旧辺境伯領の街コッペン
屋敷に戻ったオレは、お父様とお母様に今後のことを話した。
「お父様。お母様。オレ達、明日には帝国に向かいます。」
「アスラちゃん。またどこかに行っちゃうの?」
「はい。昼にシュバルツとマリアに偶然会いました。シュバルツからオスマイ帝国について聞きました。このままにしておけば、再び黒龍が生まれる可能性があります。オレ達はそれを止めなければならないんです。それに、魔大陸でも紛争が起こっているんです。オレ達が何とかしないと。」
「アスラちゃんが行く必要があるの?」
「よせ。ジャネット!」
「だって~!ウイリアム!」
「大丈夫ですよ。お父様。お母様。忘れたんですか?僕は不老不死ですよ。それに僕は転移魔法を使えるんですよ。」
「そうよね。」
「そうさ。ジャネット。もしかしたら、世界の平和、それがアスラに与えられた使命なのかもしれないしな。」
「確かにそうかもしれないわね。」
するとリンが小声で言った。
「アスラ。古代遺跡で見つけた魔法の水晶を渡しておけば。」
「そうだな。」
「お父様。お母様。もし僕に連絡を取りたいときはこの水晶を使ってください。僕に連絡を取れますから。」
その後、オレは両親に水晶の使い方を説明した。そしてその翌日、オレ達は帝国に向けて出発した。
「リン。オスマイ帝国の皇帝は何のために勢力を拡大してるんだ?」
「そんなこと分からないわよ。確か先代の皇帝オクタビは平和主義だったのに、今の皇帝トラヤスは何故か急に他国へ侵攻を始めたんだから。」
「一度その皇帝に会ってみたいよね。」
「そうね。」
帝国に行くには旧フランクリン辺境伯領を通過していく。現在は王族の直轄領となり、代官が派遣されている。オレ達は王都から徒歩で向かっている。王都を出発して3日ほどしたころ、旧辺境伯領の街コッペンに到着した。
「この街って王族の直轄領なんだよな~。なんか活気がないと思わないか?」
「確かにね。でも、どうしてかしら。」
「あそこ!」
マロンの指さす方向を見ると、役人らしき男が店主らしき男を殴っていた。
「だからもう支払えるお金はないんです。許してください。」
「お前、代官様の命令に従えないのか!」
バッコン ボコッ
オレ達は兵士達を止めに行った。
「やめろ!」
「なんだ?お前達は?」
「旅の途中だ。」
「お前達には関係ないことだ。」
兵士達はどこかに行ってしまった。オレ達は店主に話を聞いた。
「何があったんですか?」
「10数年前にこの街の領主だった辺境伯が反乱を起こしたんです。その反乱が鎮圧されてこの街は王族の直轄領になったんですが、その後代官が送り込まれてきて、その代官達がやりたい放題なんです。高い税金を課したり、貧しい家の女性を屋敷に召し抱えて性奴隷みたいにしたり、もうみんな我慢の限界なんです。」
どうやら、王都から送り込まれている代官がこの街で権力を持っているらしい。
「リン。マロン。この街の大掃除をしたいんだけど。」
「そうね。」
「大掃除する!」
オレ達はまず宿を探すことにした。街の中を歩いているが、すでに閉めている店もある。街に活気がない。
「冒険者ギルドに行ってみましょうか?」
「今回はやめておこう。オレの冒険者カードはこの国では知られすぎているからさ。」
「でも、すでに十数年経っているのよ。」
「でも、Sランクの冒険者ってそんなに多くないし、ましてやアスラって名前は特にね。」
「確かにそうね。」
どの街でも宿屋は冒険者で賑わっているものだが、この街では違うようだ。他の店と同じようにすでに店仕舞いしている宿屋もあった。かなり歩きまわってやっと1軒見つけた。
「いらっしゃい。宿泊かい?」
「はい。」
「なん部屋必要だい?」
いつものようにリンが答えた。
「広めの部屋を1部屋でお願いします。」
「はいよ。じゃあ、1泊2食で一人金貨1枚ね。」
「えっ?!」
「悪いね~。この街は税金が高いからね。どうしても宿泊代も高くなるのさ。」
オレはお金を払って部屋に行った。部屋は想像通りの広さだったが、家具類が少ない。お風呂も故障中と書いてあった。
「何よ。お風呂が使えないじゃない!」
「仕方ないよ。」
翌朝朝食を食べに食堂に降りていったが、朝食はパン一つと果実水だけだ。この分だと晩御飯も期待できない。オレ達は、代官屋敷の様子を調べようと向かった。
「アスラ兄。なんか兵士がたくさん。」
「そうだな~。何かあるのかもな。」
代官屋敷の近辺では兵士達が行ったり来たりしている。オレは魔法で彼らの話を聞いた。
「辺境伯の残党どもが裏山に潜んでいるらしいぞ。」
「やはり街の誰かが支援しているな。」
「間違いないだろうな。」
「アントニー様にすぐに報告だ。」
「ああ。」
どうやら10数年たった今でも、辺境伯の家臣達が残っているようだ。
「ねぇ。アスラ。辺境伯の家臣の人達のところに行ってみない?」
「どうして?」
「だって興味あるじゃない。反乱があってから十数年経っているのよ。普通だったら、他の街に行ったりするでしょ。どうしてこの街に残っているのかしらね。」
確かにリンの言う通りだ。反乱軍だったと知られたら死罪になるかもしれない。それにもかかわらず、この街に残っているのには何か理由があるのかもしれない。
「リン。マロン。行ってみよう。」




