ボルフ達の修行
ボルフ達は縛られて領主の屋敷に連行された。オレ達も領主のループの後についていく。屋敷の中に入ると、意外にも質素だった。オレ達は応接室に通された。そこに領主のループがやってきた。
「待たせたな。」
「いいえ。大丈夫です。」
ループが真剣な顔で話してきた。
「実はあのボルフは私の弟なんだよ。本当は優しくて他人思いの男なんだが。」
するとリンが怒った。
「どこが優しいのよ!旅行者を脅して金品を奪うなんて盗賊じゃない!」
「確かにそうだな。だがな、その金は自分達のために使ってるんじゃないんだ。」
「どういうことですか?」
「数年前に、この港にクラーケンが現れてな。丁度、ボルフが兵士を引き連れて見回りしていた時のことだ。ボルフは漁船に被害が出るのを防ぐために部下達と船に乗って、クラーケンの盗伐にむかったんだ。だが、全滅してな。あいつだけが生き残ったんだ。責任を感じたボルフは姿を消して、今の状態になったのさ。」
「ならお金は何に使ってるのよ!」
「その時亡くなった部下達の家族の生活費さ。」
「ループさん。事情は分かりました。ですが、罪は罪です。彼らにはしっかり反省してもらって、新たな人生を歩んでもらった方がいいですね。」
「そうなんだ。私もそう思っているんだ。だから君達を屋敷に招いたんだよ。」
「どういうことですか?」
「君達にお願いがあるんだが、あいつらの性根を鍛えなおしてくれないか。」
「オレ達がですか?」
「無理なお願いということは承知してるさ。だが、私の部下達も街の住民達もみんな私に遠慮してボルフに何も言えないんだ。」
すると、マロンが言った。
「お駄賃は?」
「ああ、そうだったな。宿屋は私が手配しよう。それと、これでどうだろう?」
オレ達の目の前にアニム王国の金貨が10枚置かれた。アニム王国はグラッセ王国の10分の1の物価だ。そう考えると結構な金額だ。
「わかりました。お引き受けしましょう。」
「そうか。やってくれるか。」
オレ達はループに紹介された宿屋に向かった。特に豪華ということもなく、平凡な宿屋だ。当然部屋は3部屋だ。
「アスラ~。どうするの?あいつらの性根を叩きなおすって言ったって簡単じゃないわよ。」
「そうだな~・・・・まっ、何とかなるさ。」
「なるなる!それよりご飯!」
「そうよね。」
オレ達は1階の食堂に行ってご飯を食べた。人族のオレ達が一緒でも周りは何も気にしていない様子だった。観光客や商人がたまに来るせいか、結構人族に慣れているのかもしれない。そして翌朝、兵士達に連れられてボルフとその配下の3人がやってきた。
「では、アスラ殿。よろしく頼む。」
「了解!」
すると、いきなりボルフが予想外の行動に出た。オレ達に土下座したのだ。周りにいた獣人族達も驚いている。
「あんた達は本当に強い!俺が昨日戦ったそっちの子よりも、あんた達の方が強いんだろ。あの子にすら俺は歯が立たなかったんだ。お願いだ!俺を鍛えてくれ!」
「いいけど、どうして強くなりたいんだ?」
ボルフはうつむいたまま黙っていたが、重たい口を開いた。
「敵討ちさ!仲間の仇を取りたいんだよ!」
ボルフの目に光るものがあった。涙だ。
「俺が弱いばかりに部下を殺してしまったんだ!俺はこのままじゃ死んでも死にきれない!お願いだ!俺を弟子にしてくれ!」
他の狼耳族の男達も土下座してきた。
「オレはアスラ。こっちはリンとマロンだ。よろしくな。」
「俺はボルフです。こっちはゴン、カンタ、タキチです。」
子分の3人が一斉に挨拶をした。
「よろしくお願いします!」
それからオレ達は街の外れの広場に行った。
「まずは基礎体力を作るところからだ。ここから領主の館まで走って戻ってこい。」
「はい。」
ここから領主の館までは片道5㎞ある。オレ達が剣の素振りをして待っていると、4人が戻ってきた。完全に息が上がってフラフラしている。
ハーハーハー ゼーゼーゼーゼー
「よし!次は腕立てだ!今日は初日だから100回でいい。」
ゴンが驚いたようだ。
「100回?」
「そうさ。そのぐらいできないと話にならないよ。」
「おい!みんな!やるぞ!」
「は、はい!」
すでに全員が汗びっしょりだ。ボルフはさすがだが、それ以外はかなりきつそうだ。
「頑張れ!タキチ!あと10回だ!」
「は、は、は・・・・い」
その後は少し休んで剣術の練習だ。ボルフも含めて力は強いがスピードがない。だからマロンにも簡単に受け流されてしまったのだ。
「ボルフ達ってさ~。狼耳族だよね?」
「そうですが。何か?」
「狼耳族が他の獣人族よりも勝っているのって何なの?」
「そうですね~。俊敏な動きですかね。獅子耳族や虎耳族は力が強いですが、動きは遅いです。像耳族の者達も同じですね。」
「そうなの?でもさ~。オレ達からしてみたらボルフ達の動きってスローモーションなんだよ。どうしてなのかな~?」
するとリンが教えてくれた。
「型にはまった剣術をしようとしているからじゃないの?自由に動いたらいいんじゃない。」
「自由にですか?」
「そうよ。ジャンプしたり、横に飛んだり、自分達の本能に任せて動いてみれば?」
リンの言葉がヒントになったようだ。ボルフが普通に素振りをするのでなく、ジャンプしたり自由に動いた。すると、先ほどとは全然動きが違った。
「リンの言う通りだね。その方が絶対にいいよ!」
オレに褒められたのがよほど嬉しかったのか、ボルフは顔を紅潮させた。
「ありがとうございます!」




