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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
2/15 カオス編
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 翌日、僕はカオス領にある城の一室で朝を迎えた。体は拘束はされていない。部屋にも鍵はかけられておらず、窓からは外も見える。捕虜としては自由過ぎる身だ。夜の間に逃げることだってできたかもしれない。


 暫くすると誰かが部屋のドアを叩いた。僕が返事をすると、昨日看護してくれた黒い服の女性がドアを開けて中へ入ってきた。


「おはようございます。着替えを持ってきました」


「あ、ありがとうございます……」


「昨日はよく眠れましたか?何か不便があれば言ってください」


「いえ、その……どうしてそこまで親切にしてくださるのですか?僕はブラッドの人間で、貴女にとっても敵の筈です」


「貴方は客人の一人ですよ。勢力間で争っているからといって、貴方個人に恨みがあるわけではありませんから。それに、貴方の方だって城を襲ったりしないじゃないですか」


「それは……そうですね。治療してもらったこともありますが、そもそもカオスと争っている理由も知りませんし……。あの青いローブの人には、僕の性格も全部見透かされていたのかもしれませんね……」


「ふふ。きっとそうですね。では、着替えはここに置いておきますので」


 彼女はそう言い部屋を出て行った。




 暫くの後、再び誰かが部屋のドアを叩いた。僕が返事をすると、今度はあの青いローブの男が部屋の中へと入ってくる。


 彼はあの時と同じ格好をしていたが、全身至る所に包帯が巻かれており、まだ僕との戦闘の傷は癒えていないようだ。


「元気そうだな、アラン。私は完治まで暫くかかる」


「だいじょう……いえ。貴方は、どうして僕を殺さなかったんですか?」


「それは……そうだな、見せた方が早いか。ついてこい。少し遠出になるが」


「遠出……?」


「見せたい場所がある」


 僕は彼について部屋を出て、そのまま城をあとにした。




 城を出た先の街で馬車を拾い、僕たちは二人で街を出た。


「どこへ向かっているんですか?」


 馬車の中で僕が尋ねると、ローブの男は外の景色を眺めながら答える。


「私の故郷の街だ。あと一時間ほどで着くだろう」


「故郷……」


「それを見てお前が何を思うかは分からないが」


「もし何も思わなければ……?」


「戦闘になるかもしれないな。その時は私への恨みを晴らせばいい」


「そこまでして……?」


「ああ。確認しなければならないことだ」




 それからほとんど会話もなく目的地に到着した。僕たちは馬車を降り、ローブの男は街の外れへ向かって歩き始める。暫く歩くと目の前には森が広がり、そこで彼は足を止めた。


「昔、弟が居た。アランという名で、まだ小さい頃にこの森に迷い込み、命を落とした」


「え……?」


「元々魔物の報告もあまり無い場所だったが、その日は違った。首の無い巨人のような魔物が発見され、弟の死後、街に滞在していた部隊が総出で討伐に当たっている」


「それって……」


「記憶にあるか?」


「多分、僕です……確かに、言われてみればこの森ですね……。過去にここへ来たことがあります……」


「しかし弟は死んだ。遺体は発見され、既に埋葬されている」


「じゃあ、僕は一体……」


「何者だ?お前の宿す教団の能力の一部なのか?」


「それは、違うと思いますが……。ブラッドとカオス、両方の記憶があるのかもしれません……」


「カオスの方を忘れていたのか?」


「そうですね……まだ小さい頃でしたから……」


「ああ、確かにな……」


 僕たちは森の中へは入らずに一度街へと引き返した。


 改めて見渡すと、そこは見覚えのある街だった。この場所で過ごした日々が、確かに僕の記憶の底に眠っている。


「この街……僕たちの故郷だ……」


 そう呟いた僕に、ローブの男は笑みを向けた。


「そうか……よく生きていてくれたな。ここの記憶があるのなら、お前は私の知る弟だ」


「じゃあ、亡くなったのは一体……」


「一つあてがある。メアに手紙を出してみよう」


「メアって……」


「大陸へ渡る前の保護者のようなものだ。彼女と会うことはできないが、鳥を使って文通している」


「し、知っています……。僕の妹も同じことをやっていて……。もしかして、二つの体が同じところで生まれたんじゃ……」


「そういうことか……。一度問い詰めてみよう。彼女の行った研究が、お前を生み出したのかもしれない」

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