していいのでは?もしブラッドが侵攻してくるとして、少なくとも彼はその計画を知らされていません」
「女王陛下、重要なのは知っているかどうかではありません。皇国とブラッドが戦争状態になったとき、彼がどの立場をとるかです。貴女にもそこまでは分かっていない筈です」
「それは、そうですが……」
「私には、彼のブラッドへの忠誠心は消えていないように見えます。皇国のための選択として、彼を切り捨てる判断も必要になります」
「切り捨てる……?アランは、これまで皇国のために……」
「もちろん功績は認めます。だからこそ席を与えた。しかし、状況が変わればそれに応じて不安要素も取り除かなくてはなりません」
「そんな……。戦争状態になった時点で、アランとの信頼まで自動的に崩れると……?」
「私の判断ではそうなります。不服ですか?」
「アランは……私の騎士です。切り捨てるかどうか、最後は私に判断させてください」
「そうですか……。しかし、ブラッドが侵攻を開始した時点でアランの元に居ることは危険と思われます。アランがブラッドの立場をとれば貴女の命も狙われるのですよ?彼を抜いた貴女の部隊で、彼に対抗できますか?」
「無理でしょうね。そのときは死を受け入れるだけです」
「分かりました……。では、これからブラッドとの抗争に備え各騎士の配置を伝える。第一席、第四席、第十一席はβ街。第二席、第五席、第八席、第九席は新都市σ及びε街。第三席、第六席、第七席、第十席はエリアγ。この配置で防衛についてもらう」
ロダは自身が呼ばれていないことに気づき口を開く。
「あの、僕は……」
「第十二席は王都にて待機。皇国を守る最後の砦となってもらう」
統括の言葉に、今度は第五席のラドが声を上げる。
「おい、てめえ!なんでロダが王都なんだ!?アランのことを考えりゃ一席か二席が妥当だろうが!」
「ブラッドはカオスと協力体制を築いている。共同での侵攻を予測するのが適切だ。となれば、第一席第二席には、それぞれがカオスブラッドの本隊と対峙してもらいたい」
「だとしても、王都にもっと戦力を割くべきだ!アランはロダ一人でどうにかできる相手じゃねえだろ!」
「確かに大役になるな……。だが、アランが相手になるからこそ、私はロダを王都に置くべきと考えている。仮に第一席をアランにぶつけたとして、実力では五分だ。勝てるかは分からない」
「ロダになら勝機があるって?」
「ああ。貴殿も知っている筈だ。剣帝の真の実力を」




