狼耳族のボルフ
オレ達はアニム王国の港町ラオシに到着したが、いきなり狼耳族の男達に絡まれた。それを軽くあしらった後、街の散策を続けることにした。
「どこにもいるのよね。ああいう輩が。」
「リン姉!凄かった。私、剣が見えなかった。」
「マロン!あの程度は見えないとな。もっと修行するぞ!」
「うん。」
その頃、狼耳族の男達はアジトに戻っていた。
「兄貴!」
「どうしたんだ?その恰好!」
「はい。港で人族の小僧達にやられたんです!」
「やられたままで帰ってきたのか?」
「はい。あいつらめっぽう強くて、俺達じゃ勝てませんから。」
バッコン バコ ボコ
「情けねぇ連中だ!それで、どんな奴らだ?」
「は、はい。金髪の男と茶髪の女が2人いました。」
「そいつらはどっちに行ったんだ?」
「はい。多分、北の商店街だと思います。」
「そうか。領主の館の方角だな。」
「はい。」
狼耳族の男達が何やら相談しているのも知らずに、オレ達は商店街を眺めながら歩いていた。商店街では今まで見たことのない果物が売られていた。
「これ何かな~。」
「お兄さん。それはマンゴーと呼ばれる果物だよ。甘くておいしいよ~。どうだい?買って行かないかい?」
「アスラ~!食べてみましょうよ~。」
「そうだね。」
オレはお金を払ってマンゴーを3つ買った。おじさんが皮をむいてくれたのでその場で食べた。めちゃくちゃ甘い。
「美味しい~!」
「うん。私、これ好き!」
2人があまりにも美味しそうに食べたので、その店で売ってるマンゴーを全部買った。そして、店の陰に行ってそれを空間収納に仕舞った。
「アスラ。あの建物は何かしら?」
目の前に大きな建物が見えてきた。街を歩いている人に聞くと、この街の領主の館のようだ。確かに館の門の近辺には兵士らしき男達がいる。
「この街の領主ってどんな人かしらね?」
「オレ達には関係ないよ。」
「そうね。」
街の様子を見る限り、悪い領主ではなさそうだ。街のみんなが生き生きとしているのは、領主が悪い存在ではないからだろう。そんな風に感じた。そして、商店街の端まで来たオレ達は来た道を引き返すことにした。すると、先ほどの狼耳族の男達がやってきた。
「兄貴!こいつらですぜ!」
「お前達か!俺の兄弟をいたぶってくれたのは!」
「別にいたぶってはいませんよ。」
「まあいい。ちょっと面をかせや。」
一回り大きな狼耳族に言われて、オレ達は裏道を入っていった。少し行ったところで狼耳族が振り返った。
「ここでいいだろう。お前達には落とし前をつけてもらうからな。」
「どうするの?アスラ。」
「面倒だな~。」
すると、マロンが小さな声で言った。
「私がやる!修行!」
「いいけど、マロン。殺しちゃだめだからな。」
「わかってる。」
オレ達の話が聞こえていたのか、狼耳族の男はお怒りのようだ。
「兄貴!」
「ああ、わかってる。貴様達、俺様のことをなめてるようだな。まあいい。わからせてやるよ。」
狼耳族の男が剣を抜いて斬りかかってきた。マロンがそれを受け止めた。
カキン
「やるじゃねぇか。」
どうやら力ではマロンは勝てないようだ。少しずつ押され始めた。だが、マロンは狼耳族の剣を受け止めるのでなく、受け流し始めた。こうなると狼耳族に勝ち目はない。
「ちょこまかと動きやがって!ハーハーハー」
「なんか弱すぎ~!」
狼耳族の男は力いっぱい剣を振り下ろしたが、マロンが横に避けながら剣で肩を打ち付けた。
バッチン
狼耳族の男は剣を地面に落とした。
「負けだ!どうにでも好きにしやがれ!」
「兄貴ー!」
マロンが振り返りながら聞いてきた。
「アスラ兄。この人、どうする?」
「そうだな~。二度と悪さができないように腕の1本でも斬り落としておくか。」
「わかった!」
マロンがゆっくりと近づいていく。すると、他の狼耳族の男達が、兄貴と呼んでいた男を守ろうと剣を抜いて立ち塞がった。
「絶対兄貴は守って見せる!」
「お前達!よせ!お前達が叶う相手じゃねぇ!」
「何言ってんだ!兄貴!兄貴はいつだって俺達のことを守ってくれたじゃねぇか!今度は俺達が守るんだ!」
男達の後ろに黒く靄のようにかかっていたものが消えていった。すると、騒ぎを聞きつけたのか、兵士達がオレ達の前に現れた。その後ろから領主と思われる人物がやってきた。やはり狼耳族だ。
「これは何事だ?お前達は何をしてるんだ?」
オレが代表して答えた。
「今日、この街に着いたんだけど、彼らに絡まれまして。こうして取り押さえたところですけど。」
「そうか。」
領主はリーダーの狼耳族を見た。
「またお前か!ボルフ!いい加減に目を覚まさないか!」
「うるせぇ!とっとと捕まえて死刑にでもなんでもしやがれ!」
どうやらリーダーの男はボルフという名前のようだ。すると領主はオレ達に頭を下げてきた。
「私はこの街の領主をしているループというものだ。こいつらのことを預かってもいいか?こいつらも根っからの悪じゃないんだ。ちょっと事情があってな。」
「いいですよ。あっ、オレはアスラ。こっちはリンとマロンです。」
「そうか。感謝する。君達にちょっと話があるんだが、私の屋敷まで来てもらえないか。」
「いいですよ。」




