帝国との戦い
それから数日が経った。作戦会議という名目で世界樹でしっかり寛いでいたオレ達は、スチュワート王国とオスマイ帝国との国境にやってきた。国境を境にして2㎞離れた場所に、帝国軍と王国軍が対峙している。
「いよいよね。」
「ああ。そうだな。最後にもう一度確認しておくけど、なるべく帝国兵は殺さないこと。いいな!」
「わかってるわ。」
「手加減覚えた!大丈夫!」
「アスラ。一ついいか?」
「なんだ?」
「自分達の命が危険になった時はどうするんだ?」
「その時は仕方がないさ。相手を殺してでも自分を守ってくれ!リン、マロン、ミコト。お前達はオレにとって掛け替えのない家族なんだから。」
ミコトも顔を赤くしながら返事をした。
「わかった。」
そしていよいよ帝国軍が動き始めた。オレは手を前に出し精霊達を召喚した。
「我のもとへ集へ!『大精霊よ!』」
すると召喚の指輪が光り、そこに精霊女王ラミリスをはじめとして7大精霊達がやってきた。
「ガイア様。いよいよですね。」
「はい。大精霊のみんな。予定通り頼む。」
水の大精霊ウンディーネがオレの腕に抱き着いて言ってきた。
「任せておいて!ガイアちゃん。」
一方、大地の大精霊ノームはサラマンダーと一緒に声をかけてきた。
「大丈夫だ!安心していてくれ!」
「俺達大精霊の力を見せてやるさ。」
大精霊達が帝国軍に向かって行く。最初に大地の大精霊ノームが10万人の兵士達を取り囲むように高い壁を作り出す。まるで地震のように大地が揺れ、突然目の前に土の壁が現れたのだ。帝国兵達は恐怖で怯え始めた。
「陛下。いよいよ魔王が現れたようです。」
「わかっている。兵士が動揺し無いように落ち着かせろ!軍務卿!」
「ハッ」
さらに、火の大精霊が土の壁を燃やし始めた。高い土の壁に閉ざされた空間はどんどん熱くなっていく。暑さに耐えられなくなった兵士達が次々に軍服を脱ぎ始めた。
「これも魔王の仕業なのか!」
「こんなんで俺達勝てるのか?相手は魔王なんだろ!」
兵士達が動揺する中、軍務卿の指令を受けた将校達が兵士達の間を駆け巡る。
「我らの後ろには皇帝陛下がおられるのだ!安心するがよい!」
兵士達の中から聖教国の聖騎士達が前に出て、燃え上がる土の壁に魔法を放つ。すると、燃え上がる土の壁が崩れ落ちた。
ドッガーン ドカドカン
帝国の兵士達も汗びっしょりになって壁を崩し始めた。壁が取り払われたときには兵士達はすでにへとへとだ。地面に座り込んでいる者達もいる。
「今度は私達の番ね。」
水の大精霊が魔法を唱えると空から雨が降り始める。さらに風の大精霊シルフィーが風を起こした。軍服を脱いだ兵士達の身体に冷たい雨が当たり、さらにそこに冷たい風が吹いているのだ。
「今度は何なんだ?!」
兵士達がぶるぶると震え始める。天幕の中にいた皇帝が近くの兵士に言った。
「軍務卿を呼べ!」
「ハッ」
しばらくして軍務卿が天幕までやってきた。
「軍務卿!まだ魔王の姿が見えぬか?」
「はい。暗部のものに命じて探させているのですがどこにも見当たりません。」
「これだけの魔法を使っているのだ!近くにいるに違いない!よく探せ!」
「ハッ」
軍務卿が天幕から出ようとした時に皇帝が呼び止めた。
「軍務卿!」
「はい。なんでしょうか?」
「いよいよあれを使う時だ!すぐに準備させよ!準備ができたらすぐに使え!兵士達の動揺を抑えるのだ!」
「ハッ」
軍務卿は天幕を出て将校に声をかけた。
「魔法無効装置『ニュートラライズ』を準備せよ!」
「ハッ」
兵士達が布で覆った大きな機械を運び出してきた。姿を消して上空から眺めていたオレ達はそれを見ていた。
「アスラ!あれ何かしら?」
「多分、魔法を無力化する機械だろうな。魔法用のバリアみたいなもんだよ。きっと。」
「どうするんだ?アスラ!魔法を無力化されたらお前も魔法が使えないんだろ!」
「そうだろうね。」
「何をのんきなことを言ってるんだ!魔法が使えなくなるかもしれないんだぞ!」
「大丈夫よ。ミコト。アスラには考えがあるようだから。」
「アスラ兄は最強!」
機械の準備が整ったようだ。帝国兵が空に向けて機械から何かを発射した。空全体から地上に向けてピンク色のドームのようなものが現れた。ノームの作り出した土の壁がどんどん消えていく。地上では雨もあがり風もやんだ。兵士達は大騒ぎだ。
「皇帝陛下!ばんざーい!」
「皇帝陛下!ばんざーい!」
オレは精霊女王ラミリスに念話で話した。
“そろそろオレが行くけど。この戦争が終わった後、ドリアードとノームに戦地の回復をお願いしたいんだけど。”
“ガイア様。大丈夫ですよ。それよりもウイスプとシェイドが自分達の出番がないと煩いんですけど。”
“ごめん。ウイスプとシェイドには次の機会にお願いするよ。”
“わかりました。そう伝えておきます。お気をつけてくださいね。”
“ありがとう。”




