アスラ、世界樹に行く!
目の前には巨大なホワイトアントのクイーンがいる。かなり興奮しているようだ。口から毒を吐き出して攻撃してきた。
「危ないな~!」
「カイロさん。後ろに下がっててください。」
カイロがオレ達の後ろに下がった。
「アスラ!マロン!殺しちゃだめよ!囮にするんだから!」
クイーンが咆哮を上げた。
ギー! ギー! ギー!
すると、森の中から次々とホワイトアントが集まってくる。そして、10mほどの巨大なホワイトアントに変化した。その巨大なホワイトアントがクイーンと同じように毒液を吐いてきた。何とか横に飛んでそれを避ける。
「これで全部のようね。もういいわよ。アスラ!」
「わかった。」
オレはホワイトアントに向かって魔法を放った。
「すべてを焼き切れ!『ブラックサンダー』」
上空から巨大な真っ黒の雷がホワイトアントに向かって落ちた。
バキバキバキ ドドドドーン
あたり一帯が焦げ臭い。目の前には焼け焦げたホワイトアントの死体の山があった。
「す、す、すごい!」
オレ達の後ろではカイロが腰を抜かしている。
「終わったね。」
「私、何もしてない!」
「次はマロンに任せるから。」
「うん。」
ホワイトアントの死体を魔法袋に仕舞って、オレ達は街に戻った。街では真っ黒な雷が落ちたのは神の怒りだと噂になっていた。
「サーシャさんのところに行くんでしょ?」
「そうだね。報告しに行こうか。マロンはどうする?エルザちゃんと一緒にいるか?」
「二人と一緒に行く!」
オレ達はサーシャに会いに行った。
「森の様子はどうでしたか?」
カイロは真っ青な顔で黙っている。
「はい。クイーンを含め、ホワイトアントは殲滅してきましたよ。」
「たった一日でですか?」
「ええ。」
「もしかしたら、あの黒い雷はアスラ殿かリン殿の仕業ですか?」
「私じゃないわよ。アスラがやったのよ。」
「あなた達は何者なんですか?今の人族にあれほどの魔法は使えないでしょ?」
「・・・・」
するとサーシャはカイロに聞いた。
「カイロ!あなたが見たことを説明しなさい!」
「そ、そ、それは・・・」
エルフ族は女王の意見は絶対だ。命令に背くわけにはいかない。だが、オレ達に口止めされている。カイロの顔色が青から白に変わりつつあった。限界のようだ。
「わかりました。オレから説明しますよ。カイロさん。約束を守ってくれてありがとう。もういいですよ。楽にして。」
「は、はい!」
オレは説明を始めた。クイーンを討伐しようとしたが居場所がわからないで困っていた時にドリアードが現れて教えてくれたこと。そして、オレ達が世界樹に招かれたことを説明した。
「まさか、ドリアード様が現れたのですか?それに世界樹に招かれたと。」
「はい。そうですよね!カイロさん。」
「はい。その通りです。」
サーシャが目をつむり精神を集中し始めると、サーシャの周りに小さな光の球がいくつも現れた。恐らく精霊達だ。
「アスラ殿の話は本当のようですね。明日、一緒に世界樹まで行きましょう。」
その日、オレ達は再びカイロの屋敷に戻った。屋敷に着くと、マロンはいきなりエルザのところに行った。仲のいい姉妹のようだ。
「アスラ!本当に世界樹に行くの?」
「どうして?」
「あなたが神界にいたことがばれちゃうわよ。」
「ごめん。なぜオレが神界にいたのか覚えてないんだ。ただ、昔のオレがガイアって呼ばれていたのは覚えてるんだけどさ。」
「私もよく知らないけど、ガイアって名前には物凄く懐かしさを感じるのよね~。」
「そうなのか?リンも昔の記憶がないんだよな~?」
「そうよ。以前話したけど、気が付いたら天使見習いとして神界にいたからね。」
その日は全員で食事をしてゆっくり寛いだ。翌日、オレとリンとマロンは再びサーシャを訪ねた。
「よく来てくれましたね。では、世界樹まで行きましょうか?」
「はい。お願いします。」
サーシャの館の裏庭に行くと、サーシャが何やら魔法を唱え始めた。すると、目の前の景色が変化しはじめる。どうやら結界魔法のようだ。サーシャの魔法で世界樹が消えていただけのようだった。
「大きいわね~。私、世界樹って初めて見たわ。」
なぜかオレには懐かしさが感じられた。オレ達が世界樹に近づいていくと、世界樹から大きな光の球がやって来て人の形に変化した。サーシャがいきなり片膝をついた。オレ達も真似をする。
「あら、よく来てくださいましたね。ガイア様。それにリンさん。どうぞ立って普通に話をしてください。」
オレには目の前の美女の記憶がない。
「人違いではないですか?オレはアスラです。精霊女王様。」
「そんなことありませんよ。私がガイア様を見間違えるなんてありえませんから。あなた様が小さいころよく一緒に遊んだじゃありませんか?」
マロンもサーシャもいる。でも、もう仕方がない。
「すみません。オレ、記憶がないんです。魔王になってからの記憶しかないんですよ。」
「そうだったんですね。ごめんなさい。でも、私も信じられなかったんですよ。あのお優しいガイア様が魔王になられたなんて。」
「オレも記憶があやふやでよく覚えていないんですよ。」
「多分、ナデシア様に記憶を取り上げられてるんですね。」
「私も記憶がないのよね~。」
「あら。リンさんもなの?」
「そうよ。何故かしらね?まあ、いいでしょう。ガイア様。今日は私からのプレゼントをお渡ししようと思っていたんですよ。指を出しくれますか?」
オレが指を差し出すと、精霊女王はオレの指に金色の指輪をはめてきた。
「これは?」
「これは召喚の指輪ですよ。我々精霊はあなた様の呼びかけにいつでも応じます。遠慮なく呼んでくださいね。」
するとマロンが聞いた。
「私には?」
「ごめんなさい。この指輪は一つしかないの。それに、この指輪をはめられる存在は限られているのよ。」
「アスラ!試しに水の大精霊なんかを呼んでみなさいよ!」
「いいんですか?」
精霊女王を見ると首を縦に振った。
「われの前に現れよ!『水の大精霊ウンディーネ』」
すると、目の前に大きな光が現れ、人の形に変化した。かなり胸の大きな美女だ。
「ありがとう!ガイアちゃん!ウンディーネお姉さんを呼んでくれて!」
「ウンディーネ!ダメですよ!」
「だって~。精霊女王様。ガイア様と会うのは2000年ぶりなのよ~。いいじゃないですか~。」
リンとマロンがオレの腕を掴んでウンディーネから遠ざけた。
「ダメよ!アスラは渡したと一緒にいるんだから!」
「ダ~メ!」
「あら?リンさんじゃないの?」
「そうよ。久しぶりね。」
「なんか。リンさんって幼くになってない?」
「いいのよ!アスラに合わせてるんだから!」
オレ達の会話を目を丸くして聞いている人物がいる。サーシャだ。もう、サーシャにはすべてを知られてしまったようだ。




