戦いの後
気が付くとオレは真っ白な場所にいた。記憶にある場所だ。
「ガイア!目が覚めたようね。」
「ナデシア様!」
「あなたまた大罪を犯すところだったのよ。」
「すみません。よく覚えてないんです。」
「そうね。あなたの本質からくる問題ですものね。」
「オレの本質ですか?」
「そうよ。あなたがどうして魔王になったのか、この際あなたに話しておく必要がありそうね。」
「オレが魔王になった理由ですか?」
「そうよ。」
しばらく時間をおいて、意を決したかのようにナデシア様が話し始めた。
「あなたはこの神界で『慈愛の神』だったのよ。ただ、あなたがあまりにも優しすぎるから、創造神様も私も心配していたのよ。」
「オレが神ですか?」
「そうよ。」
まったく気が付いていなかったわけではない。オレのかすかな記憶に神界の記憶があった。それに、大精霊ラミリスも大精霊達もオレのことを『ガイア様』と呼んでいた。色々なことを考えると、必然的に自分が神だったのかもしれないと思っていたのだ。
「あなたは優しすぎるのよ。いつも地上世界を眺めてはため息ばかりついていたわ。私達神々は地上世界に直接かかわることは許されていないの。それにもかかわらず、あなたは地上に降りた。そして特定の人間に愛を注いだの。その人間が殺されると、あなたは怒りを抑えられなくなって2つの国を滅ぼしたのよ。あなたは自分の怒りに負けて何の罪もない大勢の人々の命を奪ったの。神界を追放されても仕方がないでしょ?」
「そうですね。神としては失格ですね。」
「すべてあなたの優しさが原因なのよ。でもね。以前にも話したけど、地上の生き物はみんな修行しているのよ。悲しみも苦しみも修行の一環なの。悪事を働いたものは地獄に行くわ。許されても、生まれ変わった時は悲惨な人生を歩むのよ。逆に悲しみ苦しみに耐えながら一生懸命に生きた人は、安らぎの国、天国に行くわ。そして、生まれ変わった時には幸せになれるのよ。」
「わかっています。でも、目の前に苦しんでいる人や悲しんでいる人がいると我慢できなくなるんです。」
「そうね。だからあなたは優しすぎるのよ。まあ、それがあなたの生まれ持った資質ですから仕方ありませんけどね。」
オレは地上のことが気になった。オレがいなくなった後、地上世界の混乱は収まったのだろうか。
「地上が気になっているようね。大丈夫よ。リンがうまくやってるわ。リンもマロンもミコトもあなたの帰りを待ってるみたいね。いきなさい。」
「はい。」
地上に降りたオレは、意識を取り戻すとリンの膝の上にいた。
「お帰り!アスラ。」
「アスラ兄!やっぱり不死身!」
「アスラ。大丈夫か?」
「ああ。」
オレが起き上がって周りを見ると荒れ果てた土地が見事に整地され、木々に覆われていた。
「これは?」
「精霊女王様が大精霊様達に命じたんだ!」
「ドリアーノがエルフの森のお礼とか言って頑張っていたわよ。」
「みんな世界樹に帰った!」
「そうなんだ~。今度会ったらお礼を言わなきゃ。」
「そうよ。アスラ!あなたまた大罪を犯すとこだったのよ!ラミリスが防いだからよかったけどね。」
「ごめん。自分じゃどうにもできなくて。」
「まあ、それがあなたの業なのよね。あなたは優しすぎるのよ!世界の悲しみや苦しみを全部背負いすぎるからいけないのよ!」
「リン!お前、ナデシア様と同じこと言ってるな!」
するとミコトが焦ったようだ。
「どういうことだ?アスラ。」
「ああ、今、オレ神界でナデシア様と話してきたんだ。」
「そ、そ、そうなのか~!お前、本当は神か何かじゃないのか?!」
オレは否定せずに話をそらした。
「帝国兵はどうしたんだ?」
「みんな逃げかえったわよ。」
「逃げた!逃げた!」
「そうか。なら、王国に報告しないとな。」
「そうね。」
オレ達は王国軍に報告に行った。王国軍の総大将はユリウス公爵だ。
「ユリウス様、報告しますね。」
「ああ、そうだな。しっかり説明してもらうぞ!大きな音が聞こえたり、地震が起こったり、空の色が変化したりどうなっているんだ?」
「大丈夫ですよ。オレ達の味方がやったんで。」
「味方?味方とは誰のことだ?」
するとマロンがにこりとした。
「精霊女王と7大精霊!」
「えっ?!え——————!!!」
「驚かないでくださいよ。以前王城で話したじゃないですか?」
「それはそうだが、やはり驚かずにはいられないぞ!」
するとリンが怒った。
「あなた公爵でしょ!しっかりしなさいよ!」
「すまない。」
「皇帝はアスラが滅ぼしたわ。帝国兵もみんな逃げかえったからもう大丈夫よ。」
「そうか。では、我々も王城に戻って陛下に報告しないとな。アスラ。お前達も後日王城に来てくれ。報酬を渡すことになるからな。」
「わかりました。」
王国軍は王都へと引きかえしていった。
「これからどうするつもり?」
「なにが?」
「何がって、帝国に決まってるでしょ!皇帝はもういないのよ!」
「私も気になる。アスラ。帝国をどうするつもりだ?」
「今は何とも言えないよ。とりあえず帝城に様子を見に行ってみようか?」
「もしかして帝城に乗り込む気か?」
「そうさ。それが一番早いだろうからさ。」
数日休息した後、オレ達は帝城に向かった。帝都は先日オレ達がいた時とは雰囲気が大きく違っていた。街を歩く人の姿はない。外に出ているのは兵士だけだ。一般市民達はドアを閉めて家に閉じこもっている。オレ達の姿を見て兵士達が慌て始めた。恐らく戦場にいたのだろう。
「どうするの?アスラ。」
「このまま帝城にいくさ。」
兵士達が武器を手にオレ達の前に立ち塞がる。オレは兵士達に言った。
「皇帝はもう死んだんだよ。お前達は何を守っているんだ?お前達が守るのは城なのか?それとも国民か?そこをどけ!」
兵士達は両脇にそれて道を開けた。オレ達はそのまま城に向かう。兵士達はぞろぞろとオレ達の後をついてくる。
「まったく。あの兵士達は何をしたいのかしらね。」
「アスラ。城に行って何をする気なんだ?」
「この国を作り替えるのさ?」
「そんなことができるのか?」
「できるかどうかじゃないんだ。この国の人々のためにもやるしかないだろ!」




