アニム王国のモントリシティー
港町ラオシを後にしたオレ達は、海から離れるように森の中を歩いている。すでに1週間は歩いているが未だに街はない。それどころか人に会うこともないのだ。いるのは野生動物か魔物だけだ。
「アスラ~!まだなの~!」
「知らないよ。オレだって初めて来たんだから!」
「私、お風呂入りたいよ~!」
「私はベッド!ベッドで寝たい!」
「ちょっと待って!何か聞こえない?」
カーン カーン
金属か何かが当たる音が聞こえた。オレ達は音のする方向へと急いだ。すると、熊耳族の男性が木を切っていた。
「あんたら、こんな森の奥で何してるんだ?」
「オレ達、港町ラオシから来たんです。この辺りに街はないですか?」
「ラオシ?!そんな遠くから来たのか!」
「ええ。王都に行きたくて。」
「王都なら道が違うぞ!お前さん達、えらい遠回りしてるぞ!」
「え————!!!」
どうやら王都ナイロブはここから90度の方角にあるようだ。オレ達はとんでもない方向に歩いていたことになる。
「すみません。王都に行く前にどこかの街に寄りたいんですけど。」
「なら、もう少し待っててくれ。俺の街まで案内してやるから。それにしても、人族のお前さん達がよくここまで魔物の森をこれたもんだな~。運が良かったとしか思えんぞ!」
「魔物の森?」
「そうさ。この森は延々と続く原始林でな。魔物が多く住むことから魔物の森と呼ばれてるんだ。」
どうりで人と会わずに魔物が沢山いたわけだ。ま~、おかげでマロンの訓練には役に立ったけど。
「この辺に水場はありませんか?」
「この坂を下ったところに小川があるさ。」
「なら、オレ達そこで待ってます。」
「わかった。」
オレ達は急いで坂を下って小川に行った。もう喉がカラカラだ。魔法の水でもよいが、やはり自然の水の方がはるかに旨い。
ゴクゴクゴク
3人が凄い勢いで水を飲む。
「あ~!お腹いっぱい!」
「私もいっぱい!」
2人のお腹がまるで太鼓のようになっていた。
「私、ここで水浴びしちゃおうかな~。」
いきなりリンとマロンが服を脱ぎ始めた。
「待て待て待て!ダメだから!熊耳族の人がいつ来るかわからないだろ!
「何を慌ててるの!」
「だって、こんなところで裸になったら・・・」
「あなた馬鹿じゃない!どうして裸になるのよ!」
リンもマロンも下に水着を着ていた。
「アスラ兄!期待はずれ!エッチ!」
「違うから!誤解だから!」
2人は仲良く小川の中に入っていく。オレは一人で川原で座って待つことにした。どれくらい時間が経っただろうか。リンもマロンもすでに水から上がって着替え終わっている。すると、坂の上の方から熊耳族の男性がやってきた。
「待たせたな。」
「いいえ。大丈夫です。オレはアスラです。こっちはリンとマロンです。よろしくお願いします。」
「俺はコディアだ。じゃあ、行くとするか。」
コディアは倒した木を細かく切り分けて背負っている。薪にでもするつもりなのかもしれない。
「それ重くないですか?」
「もう慣れたさ。」
「ところで、お前達はどこから来たんだ?」
「グラッセ王国ですけど。」
「そうか。凄く遠いんだろ?」
「ええ、海の向こうですからね。」
「それで王都に何しに行くんだ?もしかして武闘大会に参加でもするつもりなのか?」
「武闘大会ですか?」
「なんだ違うのか。」
「ええ。しばらく王都で暮らそうかなって思って。」
「人族のお前さん達がか?何か悪いことでもして逃げてきたのか?」
するとリンが怒ったように言った。
「お言葉ですけど、私達は悪いことなんかしません!私達は正義の味方なんだから!」
「そうかそうか。正義の味方か。ハッハッハッハッ すまんすまん。」
「アニム王国の王都で暮らそうなんて言う人族はめったにいないからな。」
「それで、武闘大会って何ですか?」
「あ~。レオン国王陛下が毎年行っている大会さ。国中の強者が集まって試合をするのさ。優勝すれば金貨100枚と爵位がもらえるんだ。どうだ?出てみたくなったか?」
「いいえ。僕達なんか出てもすぐ負けますから。」
「そうだな。それでも命があれば儲けもんだ。中には死ぬ奴も出るからな。」
1時間ほど歩いたころ目の前に街が見えてきた。
「ここが俺の街モントリシティーだ。」
街の中に入ると熊耳族が多い。だが、それ以外の獣人族達もいる。街の中は人族の街とあまり変化はない。港町ラオシのようにお店も並んでいた。
「ありがとうございました。」
「いいってことよ。またな。」
オレ達はコディアにお礼を言って宿屋を探した。やはり人族が珍しいのか、人々がこちらをじろじろと見てくる。
「なんか完全にアウエーて感じよね。」
「仕方ないさ。人族のオレ達が珍しんだろうからさ。」
するとマロンが言ってきた。
「魔法の指輪!いつ使うの!」
「アッ!忘れてた!」
「アスラ兄のうっかりさん!」




