懐かしい王都ビザンツ
お父様とお母様に再会してすべてを説明した後、オレ達は全員で食事をすることになった。久しぶりの伯爵家の料理だ。どれも懐かしく美味しかった。
「それにしてもリンちゃんとマロンちゃんはよく食べるわね。」
「そうなんです。この二人のお陰で食費が大変なんですよ。」
「何言ってるのよ!その分、私達だって魔物を討伐してるでしょ!」
「マロン頑張ってる!」
リンに言われて気付いた。今まで討伐した魔物がオレの魔法袋に入っているが、最近換金していない。つまり、ものすごい数が入っているのだ。
「お父様。」
「どうしたんだ?」
「僕の魔法袋に討伐した魔物が入っているんですけど、どうしたらいいと思いますか?できればこの国の役に立てたいんですけど。スラムとかがあるのであれば、その人達のために使いたいんです。」
すると、お父様とお母様がお互いの顔を見た。
「どうしたんですか?」
「アスラ。この国にスラムはないんだ。第1王女マリア様と『黒龍殺しの英雄』シュバルツ侯爵の婚礼に際して街が整備されてな。スラムに住んでいた人達にも何らかの仕事が与えられたんだよ。」
「そうなんですか!すごいじゃないですか!あの二人が結婚したんですね。」
「そうよ。アスラちゃんのクラスメイトだったマイケル男爵も結婚したぞ。確か~・・・」
「シャリー=アウディよ。ウイリアム!」
「ああ、そうだったな。アウディ男爵家のシャリーだったな。」
これにはオレも驚いた。マイケルがとうとうシャリーを射止めたんだ。
「アスラちゃん。あなた誤解しているようだから言っておきますけど、ビクトル国王も他のみんなもあなたのことを悪しき存在だなんて思っていないのよ。あなたは黒龍からこの国を守った英雄なんですから。」
「そうだぞ!胸を張って街を歩いていいんだぞ!」
どうやらオレは誤解していたようだ。オレは魔王の姿を見せたことで、この国から討伐対象とされるんじゃないかと思っていたのだ。
「アスラ!私、アスラが育った街を見てみたいわ!」
「私も見たい!」
「じゃあ、明日王都を案内するよ。」
その日、オレは久しぶりに自分のベッドに寝転んだ。何故か横にはリンとマロンがいる。
「懐かしいわね~。このベッド!私もこんなベッドで寝てみたいとずっと思ってんだから!」
「そうなのか?確かにリンは指輪だったもんな~。」
「そうよ。」
隣ではすでにマロンが寝息を立てていた。それにしてもマロンも成長した。考えてみればもうマロンも15歳だ。その翌日、オレ達は王都ビザンツを散策することにした。それほど街は変わっていなかった。
「アスラ。これからどうするの?」
「どうするって?」
「ずっとこの国に住むつもりなの?」
マロンも心配そうに見ている。そうだ。マロンの住んでいた魔大陸も今は混乱しているんだ。それに帝国はこの国や他の国にちょっかいを出している。スチュワート王国とグラッセ王国は少しは平和になったが、他の国では未だに奴隷制度や犯罪が横行しているのだ。このままだと、また黒龍が生み出されてしまうかもしれない。
「ちょっと休んだらオスマイ帝国に行って、それから魔大陸に行こうか。」
「うん!」
マロンの不安が解消されたようだ。すると、馬車がオレ達の横を通り過ぎようとした。
バタッ
馬車がオレ達の横で止まった。馬車からかなり身分の高そうな貴族とその夫人が降りてきた。
「アスラ!アスラなの?」
見るとそこには見覚えのある顔の男女が立っていた。マリアとシュバルツだ。
「久しぶりだな。シュバルツ!マリア!」
「やっぱり生きていたんだな。アスラ!」
「ああ。それよりも聞いたよ。結婚したんだってな。おめでとう。シュバルツ。マリア。」
「ありがとう。アスラ。でも、あなたどうして変わらないの?」
両親にはすべてを話した。だが、彼女達には話すのをためらった。オレのことを人々に知られたくないからだ。
「マリアも知っている通り、オレは魔王さ。魔王は年はとらないのさ。」
「そうなの?」
「ああ。」
マリアとシュバルツがリンとマロンを見た。
「ああ、彼女達か。オレの冒険者仲間のリンとマロンだ。今、世界中を回っているんだ。アニム王国やエルフ王国、ドワーフ王国にも行ってきたんだぜ。」
「そうか。元気そうでよかった。」
「まあな。マイケルとシャリーも結婚したんだってな!」
「そうさ。あいつらには子どももいるんだぜ。名前をアスラってつけたんだ。」
「そうか。おめでとうと伝えといてくれよ。」
「彼らに会わないのか?」
「ああ、オレ達は明日には帝国に向けて出発しないといけないからな。」
帝国と聞いてマリアもシュバルツも心配そうな顔になった。
「帝国に行くの?」
「アスラ。帝国の噂を聞いているか?」
「いいや。どんな噂だ?」
「オスマイ帝国は近隣の小国を武力で属国にしているんだ。属国にならなければ、攻め込んで滅ぼしているんだよ。今、帝国に対抗できるのはこのスチュワート王国とグラッセ王国、それとナデシア聖教国だけさ。かなり危険だぞ!」
「その話を聞いたら、余計に行かないといけなくなったよ。」
「そうか。」
シュバルツ達と別れた後、オレ達は再び王都の散策を続けた。懐かしい建物も見える。冒険者ギルドだ。それに、あのレストラン『ミリュー』もそのままだ。オレ達はミリューに行って食事をした。
「アスラ!この店の料理、ものすごく美味しいわー!」
「うん。美味しい!」
「この店の料理はなんか昔いた勇者が伝えたらしいよ。」
「勇者が?なら、この料理は異世界の料理ってこと?」
「そういうことになるね。」
「アスラ兄。この世界以外にも世界があるの?」
「間違いなくあると思うよ。実際に勇者が召喚されたんだからさ。」
王都の散策を終えたオレ達は、両親の待つ屋敷に戻った。




