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一年前、闘技大会予選にて第一席に敗れた後、数日後にロダは第五席の元を訪れた。
皇国騎士第五席、金獅子ラド。その男は黄金の鎧を纏い腰には二本の剣を携えていた。
「ロダ、つったか。十二席が俺に何の用だ?」
「昨日、僕は自分の部隊を解散させました。可能であれば、これからは貴方の元で動きたいと思っています。僕を部隊に入れて頂けませんか?」
「なんだと……?面白えこと言うじゃねえか。席持ちのセリフとは思えねえな。お前になんのメリットがある?」
「貴方の戦闘を間近で見られます。席を持つ騎士の中で、僕が最も参考にしたいのが貴方なんです」
「話が見えねえな……。お前、どうなりてえんだ?格闘術でも覚えてえのか?」
「僕が覚えたいのは皇国流です。ですが格闘術ではありません。皇国流剣術、僕はそれを完成させたい」
「皇国流剣術……そうか。で、なんで俺になる?」
「皇国流を扱える剣士は貴方だけですから。貴方の戦術にこそヒントがあると、僕はそう思っています」
「なるほどな。まあ、ギルバードや他の席持ちさえ黙らせりゃ、俺は別に構わねえぜ。他の部隊員と同じようにこき使ってやるよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
二刀流の剣士であり、且つ皇国流格闘術の使い手でもあった皇国騎士第五席のラドは、この日ロダを配下に加え、席持ちの中で最大派閥と言われるようになった。これにより席を持つ騎士たちの間ではパワーバランスが大きく崩れ、先日の闘技大会予選での大敗もありロダを批判する声が目立つようになる。ロダを席から外すよう求める声も現れたが、その状況の中でもロダは皇国流剣術の完成のために力を尽くした。
時が経ったある日、ラドからの呼び出しを受け、ロダが彼の元を訪れると、彼は不機嫌そうな顔で口を開いた。
「急ぎの依頼だ。今から出るぞ」
「はい、どの辺りですか?」
「ε街北部だ。目標はAランク。既に街にも被害が出ているらしい」
「えっ、街に被害が?放置されていたのですか?」
「違えよ。依頼を受けた第四席がしくじりやがった。俺たちはその尻ぬぐいだ。さっさと部隊に召集をかけろ」
「は、はい……」
ラドの部隊が現地に着くと、そこには悲惨な光景が広がっていた。焼き払われた街、逃げ遅れた住民の遺体、そして暴れる魔物……今回の標的であるAランクのガイアドラゴンだ。
魔物が部隊の接近に気づき口から炎を吐くと、ラドは拳で空間を打ち衝撃波で炎を散らす。
「おい、ロダ。剣を持ち替えろ。あいつの外殻に普通の剣は通らねえ」
「えっ……持ち替えって……」
「皇国流を使えって言ってんだ。利き腕じゃ打てねえんだろ?」
「それは……知ってたんですか?」
「当たり前だ。去年の闘技大会予選からお前のことは見てんだからよ」
「でも、まだあの技は……」
「ごちゃごちゃ言うな。今の俺の拳をよく見ろ」
魔物の吐く炎の勢いが更に強まったタイミングで、ラドはもう一度拳を振るう。今度は拳の捉えた空間に亀裂が入り、その亀裂が暫くそこに留まることで部隊を守る盾となった。しかしラドの腕からは血が流れ、技の反動を物語っている。
「いいかロダ、俺たちはどっかの教団の末裔で、皇国の血には元から空間をぶち壊す力が備わってんだよ。拳でできて剣にできねえわけがねえ。それと、俺にできてお前にできねえこともねえ」
「ラド卿……」
「ほら、さっさと剣士に道を拓け。馬鹿にされるのも飽きた頃だろ」
「はい……。ありがとうございます……」
ロダは剣をもう一方の手に持ち替えると、魔物の吐く炎が弱まるタイミングを見計らって飛び出した。
十分に距離を詰め、剣に気力を込めて振り抜くと、剣先は何もない空間を捕らえる。その一振りは魔物の硬い外殻をものともせず、空間ごと足を切断していった。




