虎耳族のベンガル
狩人ギルドの狐耳族の受付に言われた通り、門を出てから30分ほど森に入ったところに宿屋が見えた。
「すみませ~ん。どなたかいませんか~。」
オレが声をかけると奥から虎耳族の女性が出てきた。
「あら、いらっしゃい。久しぶりのお客様ね。3部屋でいいかしら?」
するとリンが言った。
「広めの部屋を1部屋でいいです。ありますか?」
「いいの?1部屋で。」
「はい。」
オレ達はお金を払って部屋に案内してもらった。本来、夫婦が2人で泊まる部屋のようだ。結構な広さがあった。
「じゃあ、何かあったら下まで来てくださいね。」
「はい。」
少し休んだ後、オレ達は下の食堂に行った。すると、すでに夕ご飯の準備が行われていた。
「もうちょっと待っててね。今、用意するから。」
どうやら、この宿は女将が一人で運営しているようだ。オレ達が座って待っていると料理が運ばれてきた。肉がたっぷり入ったスープにサラダ、それに揚げた鳥の料理が出てきた。かなり豪華だ。
「美味しそう!」
「どうぞ。召し上がってください。」
腹が空いていたオレ達はガツガツ食べる。リンもマロンもまだまだ足りないようだ。
「女将さん。別料金払いますので、お代わりできますか?」
「はいはい。大丈夫ですよ。」
オレもあまりの美味しさにお代わりした。
「ふ~!お腹いっぱいよ。」
「私も!」
すると、女将さんが話しかけてきた。
「あなた方は狩人か何かですよね?」
「ええ、はい。」
「武闘大会には出るんですか?」
「いいえ。そのつもりはないですけど。」
「そうですか~。」
「実は私にも娘がいるんですけどね。狩人をしているんですよ。父親が武闘大会で死んでしまって。あの子は変わってしまったんです。今じゃ、修行とか言ってこの国を歩き回っていて家にも帰ってこないんです。親として心配なんですけどね。」
「そうなんですね~。」
「もしどこかで会うようなことがあったら、家に帰るように言ってください。お願いします。」
「わかりました。もし会ったら伝えますよ。」
オレ達は部屋に戻った。
「アスラ!武闘大会に出ないの?紹介状あるわよ。」
「いいよ。目立ちたくないし。」
「私が出る~!」
「ダメだよ。マロン。お前はまだ手加減できないだろ!」
「残念!」
翌日、オレ達は再び王都に行った。武闘大会の参加者が集められて抽選が行われるようだった。どんな人達が参加するのか興味があったので、オレ達も抽選会場の闘技場に行ってみることにした。
「やっぱりあの虎耳族の女性がいるわね。」
「ああ。でも、あの獅子耳族の男も強そうだし、あっちの虎耳族の男だって強そうだよ。」
「アスラ兄。リン姉。あの人!」
マロンが指さした先には狼耳族のボルフ達がいた。どうやら武闘大会に参加しに来たようだ。なんか不思議そうにオレ達を見ていた。参加者数が多いため、事前に予備戦を行うらしい。そこで勝ち残った4人が本大会に参加するようだ。
「お前達も参加するのか?」
いきなり声をかけられた。振り向くと虎耳族のベンガルがいた。
「この前はどうも。」
「気にするな。それよりもこの大会に出るのはやめろ!危険だ。」
「確か~。ベンガルさんですよね。なら、どうしてベンガルさんは参加するんですか?」
「目的があるからだ。」
ベンガルさんの視線の向いた方向を見ると獅子耳族の男がいた。
「あの人と何かあるんですか?」
「いいや何もないさ。気にするな。」
「安心してください。オレ達は参加しませんよ。見学ですから。」
「そうか。ならいい。」
ベンガルはそのまま抽選会場の方に行った。どうやら予備戦の抽選が始まるらしい。しばらく様子を見ていると、どうやら抽選が終わったようだ。視線を下に落として帰るものがいれば、勇ましい言葉を口にしながら帰るものもいた。
「アスラ兄。試合は今日もやるの?」
「ああ、今日から予備戦だろうな。見ていこうか。」
「そうね。どうせ時間もあるしね。」
オレ達はお金を払って闘技場の中に入った。予選であるにもかかわらず、闘技場内には観客が大勢いる。この国のいたるところから集まっているのだろう。まあ、獣人族という種族が強さに憧れる種族である以上、仕方がないのかもしれない。
「いよいよね。」
選手入場口から2人の選手が出てきた。馬耳族の男と先ほど見た虎耳族の男だ。試合が始まると、虎耳族の男が圧勝だった。その後も試合が続き、ボルフが出てきた。相手は牛耳族の男だ。
「始め!」
牛耳族の男がボルフに向かって体当たりをしてきた。だが、ボルフはそれを横に飛んで交わして、牛耳族の男の視界から消えるように左右に動いた。牛耳族の男がボルフを見失ったようだ。ボルフが木剣で力いっぱい叩いた。牛耳族の男が地面にうずくまり、試合終了だ。
「ボルフも強くなったな~。」
「そうね。私達がいなくなった後も訓練してるんじゃないの?」
「多分な。」
「ボルフと勝負したい!」
「ダメだから。落ち着いてみてろよ。マロン。」
獅子耳族の男も順当に勝ち、ベンガルが出てきた。相手はグリズとは別の熊耳族の男だ。
「俺の弟が世話になったようだな。」
「ああ、あの時の熊耳族か。」
「今日はお前を殺す!試合なんかどうでもいいんだ!そのために来たのさ!」
「弱いやつはよくしゃべるな~!」
観客席からだとよくわからないが、なにやら熊耳族の身体から殺気が出ているのが見える。
「始め!」
熊耳族が大剣を軽々と振り回す。ベンガルはそれを華麗に避けている。
「てめぇ!避けてばかりじゃねぇか!攻撃して来いよ!」
「いいのか?攻撃しても。」
「ふざけるな!」
熊耳族の男が再度大剣を振り回し始めた。ベンガルは上に大きくジャンプして熊耳族の頭を木剣で叩いた。
バキッ
バタン
木剣は折れ、熊耳族の男は頭から血を流しながら地面に倒れた。
「おい!担架だ!担架を用意しろ!」
熊耳族の男が担架で運ばれていく。どうやら完全に意識を失ったようだ。
「やっぱり強いね。彼女は。」
「まあまあね。それよりあの胸さ~、何とかならないの!私やマロンへの当てつけにしか思えないんだけど!」
するとマロンが言った。
「私、最近成長した。リン姉より大きい!」
「マロン!言ったわねー!」




