エルフ王国の街エルバート
街に行く途中にいろいろ教えてもらった。どうやらエルフ王国には1つの街しかないようだ。1つの街でこの広大な森を管理しているのは信じがたいことだ。
「ここが私の住んでる街エルバートです。」
「エルザ!そいつらは人族じゃないか!どうしてここまで案内したんだ?」
「私が森で薬草を取ろうとしていたら、コモドンの群れに襲われたの。お兄さん達が助けてくれたの。それにこの人達、ターシャ様の知り合いよ。」
「そうなのか?疑って申し訳ない。中にどうぞ。」
「は、はい。」
中に入るとエルフだらけだ。街並みはスチュワート王国のオレの住んでいた村とあまり変わらない。それほど近代的ではない。だが、お店はあるようだ。
「アスラ兄ちゃん。ちょっと待ってて。今、お母さんに話してくるから。」
しばらく待っているとエルザが大人の女性を連れてきた。
「うちの娘がお世話になったようで、ありがとうございました。」
「でも、どうしてエルザちゃんは一人で森にいったんですか?」
「今、この街全体で病気が流行ってるんです。この子の父親も病気になってしまって、その薬を作るために薬草を取りに行ったんです。」
するとリンが言った。
「ターシャさんは治癒魔法を使えましたよ。」
「そうなんです。私達エルフ族は治癒魔法を使える者もいるんですが、それはあくまでも怪我の場合なんです。病気には魔法は効きませんから。」
オレはミレイさんの病気を治した。だから、治癒魔法は病気もけがも治せるものとばかり思っていた。
「エルザちゃん。お父さんのところに連れて行ってくれるかな?」
「どうして?」
「お父さんの病気を見てみたいんだ。」
エルザが母親の顔を見た。
「わかりました。家まで案内します。」
エルザ達の後をついて行くと、結構大きめな屋敷が見えてきた。その屋敷の中に入ると部屋がいくつもある。
「こちらです。」
ベッドの上にはエルフの男性が寝ていた。物凄い汗だ。目に魔力を集中させると胸と腹に黒い影が見える。
「リン。この人達は信用できそうだからいいよね?」
「そうね。どうせアスラは放っておけないんでしょ。」
「まあね。」
オレは両手の袖をまくった。そして、魔法を発動する。
「病よ!消えろ!『パーフェクトヒール』」
すると、オレの手から眩しい光が放たれ、その光が寝ている男性の身体を包み込む。そして身体から黒いものが現れて霧散していった。
「エルザちゃん。もう大丈夫だよ。」
「本当に?本当に治ったの?」
「ああ、本当さ。目が覚めれば起きれるからね。」
「お兄ちゃん。ありがとう。」
すると、母親が聞いてきた。
「あなた方は何者なんですか?人族ではありませんよね?」
「どうしてですか?」
「その指につけているのは世界樹の指輪ですよね?それに人魚の指輪。あなた方が人族だとは思えません。」
「まあ、いいじゃないですか。それより、ご主人の目が覚めたようですよ。」
「カイロ!」
「ああ、メルモにエルザ。俺は何をしていたんだ?」
「あなたは病気で意識を失っていたんですよ。」
「そうだったのか。そちらの方は?」
「あなたの病気を治してくださった・・・」
「ああ、アスラです。こっちはリンとマロンです。」
「そうか。君が夢の中の神様だったんだね。」
「えっ?!」
それからカイロが夢の中の話をしてくれた。カイロが大きな雲に押しつぶされそうになっていた時に女神様が現れて、あの神にお願いしなさいと言われたそうだ。見るとそこには少年の神様がいて、無邪気にその雲をどんどん崩してくれたそうだ。そして雲が無くなった瞬間、目が覚めたらしい。
「ありがとう。お陰で助かったよ。それで、君達は何者なんだい?神様と天使様なのかい?」
「違いますよ。普通の人族です。」
「カイロ。アスラさん達はああいってるけど、信じられる?世界樹の指輪と人魚の指輪をしているのよ。」
「そうなのか。でも、命の恩人を疑ってはいけないな。」
「そうね。あなたの言う通りね。ごめんなさい。アスラさん。」
「別にいいですよ。」
「ところで泊まるところはあるんですか?」
「いいえ。」
「そうなのね。良かったら我が家に泊まって下さい。何のおもてなしもできませんけど。」
「ありがとうございます。」
オレ達はエルザの家に泊まらせてもらうことになった。マロンはラーシャの時のようにエルザと楽しそうだ。妹ができたように感じているのだろう。
「アスラ~。カイロさんの病気は何だったの?」
「何かの伝染病だと思うんだけど。」
「だとしたらこの街全体が危険なんじゃない?」
「そうだね。でも、原因までは分からないんだ。」
「カイロさん本人に聞いてみるしかなさそうね。」
オレ達はエルモとカイロのいる部屋に行った。
「どうしたんですか?アスラさん。」
「カイロさんの病気の原因を調べようと思うんですよ。何か心当たりがありませんか?」
「心当たりと言われてもな~。朝起きて食事をした後、いつも通り男達で森に狩りに行って、帰ってきたらめまいがして・・・・それから意識がなくなったんです。」
「森でいつもと違ったことはありませんでしたか?」
「特にないですね~。ただ、めったに見かけない魔物がいましたけど。」
すると、静かに話を聞いていたリンが言った。
「それってエントじゃない?」
「どうしてそれを?」
「やっぱりね。わかったわよ。アスラ。エントが毒花粉を撒き散らしたのよ。」
「どういうこと?」
「エントは自分の身を守る時、毒性の強い花粉を出すのよ。悪い魔物じゃないんだけど、何かに怯えてたのね。」
「森に行ってみようか?」
「そうね。でも、その前にこの街の病気の人達を治療してからの方がいいわ。手遅れになったら大変だから。」
「手遅れになったらどうなるんだ?」
「身体から木が生えてきて、エントになっちゃうのよ。」
「大変じゃないか!」
「急ぐわよ!アスラ!」
エルザと遊んでいるマロンを残して、オレとリンはカイロとエルモの案内で病人の家を治療して回った。やはりカイロと同じ症状だ。
「これで全部です。」
「終わった~!結構しんどかったよ。」
「それにしてもアスラさん。すごい魔力ですね。あれだけ魔法を使っても魔力切れしないなんて。本当に何者なんですか?」
「エルモ!いいじゃないか。詮索はなしだ!」
「ええ。わかったわ。」




