ガイア共和国の戦後処理
マロンとミコトが西海岸まで魔物の盗伐に行った後、オレとリンは城の改装を始めた。謁見の間を完全に破壊して箱状態にする。そして、創造魔法で部屋の作りを変えて議員達が話し合いができるように円形状に作りかえた。同様に、大会議室も改装魔法で大きく作りかえた。
「ハー さすがに疲れたな~。」
「何言ってるのよ!まだ、この国は何もできてないんだからね。今から弱音はいてたら大変よ。」
「そうだけどさー。オルセン王国やランド王国を解放して、その後すぐに帝国軍と戦って。やっぱり疲れるよ。」
「それが元神様だった人が言う言葉なの?」
「もしかしてナデシア様から聞いたことをリンに伝えなかったから怒ってるのか?」
「別に怒ってなんかないわよ!ただ寂しいだけよ。」
「何が寂しいんだ?」
「だって私もマロンもミコトも家族なんでしょ?ナデシア様からの話を教えてくれたっていいじゃない!それにアスラが元慈愛神だったなんて突然言われても、どうしていいかわからないんだからね!きっとマロンもミコトもおんなじよ!」
「どうしてさ?オレはオレじゃないか!オレが元々何だったかなんて関係ないだろ!」
「違うわよ。別にアスラが魔王でも天使でもいいのよ!でも、『慈愛神』だったなんて知ったら話は別じゃない!神なのよ!それもただの神じゃなくて『慈愛神』なのよ!」
「ごめん。記憶が完全じゃないんだ。『慈愛神』だと何で特別なんだ?」
「あなた本当に何も覚えてないのね。まあ、いいわ。今度ナデシア様にあったらなぜ『慈愛神』が特別なのか聞いてみなさい!」
「わかったよ。」
オレ達が城の改装をしていたころ、マロンとミコトは西海岸にいた。漁船はすべて浜に寄せられていて海には一艘も出ていなかった。
「ところでマロン。メガロドンってどんな奴か知ってるのか?」
「大きい魚!歯が沢山ある!」
「それじゃわからないだろ!もっと何かないのか!」
「う~ん。サメの化け物!」
「サメか~。少しわかった気がするな。それでどうするんだ?」
「飛んでく!」
「それはそうだろ!そうじゃなくて~!もういい!」
「ミコト姉は短気!」
「私は別に短気じゃないぞ!」
バッシャーン
少し先の海で巨大な魚が大きくジャンプした。それは魚というレベルではない。
「おい!マロン!見たか?今のはどう見ても10m以上あったぞ!」
「多分、メガロドン!行くよ!」
マロンが黒い翼を広げて上空に舞い上がった。ミコトも妖精の羽をはためかせて後をついていく。すると、海に魚影が写った。どうみても15mはある。海の中にいると思って安心していたが、ミコトめがけてジャンプしてきた。慌ててミコトが避けたがぎりぎりだ。
「あ~!驚いた~!あいつは化け物じゃないか!どうやって倒すんだ?」
「剣で斬って、魔法でドッカーンする!」
「わかったわよ!私に剣で攻撃しろってことだな!」
「そう。」
2人は再びメガロドンが跳ねるのを待った。一旦見えなくなった魚影が再び姿を見せた。
「来るぞ!」
「うん。」
メガロドンがマロンをめがけてジャンプした。その瞬間、ミコトが剣に魔法を付与して斬りつけた。
『虹炎斬』
するとメガロドンの胴体から血が噴き出し、メガロドンは逃げるように水中に潜っていった。水面にはメガロドンの血が漂っている。しばらくして、メガロドンが暴れながら水面に浮きあがってきた。
「すべてを破壊せよ!『シャイニングボム』」
マロンが魔法を放つと巨大な光の球が水面近くにいるメガロドンに直撃した。
バーン
メガロドンはその場で木っ端みじんとなった。
「終わったな!マロン。」
「うん。」
「でも、アスラから討伐したメガロドンを持って帰ってくるように言われてなかったか?」
「アッ!」
「無理だな。粉々だもんな。」
「う~!リン姉に怒られる~!」
魔物を討伐した二人は城に向かって戻っていった。
「お疲れさん。マロン。ミコト。」
「余裕だった。」
「マロン、言わなくていいのか?」
「何を言うんだ?ミコト。」
「アスラに言われていたメガロドンの死骸だが、木っ端みじんになって回収できなかったんだ。」
「まあ、いいさ。2人が無事でいてくれたんだから。」
「やっぱりアスラ兄は優しい。」
「そうだな。アスラは優しいな。」
確かにメガロドンの死体は高価な素材がたくさん採れて価値がある。新しくできたガイア共和国の財政にはプラスになっただろう。だが、オレの空間収納には数えきれないほどの魔物の死体が入っているのだ。それをこの国のために使うことにすればいい。それに悪徳貴族から没収した財産も利用するつもりだ。
「リン。マロン。ミコト。最初の議会が開かれるまでに忙しくなるぞ!」
「何するつもりなの?」
「オルセン王国のフィリップさんやランダ王国のアズベルトさんに報告に行かないとな。それに、この国の執行部を作らなきゃいけないんだ。そのためには、集まった人々の中から選ばなきゃいけないだろ?」
「そうよね。やることが山積みね。」
オレ達は翌日にオルセン王国の王城に行った。王都デールの復興はかなり進んでいた。
「アスラ殿。この度は本当にありがとうございました。アスラ殿達には感謝してもしきれません。」
「そんなことはないですけど、今日は報告とお願いに来たんですよ。」
「何でしょう?アスラ殿の頼みなら何でも引き受けますよ。」
どうやらフィリップにはこちらの要望をお願いできそうだ。
「この前魔法で世界中に知らせたんですが。」
「ああ、帝国の件ですね。さすがです。帝国を滅ぼしただけでなく、ガイア共和国として作り変えてしまうなんて。」
「ええ、その件なんですが、実はガイア共和国が軌道に乗るまでオレが国家元首を引き受けたんです。」
「そうなんですか~。そのままアスラ殿が国王になった方がいいのに。」
するとリンが説明した。
「アスラは魔王なのよ。魔王が統治する国なんてみんな怖がるでしょ!」
「そんなことはないと思いますよ。アスラ殿の人柄を見れば。」
今度はミコトが話した。
「アスラを知ってる者達はそうだろうな。だが、ナデシア聖教国は認めないだろう。」
「確かにそうですね。あの国は魔王を悪と考えていますからね。」
オレは本題を話した。
「帝国が犯した過ちに対する損害賠償なんだけど、分割の支払いにしてもらっていいかな?」
「えっ?!損害賠償ですか?」
「そうさ。オルセン王国やランダ王国には迷惑をかけたんだから損害賠償は必要だろ?」
フィリップはしばらく考え込んだ。そして顔をあげた。
「では、こうしましょう。損害賠償は要りません。その代わりオルセン王国とランダ王国、それにガイア共和国で同盟を結んでください。この3国は、どこかの国が他国から攻撃を受けるようなことがあった場合はお互いに助け合うのです。あるいはどこかの国で自然災害が起きた場合も同じです。」
オレは嬉しかった。オルセン王国は帝国から攻められ一度は滅ぼされたのだ。想像だが、かなり悲惨な状況だったはずだ。それにもかかわらず今の発言、フィリップの他人を他国を思いやる発言に感動したのだ。
「感謝します。フィリップさん。ガイア共和国の元首としてお礼を言わせていただきます。」
それからオレ達はランダ王国のアズベルトと尋ねた。帝国の報告をすると同時にフィリップの提案を説明した。アズベルトも喜んで受け入れてくれた。
「あ~。疲れたな~。」
「でもよかったじゃない。」
「そうだぞ。アスラ。2人のお陰で損害賠償を気にしなくて済むんだからな。」
「そうだよな~。」
「アスラ兄。魔物は売らなくていいの?」
「その必要がなくなったよ。マロン。」
「ふ~ん。」
これで財政問題はひと先ず安心だ。




