帝国の前に現れた魔王
オレは魔力を解放した。そして、目の前のピンク色のドームに魔法を放った。
「我が前の敵を破壊せよ!『エレクトリックドラゴン』」
すると電流をパチパチさせながら巨大な電気のドラゴンが現れ、ピンクのドームに巨大な口から電流を放った。
バリバリバリ
パリン
ピンクのドームが粉々に崩れ落ちる。
「リン。あの機械を破壊してくれ!マロンとミコトは聖騎士達を無力してくれ!」
「了解よ!」
「わかった!」
「任せておけ!」
3人が地上に向かって行く。オレは皇帝トラヤスのいる天幕に向かった。
「陛下!魔法の無効化が破られました!」
「慌てるな!軍務卿!奴が来る!急いで対魔王兵器『量子砲』を用意せよ!」
「ハッ」
その頃、リンは魔法無効装置『ニュートラライズ』の前にいた。装置を守ろうと兵士達が立ち塞がる。リンは背中の剣に魔法を付与する。すると剣から眩しい光が放射され、兵士達が後ずさりした。だが、指揮官の声を聞いて兵士達が気を取り直してリンに向かって行く。リンは兵士達の片腕を斬り落とした。
ギャー
ウワー
片腕を斬り落とされた兵士達が地面を転げまわった。他の兵士達は恐怖に足を震わせて立っているのが精いっぱいだ。
「腕をなくしてもいいと思う者は前に出なさい!」
リンの身体から出ている純白の翼から眩しい光が放たれ、目の前にあった魔法無効装置『ニュートラライズ』はドロドロに溶けてしまった。
「私の役目は終わりね。」
一方、マロンとミコトは聖騎士達と対峙していた。聖騎士が火魔法を放つがマロンの結界で阻まれる。逆にマロンが剣に魔法を付与すると剣からゆらゆらと真っ赤な炎が現れた。
「ミコト姉もガンバ!」
マロンは聖騎士達に斬りこんでいく。ミコトも剣に魔法を付与した。すると、七色の光が剣から放射された。
「私だってアスラ達の家族なんだからね!」
ミコトも聖騎士達の中に斬りこんだ。オレは3人の様子を上空から眺めている。
「なんかみんな頑張ってるな~。」
オレは皇帝のいる天幕の上空まで来て、魔法で全員に聞こえるようにして皇帝に呼びかけた。
「皇帝!いるんだろ?出て来いよ!」
天幕からトラヤス皇帝が出てきた。
「お前が魔王か?」
「ああ、そうさ。お前達が恐れる魔王だ。」
オレは上空に向かって魔法を放った。
バッーン
皇帝の周りにいる兵士達の足ががくがくしている。
「お前達に勝ち目はない。帝国に帰れ!」
「ふざけたことを!帝国に戻ろうともお前や黒龍が存在する限り、我々に平和は来ないのだ!」
「そうか。不思議だな~。オレは平和が好きなんだけどな~。だからお前みたいに世界の平和を乱すものは全てオレの敵なんだよ!」
「ならばこのわしを倒してみろ!わしはこの手に世界をつかみ取る!世界は我が帝国が支配するのだ!」
「やっと本性を現したか!」
「俺が世界を支配すれば世界は平和になるさ。」
「お前は神にでもなったつもりなのか!恐怖で押さえつけるお前のやり方では真の平和は来ないさ。」
ドビューン
皇帝のいた天幕が光ったと思った瞬間、オレの胸に強烈な痛みが走った。自分の胸を見ると20㎝ほどの穴が開いていた。そして、意識がどんどん遠のいていく。オレはそのまま地面に落下した。
バッタン
何が起こったのかと一瞬静まり返ったが、すぐに兵士達が大声を上げた。
「ヤッター!魔王を倒したぞー!」
「皇帝陛下バンザーイ!」
「勝ったぞー!」
オレが撃たれて落下するのをリン、マロン、ミコト、それに大精霊達が見ていた。
「アスラー!」
「アスラ兄!」
「アスラー!」
一番近くにいたリンがオレの近くに駆け寄ってきた。そして、オレの周りに群がっている兵士達を斬り倒して自分の膝の上に抱きかかえた。
ドクン ドクン ドクン ドクン
リンが敵に向かって大声で叫んだ。
「あなた達、早くこの場を離れなさい!」
「何を言ってるんだ!お前は!魔王はすでに死んだではないか!この皇帝トラヤスが誰もできなかった魔王討伐を成し遂げたのだ!ハッハッハッハッ」
「あんた達は何もわかってないのね!魔王はこれから生まれるのよ!死にたくない者は早くこの場を離れなさい!」
リンが言い終わると同時にオレの身体から漆黒の靄が辺り一帯に溢れ始めた。空気がどんどん冷えていく。まるであたり一帯の空気がオレに集まるかのように流れ始めた。
「軍務卿!何をしている!この者にとどめを!」
「で、で、ですが、皇帝!」
軍務卿も近くにいる兵士達も顔が青ざめている。これから何が起こるのか想像したのだろう。
バッ————ン
突然鳴り響いた大きな音に兵士達が腰を抜かした。そして、漆黒の翼を背中につけ、身体全体からどす黒い巨大なオーラを纏った魔王が現れ、上空に舞い上がった。
「我の言うことが聞けなかったようだな。この世界の平和を乱すものには死を与えよう。」
オレの全身から溢れ出ているオーラがさらに巨大化し、辺り一帯を飲み込んでいく。
「もう一度奴を狙え!撃ち殺せ!」
金属の筒を持っている兵士達がオレに鉄の球を打ち込んでくる。さらに、先ほどの兵器がオレに放たれた。
バン バン バン バン
ドビューン
鉄の球も、兵器から放たれた光線もオレの身体から溢れ出る漆黒の靄に飲み込まれていく。まるでオレを中心にブラックホールができているかのようだ。そして、オレが手を下に向けると、先ほど放たれた鉄の球と光線が兵士達に向かって飛んでいった。
ズバッ ズバン ズバッ
バーン
兵士達は頭を鉄の球に撃ち抜かれて地面に倒れ、さらに光線を放った兵器は大きな音とともに爆発してしまった。
ドッガーン
リンが大きな声で叫んだ。
「早く逃げなさい!全員殺されるわよ!早く!」
兵士達は次々にその場から逃げていく。だが、軍務卿と皇帝だけは逃げられない。オレが2人の身体の自由を奪ったからだ。
「わ、わ、私は皇帝の命令に従っただけだ!ゆ、許してくれ!」
「貴様!なにを!裏切るつもりか!」
「見苦しいな!ごみは消え失せろ!」
パッチン
オレが指を鳴らすと軍務卿の身体がどんどん膨れ上がる。
「た、助けてくれー!」
グチャ
軍務卿はその場で破裂して死んだ。
「わしは命乞いはせぬ!魔王!」
「貴様のせいで一体どれだけの人々が苦しみ、悲しんだかわかるか!貴様はこれからその報いを受けるんだ!未来永劫にな!」
オレが皇帝に手を向けると、皇帝の後ろに漆黒の十字架が現れた。そして、皇帝がその十字架に張り付け状態になった。
「自分の行いを地獄で悔いよ!」
パチン
指の音と同時に十字架ごと皇帝の姿は消えてなくなった。その様子を見ていた兵士達は失禁しながら逃げていく。
「こいつらもゴミだな!全員まとめて始末してやろう!」
オレが魔法を放とうとすると、精霊女王ラミリスがオレの周りに巨大な結界を張った。そしてリンがやってきて、オレの頭を力いっぱい殴った。
バッコン
「アスラ!アスラ!目を覚ましなさい!アスラ!」
上空から巨大な光がオレに向かって差し込んできた。そして何故かオレは突然意識を失った。




