スライムを探して(1)
ボルフ達の訓練を始めてから2週間が経った。広場から領主の館までのランニングはすでに2往復まで増えている。腕立て伏せも500回をこなすようになっていた。さすがに獣人族だ。体力の向上が著しい。
「ボルフも他のみんなもだいぶ強くなってるよ。でも、クラーケンの相手はまだまだ無理かな。」
「どうしてですか?」
「あいつは海の中にいるからね。それに、仮に陸上で戦ったとしてもあいつは毒液を吐き出すんだよ。その毒に触れたら即死さ。」
「なら、どうすればいいんですか?」
オレもリンも考えた。魔法の使えない彼らが、毒液をかけられても耐えられるようにするにはどうしたいいんだろうかと。するとマロンが言った。
「私の国だとスライムを使う!スライムの体液は毒を防ぐ!」
「ナイスだ!マロン!その方法があるな。」
オレ達は全員で森にスライムを探しに行くことにした。スライムは水辺や湿った場所にいる。郊外の沼地に行くと丈の長い草が生い茂っていた。
「みんな気をつけろよ。水場には魔物が潜んでいることが多いからな。」
「はい。」
するとゲコゲコと泣き声が聞こえる。草の陰から見ると巨大なカエルの魔物キングフログがいた。
「キングフログだ!ボルフ!お前達で討伐してみろ!」
「はい!」
ボルフ達がキングフログの周りを囲むように位置に着いた。正面からボルフが斬りかかるがキングフログは長い舌を伸ばしてくる。
「そいつの下には毒があるから触れるなよ!」
「えっ?!」
毒と聞いてみんな腰が引けたようだ。
「兄貴~!どうするんだ?」
「お前ら何を怖がってるんだ!こんな奴に怯えていたらクラーケンなんか倒せないじゃないか!」
ボルフの言葉で気を取り直したようだ。3人が真剣な表情で剣を構えた。だが、その手は震えている。
「カンタ!タキチ!お前達が正面から攻撃しろ!」
「で、でも、兄貴~!いいから俺を信じろ!俺は奴の舌を斬るから、そうしたらゴン!お前が奴にとどめをさせ!いいな!」
「は、はい!」
ボルフの指示通り、カンタとタキチが正面から大声を上げて斬りかかった。
でやー!
するとキングフログが2人に向かって長い舌を伸ばした。それを見てボルフが剣を振り下ろす。思った通り長い舌が切断された。
「今だ!ゴン!」
ゴンがキングフログに向かって突き進む。そしてキングフログの腹に剣を突き刺した。
ゲ—————ロ!
バタン
キングフログはその場で絶命した。
ハーハーハーハー
「やったぞー!キングフログを倒したぞー!」
ゴン、カンタ、タキチが抱き合って喜んでいる。その隣にボルフがいる。
「よくやったな。」
「いや!まだまだですよ。アスラさん。こんな下級の魔物相手に苦戦するようじゃ、クラーケンにはとても勝てませんよ。」
喜んでいた3人もボルフの言葉で意気消沈したようだ。
「そんなことはないさ。お前達は協力して討伐することを学んだんだ。もの凄い成長だと思うよ。」
「アスラさん・・・」
キングフログを魔法袋に仕舞って少し休んだ後、沼の周りを探し始めた。するとゴンが見つけたようだ。
「いたぞー!スライムだ!」
「こっちにもいるぞ!」
見ると辺り一帯に凄い数のスライムがいる。だが、スライムがこれだけ集中しているとなるときっと奴がいるはずだ。このスライムを狙ってやってくる魔物達を捕食する大物が。
ザザザザー
何かが沼から這い上がる音が聞こえた。そして、それはゆっくりとこっちに近づいてくる。
カサカサ
草が踏まれる音が聞こえた。ボルフとその仲間達に緊張が走った。
「やっぱり来たか。」
「アスラさん。なんなんですか?何が来たんですか?」
「アリガーターさ。それも特大のブラックアリガーターだよ。」
ボルフ達の足の震えが止まらない。そして、ブラックアリガーターが姿を見せた。少なく見ても体長5mはありそうだ。大きな口に鋭い牙が見える。しかも尾にはぎざぎざの鋭い棘のようなものが付いている。
「こいつもお前達だけで倒してもらうぞ!ボルフ!」
「あ、あ~!やってやるよ!やってやろうじゃないか!な~!お前達!」
ゴンもカンタもタキチも恐怖で固まっている。するとリンが3人のところに行って、顔を思いっきり殴った。
バチン バン バチ
3人は正気を取り戻したようだ。
「あんたたちしっかりしなさいよ!こんなの黒龍に比べれば全然大したことないんだから!」
「そうだ!ゴン!カンタ!タキチ!俺達はこんなところで立ち止まってるわけにはいかねぇんだ!やるぞ!」
「はい!」
今のボルフ達では、恐らくブラックアリガーターの鎧のような固い皮膚を斬ることはできない。オレは彼らに言った。
「そいつの皮膚はお前達では斬れないぞ!だが、こいつの腹は別だ。この意味が分かるな!」
「わかったぜ!アスラさん。」




