ガイア共和国の始まり
会議の終了間際にオレはその場にいるみんなに言った。
「元貴族のみんなは早速貴族会議を開いて議長を選出して欲しい。それから、このまま政治がストップするのはまずいから、アントニウス。君をこの国の首相とするよ。カイル、君にはアントニウスを補佐して欲しんだ。副首相でどうかな。」
するとアントニウスが言ってきた。
「私でよろしいのでしょうか?」
「君が適任だと思うんだ。君ならこの国を平和な国に導いてくれるだろ?」
「はい。もちろんです。」
今度はカイルが聞いてきた。
「それではアスラ殿達はどうなさるのですか?」
するとマロンが壊れたようだ。
「国王!アスラ兄は国王!」
「ダメよ。マロン。アスラは魔王なのよ。魔王が国王なんかなったらナデシア聖教国が黙ってないわよ。」
「リン。私はいいと思うぞ!この国の混乱に乗じて魔大陸から攻め込まれる恐れがあるからな。」
「なるほどな。みんなの意見はわかったよ。どうかな~。アントニウス。この国が落ち着くまでしばらくオレが国家元首になるっていうのは?」
「我々に依存はありません。アスラ陛下。」
アントニウスがオレに片膝をついた。それを見てカイルも貴族達も全員が片膝をついた。
「あ~。ごめん。みんな。オレそういう堅苦しいのはダメなんだ。だから、普通に話してくれていいよ。」
全員が立ち上がった。
「さあ、最後にやらないとな。」
「何するのさ?」
「世界中にこの国がガイア共和国として生まれ変わったことを伝えるのさ。」
アントニウスが聞いてきた。
「世界中にどうやって知らせるんですか?」
「まあ、見てて。」
オレは魔法を唱えた。
「世界中に映し出せ!『オンエア』」
すると、世界中の様々な街の上空に映像が現れた。そこにはこの大会議室が写っている。
「世界中の諸君。私は魔王アスラだ。オスマイ帝国は皇帝トラヤスによって誤った方向に進み、世界の平和を乱した。だから魔王であるオレが滅ぼした。そして、今日ここに旧オスマイ帝国は世界の平和に尽力する国、ガイア共和国として生まれ変わったことを宣言する。ガイア共和国には貴族はいない。万人が平等な国だ。国民によって選ばれた人々や国のことを熟知した人々、さらに能力ある人々によって統治されることになる。世界の平和のために、我こそはと思う者はこのガイア共和国に来るがいい。ともに悲しみ苦しみのない世界を作ろうぞ!」
オレの映像が全世界に映し出された。スチュワート王国、グラッセ王国、フェアリー大陸では歓迎の声があがる。中にはオレが魔王だと聞いて驚く者達もいれば、やはりそうだったのかと思う者達もいた。ただ、問題なのはナデシア聖教国と魔大陸だ。ナデシア聖教国では教皇や司祭が集まり緊急会議が開かれることになった。魔大陸では、マジョリカ王国のマジョリーヌ女王は魔王と自分の娘マロンがともにいるのを見て喜んでいた。一方、ディアブ王国のカエサル王は顔を真っ赤にして怒っている。魔大陸を統一して自分が魔王を名乗ろうとしていたからだ。
「アスラ。これから大変よ。どこに行っても私達は魔王一行だってバレてるからね。」
「そうだぞ。アスラ。今までみたいに気軽に宿さえ取れなくなるぞ。」
「別にいいよ。なっ!マロン。」
「うん。野宿すればいい!野宿は楽しい!」
当然だが、城にいた皇帝の家族達は城から出て行ってもらった。逆らっても無駄なことはわかっているようで、王子と呼ばれていた者達も素直に城を明け渡した。元貴族達が帰っていった後、アントニウスとカイルを呼んで話をした。
「2人聞いて欲しいんだけど、これから話す内容は秘密だからね。」
「わかりました。」
「実はさっき話した慈愛の神ってオレのことなんだよね。」
「えっ?!え————————!!!」
2人は驚いたまま固まってしまった。しばらくして2人の意識が戻ったので再び話し始めた。
「記憶があいまいなんだけどさ。2000年前までオレは神界にいてガイアって呼ばれていたんだ。2000年前に黒龍と魔王が現れた話は知ってるよね?」
「はい。魔王が黒龍をと討伐した後、いくつかの国を滅ぼしたと聞いています。」
「それってオレなんだよ。それで神界を追い出されて、罪を償うためにこうやって転生してきたんだ。」
「そうだったんですか?」
「だけどさ。人々が苦しんだり悲しんだりしている姿を見ると、またあの時と同じように理性をなくした魔王になってしまうんだ。それを止める役目がここにいるリンなんだよ。実はリンは天使見習いなんだ。」
「え———!!!」
リンが天使と聞いて再び驚いた。
「リン殿は天使様だったんですか~。」
「見習い!見習い!」
「マロン!」
再び説明を始めた。
「ここにいるマロンも魔族だし、ミコトは2000年前にオレを討伐してくれた勇者の末裔なんだよね。」
さすがに2人ももう驚かない。
「俺達はこれからも世界中を旅しないといけないんだ。世界を平和にするためにね。」
「もしかしてそれが罪の償いなんですね?」
「さすがアントニウスよね。わかってるじゃない。」
「リン殿。そのぐらい私にもわかりますよ。それでアスラ殿、私とカイルにどうしろと?」
オレはこれからのことを話した。
「オレ達がいなくなった後でも、この国の国民達が平和に暮らしていけるようにして欲しいんだよ。ある程度落ち着くまではこの国にいるけどね。」
「そうしてください。是非お願いします。」
「私もお願いしたい。アスラ殿、是非我らに力を貸してください。」
その日からオレ達は城で寝泊まりするようにした。今まで城で働いていたメイド達や執事はそのまま城で働いてもらう。そして1週間ほど経ったある日、カイルが相談に来た。
「アスラ殿。城から外を見てください。」
オレ達が城の外を見るとかなりの数の人達がいた。
「彼らは?」
「はい。アスラ殿の呼びかけに応じて世界中から集まってきたんです。」
「どうするの?アスラ。あれだけの人数を採用するわけにはいかないわよ。」
「そうだぞ。そもそも本当に能力があるかどうかもわからないんだからな。どうするんだ?」
「試験すればいい!マジョリカ王国でも試験してた!」
「そうだな。マロンの言う通りだ。それぞれにどんな能力があるのか報告させて、能力別に試験をしよう。今回の採用枠は20人だ。カイル!すぐに試験の準備をしてくれ。」
「はい。」
カイルが執務室を出て行った。因みにオレは当面の間だけ国家元首になった。そのため、執務室を設けてもらったのだ。すると、今度はアントニウスがやってきた。
「アスラ殿。いくつか問題がありますがいいですか?」
「いいよ。」
「最初に選挙についてですが、いよいよ明日投票が行われます。明日の投票で選ばれた者達はいつ登城させましょう?」
「そうだな~。5日後に城に集まるように言ってくれるかな。」
「わかりました。もう一つあるのですが。」
「何かな?」
「西海岸の街から魔物討伐の依頼が来ております。どうしましょう?」
「冒険者ギルドに依頼はだせないの?」
「出したのですが、魔物がS級のメガロドンなのです。誰も引き受けないんです。」
「わかったよ。マロン!ミコト!2人で討伐してきてくれ!ああ、そうだ。メガロドンの素材は役に立つから、この魔法袋に入れて来てくれ!」
「わかった。」
「承知した。」
オレとリンは議会のための準備だ。謁見の間と大会議室をそれぞれ議会場に作り替えるつもりだ。
「本当にいいの?」
「何が?」
「謁見の間を議会場にしちゃっても。」
「ああ、いいさ。謁見の間なんていらないじゃないか。表彰するようなことがあれば議会で表彰すればいいんだから。」
「それもそうね。」




