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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
オスマイ帝国
97/151

ガイア共和国誕生!

 オレ達が城に向かっていると先ほどとは違う兵士達が剣を向けてきた。剣を持つ手が震えている。



「アスラ~!なんか面倒だよね。いちいちこうして兵士達の相手するのって。」


「しょうがないな~。なら、姿を変えるか。」


「変身!変身!」



 オレとマロンは背中に黒い翼を出した。リンは純白の翼だ。オレ達の姿が変わった瞬間、剣を向けていた兵士達は腰を抜かした。



「安心しろ!何もしないから。」



 再びオレ達は城に向かった。城の入口まで来ると門兵達はオレ達が恐ろしかったのだろう。兵舎から出てこなかった。そして城に入った後、オレ達は大会議室に向かった。そこでは帝国内の貴族達と軍服を着た将校のような兵士が会議を行っていた。



「これからどうするんだ?皇帝陛下はもういないんだぞ!」


「再度軍備を整え魔王をうつしかないだろう!」


「それは無理だ!貴殿も見ただろう!魔王の恐ろしさを!我々が叶う相手ではないのだぞ!」


「いいや。2000年前の魔王は勇者に討伐されたというで伝説が残っているのだ!聖教国と手を結ぼうではないか!」



 姿を消して聞いていたが、どうやらオレのことを議論しているようだ。オレ達は魔法を解いて姿を現した。



バッタン ガタン



 突然オレ達が現れたので全員が驚いて席を立った。



「ま、魔王!何故ここに!」



 その場にいた貴族達の顔が見る見るうちに青ざめていく。中には腰を抜かして地べたに倒れ込む者もいた。軍服を着た将校のような男が剣を抜いてオレ達の前に出た。



「皆さん。お下がりください!」


「おお、カイル殿!」



 どうやらこの男はカイルという名前らしい。オレがカイルの持つ剣を睨むと剣はドロドロに溶けてしまった。



「な、な、なんだ~?!」



 どうやらカイルも力の差を知ったようだ。死を覚悟したかのような態度で言ってきた。



「魔王殿。失礼した。どのようなご用件でしょうか?」



 部屋の中にいる貴族達に緊張が走る。オレは彼らに告げた。



「オレはこの国を滅ぼしに来たわけじゃないんだよ。作り変えに来ただけさ。」


「作り変える?どういうことでしょうか?」


「この国は世界の平和を乱したんだ。他国の人々に悲しみや苦しみを与えてきたんだよ。わかってるよね?この国をこのままにしておくわけにはいかないのさ。だから、この国を作り替えるんだよ。面倒だけど、この国が安定するまではオレが皇帝の代わりをするしかないけどね。」



 貴族達の中には反論しようとする者もいたが、やはり魔王であるオレが恐ろしいのだろう。苦虫を潰したような顔をしているが誰も反論しない。オレは続けて言った。



「最初に、この国の貴族制度は廃止してあなた方が蓄えた財は全て没収するけど良いよね?」



 さすがにこれには反論する貴族がいた。



「そんなことが認められるか!」


「そうだそうだ!」


「この国は我らの国だ!お前達こそ出て行け!」



 どうやら言ってもわからないようだ。優しい口調で言っていたのがいけないのだろうか。オレは口調を変えた。



「今言ったのは誰だ?前に出ろ!」



誰も前に出ようとはしない。



「リン!この中でオレの意見に従わないものを前に引きずり出してくれ!」



 リンが目に魔力を集中して、どす黒い色をした貴族達を前に引っ張り出した。50人ほどいる貴族のうちなんと20人もいたのだ。全員を地べたに座らせカイルに言った。



「カイルとか言ったな。お前は真面目に働いている国民と、悪行の限りを尽くしているこいつらとどちらが大事だ?」



 カイルは下を向いていたが、踏ん切りがついたのだろう。オレの目を見て言った。



「国民達です。我々兵士は国民を守るために存在します。」



 どうやらこのカイルという男は毒に侵されていないようだ。



「ならばこの者達を牢にぶち込め。」


「ハッ」



 カイルが外にいた兵士達に命令して貴族達を牢に連れて行かせた。オレは残った貴族達を見た。



「この国の貴族はお前達だけか?」



 するとカイルが答えた。



「いいえ。地下牢にいるものがいます。」


「地下牢に?なぜ地下牢にいるんだ?」


「はい。アントニウス公爵はこの戦争に反対されて、トラヤス皇帝のご不興を買って幽閉されたのです。」



 カイルの言葉を聞いてこれから先に光が見えた気がした。自然とオレの顔も心も緩んでいく。



「カイル!アントニウスをここに連れて来てくれるか。」


「はい。」



 しばらく待っているとアントニウスがやってきた。アントニウスがオレを見ていきなり驚いた。



「アントニウスか?オレの顔に何かついているのか?」


「いいえ。あなたは本当に魔王なんですか?」


「どうしてだ?」


「私が持つ古い文献にあなたによく似た神の絵があったものですから。」



 アントニウスの言葉にオレ以外のすべての者が驚いたようだ。リンもマロンもミコトもオレが神界にいたことは知っている。だが、オレが慈愛神だったことはまだ知らないのだ。

リンがアントニウスに聞いた。



「あなたが見たっていう神はアスラに似ていたのね?何て名前の神だったか覚えてる?」


「いいえ。そこまでは。ただ、最高神ナデシア様のすぐ脇に描かれていて、確か~『慈愛神様』だったと思います。」



 するとリンが首をかしげて言った。



「神界に慈愛神なんていたかしら?」



 このままではいろいろと面倒になりそうなので、オレはアントニウスとカイル、それに残っている貴族達に今後のことについて話をすることにした。



「さあ、これから大事なことを話すからみんな席についてくれ。」



 貴族達は狐につままれた顔をしている。先ほどは貴族はもういらないと言われたばかりなのだ。



「不思議な顔をしているようだから言っておくけど、さっきオレがこの国の貴族制度をなくすと言ったのは本当さ。ただ、あなた方には別にやってもらいたいことがあるんだ。」



 アントニウスが聞いてきた。



「貴族制度を廃止するんですか?」

 

「ああ、そうさ。アントニウスはさっきいなかったから知らないかもしれないけどね。」


「貴族制度を廃止してどうするおつもりなんですか?」


「国民の声が反映されるような仕組みを作るのさ。」



 全員が不思議そうな顔をしている。



「貴族は生まれながらにして特権階級だよね。努力しても努力しなくても、能力があっても能力がなくても。それっておかしいと思わないか?オレの考えは違うんだ。偉くなりたいと思う人間は努力すればいい。努力して能力が高くなった者は政治に関与できるようにすればいいと思うんだ。」


「なるほどなるほど。ですがどのように人材を登用するのですか?」



 アントニウスはかなり真剣な様子だ。他の貴族達もつられて真剣になっている。



「この国の政治機構を大きく3つに分けるんだ。1つは国民から選ばれた者達の議会、1つはここにいる元貴族達の議会、そしてもう一つは、能力のある者達による政治の執行部を作るんだ。」


「なるほど。権力が1か所に集中するのを防ぐということですね。」


「それもあるけど、国民達がこの国を本当の意味で自分達の国と思えるようにしたいんだ。」



 静かに話を聞いていた貴族達もそれぞれが意見を言うようになった。すべて肯定的な意見だ。さらにオレが考えていなかったことまで提案してきた。



「裁判を執り行う機関も必要ですな。」


「そうですな~。今までのように皇帝がすべてを決めるというのでなく、専門的な機関があった方がよろしいでしょうな~。」



 この国の方向性が決まったところで、カイルから大事な問題が提起された。すでに、この会場の人々はオレが魔王であるという感覚は薄らいでいる。



「アスラ殿。新しい国の名前はどうされるんですか?」


「そうだな~。さっきアントニウスが慈愛神の話をしたよね。その話をしようか?」



 会場が一気に静まり返った。リンもマロンもミコトもその場の全員が真剣だ。



「太古の昔、創造神様がこの世界を作られた後、最高神ナデシア様がこの世界に降臨されて、それから様々な神が現れたんだ。その中に慈愛神もいたのさ。慈愛神はバカが付くぐらいに真面目で優しかったんだ。いつも地上世界を見て、人々の悲しみや苦しみを哀れに思っていたんだ。だが、ある事件があって慈愛神は2000年前に神界を追放されたんだよ。だから、今のナデシア聖教の中に慈愛神はいないんだ。その慈愛神の名前は・・・・ガイアっていうのさ。」



 リン、マロン、ミコトが声を上げて驚いた。



「え~!慈愛神の名前がガイア~!!!」


「しー!」



 オレは3人に口止めをした。そして続けた。



「どうかな~。この国の名前を『ガイア共和国』にしたいんだけど。」



 最初にアントニウスが賛成した。



「私は賛成です。慈愛神の名前を復活させましょう。」



 続いてカイルが賛成意見を言った。



「そうですな。罪を犯した帝国が世界の平和を目指す国として生まれ変わるには、最高の名前だと思います。」



そうして新しい国の名前が決まった。


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