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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
オスマイ帝国
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水の大精霊ウンディーネ

 オレ達は帝国の街ジェリアに立ち寄った。そこで、不思議な事件に遭遇した。高地に存在する街では井戸水は重要なのだが、東西南北にある井戸のうち北の井戸以外が枯れてしまったのだ。どうやら魔物が関係しているようだったので、ギルドマスターに頼まれたオレ達は近くの森を捜索することにした。



「やっぱりこの穴が原因かもしれないわよ。もしかしたら、魔物がこの街の地下に住み着いて、その結果井戸の水が枯れたんじゃないかと思う。」


「リンの言う通りだろうな。でも、どんな魔物なんだ?」



 するとマロンがつぶやいた。



「キング土竜かも?」


「キング土竜?」


「アスラは知らないの?キング土竜っていうのは、地竜のことよ。」


「それなら知ってるさ。」


「あいつらは翼がないから本来ドラゴンじゃないのよ。でも、ドラゴンに匹敵する力を持っているから、地竜って呼ばれてるのよ。」


「地竜ってそんな厄介な奴なのか?」


「アスラ。あなたドラゴンって聞いて黒龍を思い出したでしょ?黒龍は神に近いレベルなのよ。それに比べれば普通のドラゴンや地竜なんかは全然弱いわよ。」



 オレ達が街の周りを調査すると、東西南北に大きな穴が1か所ずつ開いていた。どうやら地竜はこの穴を利用して移動しているようだ。オレ達はギルドマスターに報告に行った。



「サンチェスさん。どうやらこの街の地下に地竜が住み着いているようです。」


「なんだと~!地竜が~!」


「はい。間違いないですね。」


「なるほどな。それならば、この街の井戸が枯れたのも納得できるな。ならば街のみんなを集めてすぐに討伐隊を結成しないと。」


「その方がいいと思います。」


「アスラ。リン。マロン。お前達も討伐隊に参加してくれるんだろうな?」


「ええ。そのつもりですけど。」


「わかった。すぐにみんなを集めよう。」



 サンチェスはギルドを出て行った。それから30分ほどして、街の中央広場に男達が集まった。サンチェスがみんなに説明を始めた。



「みんな聞いてくれ!どうやらこの街の地下に地竜が住み着いたようだ。井戸が枯れたのも地竜のせいだ。これから地竜の盗伐に向かう。いいな!」


「お————!!!」



 頼りなさそうな冒険者達も含めて100名で森に向かった。最初に南の穴の近くに行ったが、ここには地竜の反応がない。それでも、穴の前に大量の草を置いて火をつけた。煙で地竜を穴から追い出すつもりのようだ。街の東や西から煙が立ち上っていく。そして、少し遅れて北側からも煙が立ち上り始めた。次の瞬間、地面が揺れて耳を貫くような咆哮が聞こえた。




ギャー ギャー グァー



 どうやら、北側に地竜が現れたようだ。全員で北側に向かった。地竜は穴から追い出されたことに腹を立てているようだ。辺りの木をなぎ倒して街に向かっている。



「まずいぞ!地竜が街に行くぞ!」



 男達が上から矢で攻撃するが、地竜の硬い皮膚に跳ね返される。



「リン。マロン。行くぞ!」


「はいよ!」


「わかった!」



 オレ達は剣に魔法を付与した。オレの剣からは黒い炎が、リンの剣からは真っ赤な炎が、マロンの剣からは光が放たれている。



「リンは右足、マロンは左足を狙え!」



 リンが地竜の右から、マロンが左から攻撃した。地竜の左右の足から黒い血が流れ出る。そして、地竜はバランスを崩して横に転んだ。



「天を切り裂け!『真空斬』」



 オレは大きくジャンプして地竜の頭をはねた。



ドカッ



フー



「終わったね。アスラ兄。」


「ああ。それにしてもマロンは本当に強くなったな。」


「ありがと。」



 マロンがオレの腕に絡みついてきた。負けじとリンも反対の腕に絡みついてくる。そして、前からサンチェスがやってきた。



「感謝する。おかげで街に被害を出さずに済んだよ。だが、お前達は一体何者なんだ?はっきりとは見えなかったが、剣から炎が出ていたような気がしたんだが。」


「錯覚ですよ。サンチェスさん。俺たちはSランクなんで、時々オーラが溢れ出てしまうんですよ。」


「そうか。さすがはSランクだな。」



 その後、街のみんなが地竜を運んだ。オレ達は報酬をもらいにギルドに戻ると、結構な金額の報酬をもらうことになった。なんと白金貨2枚だ。だが、残念ながらこの街のギルドにはそれほどのお金がない。そこで、金貨5枚と報酬の支払い明細をもらうことにした。もらった支払い明細を大きな街のギルドで見せれば残金をもらえるそうだ。



「何でだよ~。地竜を討伐したのに何で井戸の水が出ないんだよ~!」


「この街ももう終わりだな。」


「水がでなけりゃ畑の作物が死んじまうじゃねぇか!」


「俺の果樹園だって終わりだぜ!」



 朝起きてみると街の人々が騒いでいる。どうやら井戸の水が枯れたままのようだ。街の人々が途方に暮れている。



「アスラ。せっかく君達に地竜を討伐してもらったのに、残念だよ。どうやらこの街はもう駄目なようだ。」



 するとリンが言った。



「地竜に殺されなかっただけでもありがたいじゃない。」


「リン。そうは言ってもな~。この街は自給自足で生きてきたんだ。このまま水がでなけりゃ、畑の作物も育たないんだよ。みんな故郷のこの街を去るしかないんだ。」



 するとマロンが小さな声で言った。



「アスラ兄。召喚の指輪!」



 確かにそうだ。召喚の指輪を使えばウンディーネを呼び出せる。だが、その時点でオレのことがこの国の皇帝に伝わってしまう。どうしようかと考えた。



「アスラ。この街を出ましょ。やるだけのことはやったんだから。」


「でも、リン。まだ水が・・・・。」


「あとは彼らが何とかするわよ。いいから行きましょ。」



 オレ達は地竜討伐で街の人々から感謝されたが、こうして街を離れるとなると逆に街の人々から白い目で見られた。それも当然だろう。街の人々が困っているときに、まるで逃げるかのように街を出て行くのだから。



「確かにあの人達には世話になったさ!でも、俺達が困っているときに出て行くなんて人情のかけらもないぜ!」


「そんなこというもんじゃないよ。あんた。あの人達は地竜を討伐してくれたんだから。」


「でもよ~。俺達はこれからどうすればいいんだよ!」



 街から少し離れたところでリンが言った。



「夜になるのを待ちましょ。」


「もしかして、リン。そういうことか。」


「さすがリン姉。」



 月が真上に昇って街が静まり返ったころ、オレ達は転移で街まで戻った。そして、召喚の指輪を前に出した。



「我が願いにこたえよ。『水の大精霊ウンディーネ。』」



 オレ達の目の前に大きな光が現れ、それが人の形に姿を変えていく。



「お呼びですか。ガイア様。」


「お願いがあるんだ。」


「わかっていますよ。この街の井戸ですよね?」


「ああ、頼めるかな。」


「はい。お安いことです。」



 ウンディーネの手から光の筋が現れ、それが東西南北へと向かった。すると、井戸の一番上まで水が来ていた。



「これでよろしいでしょうか?」


「ありがとう。ウンディーネ。」


「ガイア様、どうかまた世界樹に遊びに来てくださいね。みんな待っていますから。」



 ウンディーネが姿を消した。そしてオレ達も転移しようとすると、後ろから声をかけられた。



「アスラ。君達は一体何者なんだ?先ほどのあの女性は、水の大精霊のウンディーネ様じゃないのか?」


「見られちゃいましたね。サンチェスさん。このことは内緒にしてくれますか?」


「ああ、わかってる。たとえ何があっても口外はしないさ。」


「じゃあ、またどこかで。」



 オレ達は転移で街を離れた。



「もしかしたら、アスラ達はナデシア様が遣わしてくれた救世主なのか・・・」


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