戦いを終えて
オレはオレ達のやり取りが観客達に聞こえるように魔法を発動した。
「ベンガルさん!ホワイトさんを殺したのはレーヴェさんじゃないんだ。」
「どういうことだ?父はレーヴェとの試合の後で死んだんだぞ!」
「ホワイトさんとレーヴェさんは、この国の改革を行うようにナデシア様から天啓を受けていたんだ。そうですよね?レーヴェさん。」
すると、レーヴェが驚いた顔で言った。
「どうしてそのことを!誰も知らないはずだ!そのことはホワイト殿と私だけの秘密のはずなのに、なぜ貴殿が知っているんだ!」
「簡単ですよ。オレがナデシア様から直接聞いたからですよ。」
観客席からはどよめきが上がる。そして、一体何が起こったのか理解できないようだ。
「リン!マロン!もういいよ!」
「うん!」
「わかったわ!」
オレの身体が真っ黒な靄に包まれ、靄がなくなると背中に漆黒の翼が生えた魔王がいた。そして、リンの背中からは純白の翼が出ている。マロンの背中からも黒い翼が出ている。
「アスラ殿達は一体何者なんだ?」
「オレは魔王さ!」
オレの身体から凄まじい魔力と闘気が会場を埋めつくす。本来人々は魔王と聞いて怯えるはずだが、誰も怯えない。
「ここに犯人を呼んでやるよ!」
「召喚魔法!『ダルシアよ!来い!』『バヤよ!来い!』」
地面に2つの魔方陣が現れ、そこにこの国の大貴族ダルシアと人族のバヤが現れた。2人は突然ここに転移させられて、何が起こったのか理解できないでいる。ただ、目の前に魔族達がいるのを見て驚くばかりだ。
「ここはどこだ?お前達は何者だ?」
「オレは魔王だ!お前達に聞く!嘘を言えばどうなるか想像つくだろうな。」
「なんなんだ!これは?」
「虎耳族のホワイトを毒殺したのはお前達だな!」
バヤがしらをきった。
「そんな奴聞いたこともない!」
すると、バヤの目の前に巨大な蛇が現れ、バヤの右手を喰いちぎった。
ギャー
「嘘をつくなと言ったはずだ!ダルシア!どうなんだ!ホワイトを毒殺したのはお前か!」
ダルシアの顔が恐怖で引きつっている。
「は、は、はい。私がそこにいるバヤから薬を買って、ホワイトに毒を飲ませました。」
「やはりな。どうだ?ベンガル!これでわかっただろう!お前の仇はこの二人だ。」
オレは2人に『正義の首輪』をはめた。そして、オレとリンとマロンはその場から転移して狼耳族の姿で元の席に戻った。会場内は未だに静かだ。そして、兵士達が2人を連行していった後、ベンガルがレーヴェのところに行って手を差し伸べた。レーヴェがその手を掴み立ち上がった。
パチパチパチパチ・・・・・
ワ————!!!
闘技場が大歓声で包まれた。するとボルフが聞いてきた。
「アスラさん。もしかして、また魔法の指輪ですか?」
「そうさ。この指輪って本当に役に立つんだよな~。」
するとゴン達が言った。
「俺もそれ欲しいっす!」
「俺も!」
「俺も!」
「お前達何言ってるんだ!俺達にはもったいない代物なんだぞ!」
「でも、兄貴ー!」
ハッハッハッハッハッ
試合が終わった後、観客達は帰っていった。闘技場にはオレ達とベンガル、レーヴェ、ボルフ達がいた。
「アスラ殿と言ったな。」
「ええ。貴殿がナデシア様にあったというのは本当なのか?」
ベンガルもボルフ達も真剣だ。するとリンが笑いながら言った。
「ハッハッハッ 人が神様に会えるはずないじゃない。そうよね?アスラ。」
「まあね。オレも天啓を受けただけですよ。声を聞いただけです。」
「そうなのか。それでダルシアとバヤのことを知っていたんだな。」
「ええ、まあ。」
すると、ベンガルが聞いてきた。
「アスラ殿やリン殿、マロン殿のあの姿は?」
今度はボルフが答えてくれた。
「アスラさん達は人魚からもらった魔法の指輪で変身できるって言いましたよね?」
「ああ、そうだったな。」
すると、レーヴェが首を傾げた。
「だが俺が聞いた話だと、人魚の指輪は姿を変えることはできるが、その能力までとは聞いたことがないんだがな~。」
「いいじゃないの。細かいことは。これで一件落着したわけだし。ねっ!アスラ!」
「そうさ。」
「一件落着!一件落着!」
その後は、今までのことを話をすることになった。ある日、レーヴェとホワイトに別々にナデシア様から啓示が降りたようだ。当時、騎士団長だったレーヴェには訓練中に。そしてホワイトには裏の森で魔物を狩っているときだったそうだ。ナデシア様の天啓を受けた二人は、そのことを誰にも話さずに陰で探っていたらしい。レーヴェが貴族を担当し、ホワイトが人族を調べた。2人は結託して国のお金を盗んでいただけでなく、子ども達を誘拐していたようだ。だが、武闘大会の決勝で二人が対戦することになった時、レーヴェが勝利した後でホワイトが飲んだ水の中に貴族がこっそりと毒を入れたのだ。
「すまなかった。レーヴェ殿。私はずっとあなたのことを逆恨みしていたようだ。」
「いいや。すべてを話さなかった俺の責任さ。それにしても強くなったな!まさか、騎士団長だった俺が負けるとは思わなかったよ。」
「アスラ殿のお陰だ。彼に鍛えてもらったからな。」
「すると、アスラ殿はベンガルよりも強いのか?」
「ああ。私はそこにいるマロンにすら歯が立たないよ。」
「私、強いもん!」
「そうか。これからもお互いに頑張ろうじゃないか。」
オレは気になることがあった。
「そうだ。ベンガルさん。お母さんに会いに行かないと。」
「そうだったな。」
すると、森の方から女将がやってきた。
「ベンガル!ベンガル!」
「お母さん!」
二人はお互いに抱きしめ合った。
「一体どこに行ってたんだい?ずっと心配してたんだからね。」
「ごめんなさい。どうしてもお父さんの仇を取りたくて・・・・」
「もういいのかい?」
「ええ。お父さんを殺したのはレーヴェ殿じゃなかったの。貴族のダルシアとバヤとかいう人族だったのよ。アスラ殿達が教えてくれたのよ。」
「そうだったのかい。」
「お客さん達。ありがとうね。ベンガルだけじゃなくて、主人の仇を見つけてくれたなんて。なんてお礼を言ったらいいか。」
「いいんですよ。それよりお腹がすきました。何か食べるものありますか?」
「何でも作るから言っておくれ。」
オレ達は全員でベンガルさんの実家に行って食事をした。まるで何かのお祝いのように豪華な料理が用意された。オレも魔法袋からレッドボアを出したけどね。
「アスラ殿!明日俺と一緒に王城に来てくれないか?」
「どうしてですか?」
「ベンガルは大会の優勝者だから報奨金が出るだろうし、アスラ殿達はこの国の悪党の討伐に功があったのだから表彰されるだろうからな。」
「すみません。レーヴェさん。オレ達、城には行きませんよ。」
するとボルフ達が言った。
「どうしてですか?クラーケンを討伐した時も急にいなくなりましたよね?」
「クラーケン?」
レーヴェが驚いたようだ。するとリンが言った。
「私達は目立ちたくないのよ。特にアスラはね。」
「でもお金は欲しい!」
「マロン!」
ハッハッハッハッ
翌朝、オレ達はみんながまだ寝ている時間に出発することにした。宿の外に出ると女将がいた。
「ありがとうね。あなた達には感謝するよ。本当にありがとうね。」
「あなたの愛が神様に通じたんだと思いますよ。じゃあ。」




