スライムを探して(2)
スライムを探しに来たオレ達の目の前には、5mを超えるブラックアリガーターがいる。これはクラーケンへ戦いを挑もうとしているボルフ達の試練だ。オレもリンもマロンも手を出さない。彼らだけで討伐させるのだ。
「兄貴!作戦は?」
「あいつの腹を攻撃するんだ!」
「でも、どうやって?」
「俺が前から奴の注意をひく。ゴンは尾に注意しながら後ろに回れ。カンタとタキチは横からだ。いいな!」
「おー!」
「やってやるぜ!」
「死ぬなよ!ゴン!」
「お前もな!タキチ!」
領主ループが言った通りだ。この男達は根っからの悪ではない。お互いを心配しあう気持ちを持っているようだ。
「いくぞ!」
ボルフはじわじわと前に出る。ブラックアリガーターはボルフを警戒している。後ろに回ったゴンが注意をそらそうと剣で尾をつつく。すると、ブラックアリガーターが後ろ向きになった。ボルフとゴンが位置を入れ替える。そして、横からカンタとタキチが2人でブラックアリガーターに斬りかかった。だが、ブラックアリガーターも馬鹿ではない。予測していたかのように前に出て尾を2人めがけて振り回した。このままでは2人に直撃する。
「時間よ止まれ!『タイムストップ』」
周りの動きがすべて止まった。マロンも慌てた顔をしたまま止まっている。動けるのはオレとリンだけだ。
「やっぱり手伝わないとだめみたいね。」
「そういうなよ。リン。あいつらもここまでよくやってるんだからさ。」
「まあいいけどね。」
オレは2人を後ろに移動させ、ボルフをブラックアリガーターの前まで連れて行った。そして魔法を解除した。カンタもタキチも諦めたような顔をしていたが、何が起こったかわからないようだ。ボルフも呆然としている。
「ボルフ!目を狙え!」
一瞬気を取られていたボルフがオレの言葉に反応した。
ダー!
グギャー
片目を潰されたブラックアリガーターが暴れ始めた。
「カンタ!タキチ!ゴン!3人でこいつを横から押し倒せ!」
全員が必至だ。3人がブラックアリガーターに突進していく。そして体当たりするとブラックアリガーターがひっくり返った。そこをボルフが大きくジャンプして剣で突き刺した。
グオー
どうやらブラックアリガーターは絶命したようだ。4人とも呆然としている。
パチパチパチパチ・・・・・
「よくやったな。4人とも。」
ハーハーハーハーハー
4人の手がぶるぶると震えている。まだ興奮が冷めないのだろう。しばらく休んだ後、やっとボルフが口を開いた。
「あの時、俺はカンタとタキチがやられたと思たんだがな~。」
「俺もだぜ!」
「俺達だって何が起こった変わらねぇよ。なあ、タキチ!」
「そうさ。俺だっててっきり死んだと思ったんだから!」
4人がオレ達を見た。マロンも不思議そうだ。すると珍しくリンが優しかった。
「多分、あんた達が頑張ってるのを見て、神様が助けてくれたんじゃないの!結構頑張っていたからさ。」
「オレもそう思うよ。お前達はよく頑張ったと思う。」
「アスラさん~・・・・・」
ブラックアリガーターとスライムを魔法袋に入れて街に戻ることにした。街に戻ったオレ達は、討伐した魔物を売りに狩人ギルドに行った。このアニム王国では冒険者ギルドの代わりに狩人ギルドという組織があるのだ。
「あら、大勢で何しに来たんですか?」
街の嫌われ者のボルフ達が来たことでギルド内の雰囲気が冷たくなった。
「素材を売りに来たんですけど。」
「なら、裏に回ってくれるかしら。」
ギルドの裏に行くと受付にいた猫耳族の女性がやってきた。
「ここに出してちょうだい。」
オレは魔法袋からキングフログとブラックアリガーターを取り出した。すると、その女性は驚いたようだ。
「どこでこれを?」
「街の郊外の沼地ですよ。彼らがこれを討伐したんですよ。」
受付の女性がボルフ達を見た。ボルフ達も少し照れているようだ。
「わかりました。お金をすぐに用意しますから、受付で待っていてください。」
受付で待っていると、ギルドマスターらしき虎耳族の男性と先ほどの受付の女性がやってきた。
「おい!ボルフ!正直に言え!あの魔物達を誰から盗んだんだ!」
いきなり文句を言ってきた。
「カイトさん。そりゃねぇぜ!本当に俺達が討伐したんだよ。」
「嘘をつくな!お前達が討伐できるような魔物じゃねぇんだよ!」
これにはオレも腹が立ったが、オレよりもリンとマロンが黙っていなかった。
「ボルフ達、努力した!私、見た!」
「そうよ。あんたいきなり何よ!ボルフ達は血反吐を吐きながら努力したのよ!嘘だと思うなら、隣の訓練場で模擬戦してみなよ!あんたなんかイチコロなんだから!」
「リンさん!やめてくれよ!」
「わかった。ボルフ。訓練場に来い!」
オレ達はみんなで訓練場に行った。やじ馬達がぞろぞろと後をついてくる。そして、木剣を持って模擬戦が始まった。
「ボルフ!どっからでもかかってこい!」
「ボルフ~!遠慮なんかしなくていいよ!やっちゃいなさい!」
ボルフの身体から小さいが闘気が溢れ出る。それを見てギルマスは少し納得したようだ。だが、勝負は続く。
「でや~!」
バコン
ボルフの剣がギルマスに受け止められた。ギルマスは強靭な肉体に物をいわせてボルフを押し倒そうとする。だが、ボルフが力負けしない。そして、ボルフは一旦距離を取り、左右への素早い動きでギルマスを翻弄し始めた。
「オリャ~!」
大きくジャンプしたボルフが上段から剣を振り下ろした。ギルマスがそれを受け止めようとしたが、木剣が折れてギルマスの肩に直撃した。
バキッ
「俺の負けだ。ボルフ。」
ハーハーハーハー
「疑って悪かったな。ボルフ。お前、変わったな!剣を見ればわかるよ。お前の剣には曇りがないのがな。ハッハッハッハッ」
オレはこっそりとギルマスの折れた骨に治癒魔法をかけた。そして、みんなで受付に行ってお金をもらった。金貨10枚の大金だ。
「ギルマス。このお金、銀貨に変えてくれませんか?」
「銀貨に変えてどうするんだ?」
するとゴンがギルマスに言った。
「このお金は兄貴の部下だった家族に渡すんですよ!」
「ボルフ~。お前、まさかずっと・・・・」
「せめてもの罪滅ぼしですから。俺にできることはこのぐらいしかないんで。でも、これからはまっとうに働いた金で何とかしますから。」
すると、ギルドの入口から声が聞こえた。
「ボルフ。もうその必要はないさ。後は領主である俺の責任だからな。」
「兄さん!」
「ボルフ!よく頑張ったな。」
「ウッウッウッ~」
ボルフがその場で泣き崩れた。他の仲間達も一緒だ。
「ボルフ!あんた何か勘違いしてない!まだクラーケンを倒してないでしょ!泣くのはそれからよ!」
「すまない。リンさん。ゴン!カンタ!タキチ!悪いな!お前達。もう少し俺のわがままに付き合ってくれ!」
「水臭いですよ!兄貴!」
「そうですよ!俺達は兄貴と一心同体なんですから!」
「お前たち~」




