創造魔法でお風呂づくり
ドワーフ王国もアニム王国やエルフ王国と同じだ。人族が珍しいらしく、人々がオレ達のことを見てくる。街のところどころに大きな建物がある。その建物からは金属を叩くような大きな音が聞こえてきた。
カン カン カン
街を歩いていると一人のドワーフが声をかけてきた。
「お前さん達、ちょっといいかな。」
「はい。なんですか?」
「そっちのお嬢ちゃんが持っている剣だが、ちょっと見せてくれないか。」
どうやらマロンの剣に興味があるようだ。マロンが腰から剣を抜いて見せた
「おお~!やっぱりな。これはどこで手に入れたんだ?」
「アニム王国の王都ですけど。」
「そうか。ドルトンはアニム王国にいるのか。まったく何て奴だ!」
「もしかして、これを売ってくれた方はお知り合いなんですか?」
「わしの弟じゃよ。酒に酔っぱらって暴れた挙句、この国を追放になったんじゃよ。」
「そうだったんですか。でも、そんな風には見えませんでしたよ。優しそうで腕のいい鍛冶師って感じでしたけど。」
「素面の時はな。だが、少しでも酒が入ると別人になるんじゃよ。困ったもんだな。でも、まあ、元気にしていることが分かったんでいいがな。」
するとリンが言った。
「物凄く元気そうでしたけどね。『俺の剣を使える奴は多くない。使えるものにしか売らん。』とか言っていたわよ。」
「そうかそうか。変わらんな~。あいつも。だが、それは真実なんじゃ。あいつの剣は使いこなせる者がほとんどいないんじゃよ。だが、あんたはそれを持っている。ということは、可愛い顔をしているが相当な腕ということじゃな。ハッハッハッハッ」
「うん。私、強い!」
「立ち話もなんじゃ。うちに寄っていかんか。」
「いいんですか?」
「ああ、お茶ぐらいしかないがな。ハッハッハッハッ そうだ。わしはデンデンじゃ。よろしくな。」
「オレはアスラ。こっちはリンとマロンです。」
グラッセ王国のガンジにドワーフ族は酒が好きだと聞いていた。何かの時のためにと買っておいた酒が大量に魔法袋に入っている。
「ここがわしの家じゃ。」
ドワーフ族は小柄な種族だ。だが、意外にも部屋は広い。ただし、家具類はやはり小さめだ。
「お邪魔しますね。」
床に座るとなぜか温かい。
「アスラ!この床、温かいんだけど。」
「気が付いたか!この床の下には金属の板が入っていてな。その金属を魔石で温めているんじゃよ。」
「凄いですね~。」
「まあな。ドワーフ王国じゃあ当たり前の作りじゃよ。」
「これは何ですか?」
「ああ、水が出るようになっているのさ。そこの出っ張りを触ってみればわかるさ。」
オレは言われた通り、蛇口の横の出っ張った金属に触れると蛇口から勢いよく水が出た。
「すごいですね!こんなのグラッセ王国にはないですよ。」
「そうかいそうかい!」
デンデンさんは顔を真っ赤にして喜んでいた。
「ちょっと待っててくれ!今、酒を用意するからな。」
「大丈夫ですよ。オレ達、お酒は飲まないので。」
「なんだ?!人族は酒を飲まないのか?」
「違いますよ。オレとそっちの二人が酒を飲まないだけです。」
「そうか~。残念じゃな~。」
デンデンが寂しそうな顔をしている。そこで、オレは魔法袋から酒を出した。
「これ、人族の国の酒ですけど。飲んでみますか?」
「お前さん。今、どこからそれを取り出したんじゃ?」
「魔法袋ですけど?」
「魔法袋?ちょっと見せてくれ!」
「いいですよ。」
どうもドワーフ族というのは魔道具に弱い様だ。以前も同じようなことがあった気がする。
「これをわしに譲ってくれんか?」
「ダメですよ。これ一つしかないんですから。」
「そうか~。残念じゃな~。」
「まあ、そのお酒を飲んで元気になってください。」
オレの手渡した酒をデンデンが一口飲んだ。
「なんじゃ!これは!旨い!旨すぎるぞ!」
デンデンの大きな声が道行く人や近所に聞こえたようだ。人がどんどん集まってきた。
「おい!デンデン!俺にも飲ませろ!」
「う、う、旨い!こんな酒飲んだことがないぞ!どうしたんだ?これは!」
どうやら1本では足りないようだ。オレは魔法袋から5本ほど取り出して、ドワーフ達に渡した。するといつのまにか宴会が始まってしまった。中には自分で酒を持って来る者達もいた。
「酒のお礼だ。好きなだけここに泊まっていいぞ!」
「お風呂はあるの?」
「風呂?なんじゃそりゃ?」
どうやらドワーフ族の家には風呂はない様だ。
「どうする~。アスラ。」
「アスラ兄。お風呂欲しい!」
ドワーフの家には蛇口から水が出る装置がある。ならば風呂も作れるんじゃないか、と思った。そこで、すでに寝ているデンデンさんをおいて裏庭に行った。
「ここならいいかもね。」
「もしかしてお風呂を作るの?」
「だって、リンもマロンも入りたいんだろ?」
「まあね。」
オレは創造魔法を使った。
「出でよ!浴槽!」
すると、土がどんどん盛り上がり浴槽の形に変化した。さらにその周りに土壁が現れた。
「凄い凄い!」
「まだだよ。ここにこうして蛇口を作って、魔石を埋め込んで・・・・完成だ。」
デンデンさんの屋敷からヒントを得たおかげで、自分でお風呂を作れるようになった。
「リン。その魔石に魔力を流して見て。」
「こ~お。」
ジャジャ————
蛇口から温かいお湯が出てきた。完璧だ。浴槽の周りの土壁が目隠しになっている。
「アスラって天才?」
「まあね。」
「これでいつでもどこでもお風呂にはいれるわね。」
「リン姉。アスラ兄は転移できるんでしょ?」
マロンが何を言いたいかすぐに分かった。こんな苦労をしなくても、人族の宿屋に行けば済む話なのだ。
「マロン。わかってないわね~。こうした手作りがいいんじゃない。」
「うん。」
二人がいきなり服を脱ぎ始めた。
「ちょっと待ってよ!オレがいるんだから。」
「キャッ!」
オレは慌てて囲いの外に出た。




