狼耳族のボルフとの再会
予備選も順調に終わり、結局残ったのは狼耳族のボルフ、虎耳族のベンガル、同じく虎耳族のタルガ、そして獅子耳族のレーヴェの4人だ。準決勝はボルフとベンガル、タルガとレーヴェで決まった。翌日行われる。
「もう行こうか。王都の見学をしたいし。」
「そうね。後は明日だしね。」
「屋台あるかな~?」
オレ達は闘技場を後にした。
「あれって武具屋だよな~。ちょっと行ってみないか。」
「行く!行く!」
マロンが走り始めた。オレ達もその後についていく。そして、店を眺めるといろんな剣が売られていた。細い剣、太い剣、短い剣、長い剣。その中でひときわ目立つ剣があった。剣の中では珍しく真っ黒な剣だ。
「アスラ兄!あの剣欲しい!」
「お兄さん達。狩人かい?お目が高いね~。」
声をかけてきたのはドワーフだ。獣人族の国に来て初めて見た。思わずガン見してしまった。
「ドワーフを見るのは初めてかい?」
「ええ、まあ。」
「そうかい。わし達ドワーフ族はめったに他の国に行かねぇからな。ところでその剣、いいだろう。それはわしの作った剣の中でも最高傑作だ。どうだい買うかい?」
「おいくらですか?」
「そうさな~。金貨100枚と言いたいところだが、その剣を使う者の腕次第だな。」
「どういうことですか?」
「この剣は使う者を選ぶのさ。だから、どんなに大金持ちが金を積んで手に入れたとしても使えないんだ。お嬢ちゃん、この剣が使えたら売ってやるよ。どうだい?試してみるかい?」
「うん。やってみる。」
店主は裏から金属の棒を持ってきた。その金属の輝きは明らかにミスリルだった。
「その剣でこれが斬れたら売ってやるよ。」
ミスリルは鉄と比べてはるかに固い。この剣で果たして切れるのだろうか。マロンが剣を受け取り、ミスリルの棒に向かった。
シュッ スパッ
ミスリルの棒が見事に2つに斬れた。
「マロン。お前、腕を上げたな。」
「アスラ兄とリン姉のお陰。」
「お嬢ちゃん。凄いじゃないか!あんた達何者なんだ?」
パチパチパチパチ・・・・・
後ろから拍手が聞こえた。振り向くとそこにはベンガルがいた。
「やはりお前達はただものじゃなかったな。」
「えっ?」
「隠しても無駄さ。私も武人だ。お前達の力がどれくらいかは分かるつもりだ。あの時、私が止めなければ、そっちの娘があの熊耳族の男を殺していたからな。」
「・・・・」
「まあ、いいさ。事情があるんだろうからな。だが、お前達が武闘大会に出なかったおかげでようやく奴と戦えそうだ。感謝するぞ。」
ここでオレは宿屋の女将さんの言葉を思い出した。
“確か娘がいて狩人になっているんだよな~。”
“そうよ。アスラ。ベンガルが宿の女将さんの娘よ。”
”リンもそう思うか?“
“間違いないわね。”
「ベンガルさんはどうしてお母さんにあってあげないんですか?お母さん心配して待っていますよ。」
「お前がなぜ知っている?」
「だって、オレ達は郊外の森の宿屋に泊まってますから。」
「なるほどな。偶然とは面白いものだな。もうすぐなんだ。もうすぐ帰れる。あのレーヴェさえ殺せればな。」
「もしかして、そのレーヴェっていうのがお父さんの仇なの?」
「ああ、そうだ。奴が私の父を殺したんだ。なんとしても私は仇をとるんだ。」
予備戦を見る限り、ベンガルとレーヴェの力は互角だ。どちらが勝ってもおかしくない。
「オレはアスラです。こっちはリンとマロンです。良かったらオレと模擬戦してみませんか?」
「お前とか?」
「ええ。」
オレはドワーフの店主にお金を払ってマロンの剣を受け取った。そして、みんなで郊外の森の近くまでやってきた。
「ここならだれもいませんから。」
「わかった。だが剣はどうする?」
「お互いの剣でいいですよ。」
ベンガルもオレに何かを感じたようだ。目つきが変わった。
「わかった。」
ベンガルが剣を抜いて構えた。そして、先日のように普通なら見えない速さで剣を振ってきた。
カキン
「やはりな。お前、相当強いな。」
「そうですかね。一ついいですか?」
「なんだ?」
「ベンガルさんは剣を振る前に『これから行くぞ!』って教えちゃってるんですよ。」
「どいうことだ?」
オレは咄嗟にベンガルの前に移動して剣を首元に突き付けた。
「ねっ!反応できなかったでしょ?」
「ベンガルさんは自分で気づかないうちに闘気が身体からあふれてるんですよ。それが教えちゃってるんです。自然体でいないと本当の強者には勝てませんよ。」
「お前は何者なんだ?」
「別にオレのことはいいですよ。それより、明日レーヴェに勝ちたいんでしょ?」
それから、オレはベンガルと何度も模擬戦を行った。ベンガルの剣は一度もオレにかすりもしない。それでも、だいぶ動きがよくなった。闘気の流れも自分で何とかコントロールできるようになってきた。
「じゃあ、そろそろマロンと模擬戦をしてみてください。因みにマロンは魔族を一人で倒せますからね?」
「魔族を一人でだと?ありえない!」
ベンガルとマロンがお互いに向き合った。お互いの気と気がぶつかり合っている。耐え切れなくなったベンガルが剣を抜いて攻撃した。マロンがそれを受け止める。
カッキン
今度はマロンが攻撃を仕掛ける。物凄い速さだ。ベンガルはマロンの攻撃を防ぐのに精一杯だ。
カキン キン カキン
「そこまでだ。マロン。」
「うん。アスラ兄。どう?手加減できた~?」
「手加減だと?」
「ええ。マロンが本気になれば5秒持ちませんよ。」
「本当にお前達は何者なんだ?」
「いいじゃないですか。そんなこと。ベンガルさんの能力もかなり上がりましたよ。これで、よほどのことがない限りベンガルさんがレーヴェにまけることはないと思いますよ。」
「ねえ、終わった?もう、お腹ペコペコよ。何か食べに行こうよ。」
「私もペコペコ!」
「じゃあ、みんなで行こうか。」
オレ達は4人で食事に行くことにした。王都で有名だというレストランに入ったのだが、そこにボルフとその仲間達3人がいた。4人がずっとこっちを見ている。
「アスラ殿。彼らは知り合いか?」
どうやら『アスラ殿』という言葉が聞こえたようだ。ボルフ達がやってきた。
「やっぱりアスラさん達ですか!でも、どうして狼耳族の姿をしてるんですか?」
「シー!!!ダメだから!」
「あっ!すみません。」
オレ達は一緒に食事をした。そして、その後再び郊外の森のところにやってきた。
「どういうことですか?アスラさん。リンさん。マロンさん。」
「実はさ。人族の姿だと目立ちすぎるからさ。」
「あ~!また、クラーケンの盗伐の時のように、人魚からもらった魔法の指輪を使ったんですね?」
ベンガルは何の話か分からない。
「クラーケン?人魚?」
するとボルフがベンガルにすべてを説明した。ベンガルの顔が青くなっていく。
「私が勝てるわけがなかったのだな。アスラ殿。」
「そんなことないと思いますけどね。まあ、そうですかね。」




