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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
フェアリー大陸
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人魚の依頼

 グラッセ王国の港から船に乗ったオレ達はフェアリー大陸へと向かっている。3日ほどで到着する予定だが、オレ達は船の上で何もやることがなく暇を持て余している。



「アスラ~。何か楽しいことないの?」


「私も暇!つまらない!」


「なら、釣りでもしようか?誰が一番釣れるか競争しよう。」


「いいわよ。」


「面白そう!私もやる!」



 オレ達は船員に釣りの道具を貸してもらい、エサは食堂から残飯を少しだけもらってきた。



「さあ、やるぞ!」


「負けないんだから!」


「あたしも!」



 釣りを始めてから2時間経つが何も釣れない。



「どうしてよ!どうして何も釣れないのよ!」



 すると後ろから船員が教えてくれた。



「この辺りはダメだ。もう少し行ったら島があるから、その辺りだったら釣れるけどな。」


「何か理由があるんですか?」


「そうだな~。この辺りには人魚伝説があってな。昔、人魚達が乱獲されたらしいんだ。それからだな。この辺りの海で魚が取れなくなったのは。」



 オレは人魚を想像した。お父様の図書室にあった本棚の中に、人魚についての本があったのを思い出したのだ。



「一度人魚に会ってみたいもんだな~。」


「アスラ!あなたなんか変なこと想像してるでしょ!」


「別に何も想像してないから!」


「嘘ね。鼻の下が伸びてるもん。」


「アスラ兄、エッチ!」



 マロンがぺったんこの胸を手で隠した。



「別に違うからさ。」



 その日の夜、船室で寝ているとどこからともなく歌声が聞こえてきた。隣を見ると、リンもマロンもぐっすりと寝ている。オレは不思議に思って甲板に出てみた。すると、船の先に光る存在がいた。



「君、誰?」



 その光の正体は美しい女性だった。オレが声をかけると女性は慌てて海に飛び込もうとした。



「ちょっと待って!話をしようよ。」



 女性がオレを見て言った。



「きれいなお顔。それに綺麗な魔力。まるで天使様みたい。」


「えっ?!」


「あなた様は人族ではありませんよね?」


「どうして?」


「私は人魚ですから。魂の色を見ることができるのです。あなた様の魂は清らかで澄んでいますから。」



 オレは人々から魔王として恐れられている存在だ。だから、こうしていくつも国を離れているのにどういうことなんだろう?



「あなた様は善の存在。そんなあなた様にお願いがあります。」


「オレにできることなら何でもするけど。」


「この先に小さな島があります。その中央に大きな洞穴があるんですが、そこに私達にとって大切なものがあるんです。昔、人族が私達から奪い取っていったんです。それを取り返して欲しいんです。」


「どうして自分達で奪い返しに行かないの?」


「私達が人族の姿になっていられる時間は限られているんです。それに、あの洞窟の近くには人族が置いたゴーレムがあるんです。お願いできないでしょうか?」


「わかったよ。やってみるよ。」



 光に包まれた女性は海の中に消えていった。そして、オレも船室に戻って寝ることにした。その翌日、船は小さな島に着いた。どうやらこの島で休憩するようだ。



「リン。マロン。行ってみたいところがあるんだけど。」


「どうしたの急に?」



 オレは昨夜の夜のことを二人に話した。



「アスラは美女に甘いからね。いいわよ。行きましょ。」


「ゴーレム!ゴーレム!」



 道のない森の中をオレ達は中央に向かってひたすら歩いた。すると、船の女が言った通り洞窟があった。その洞窟の前には2体のゴーレムがいる。古代遺跡と同じロックゴーレムだ。



「時間がないから3人で倒すよ。」


「了解。」



 オレ達は剣に魔法を付与してロックゴーレムに向かって行った。さすがにロックゴーレムは固いが、それでも魔法を付与した剣で斬れないことはない。途中で面倒になったので、魔法を使うことにした。



「すべてを貫け!『ビーム』」



 するとオレの指から放たれた光線がロックゴーレムの胸の宝石を砕いた。



バッキン


ドカッ バッタン



 隣を見るとリンとマロンがまだ戦っていた。



「何やってるんだよ!」


「マロンに仕留めさせようと思ったのよ。」


「頑張る!」



 リンがロックゴーレムの頭を剣で斬り落とすと、ロックゴーレムの動きが止まった。再生を始めるつもりなのだ。



「今よ。マロン。」



 マロンの剣がロックゴーレムの胸の宝石を貫いた。



パリン


ドタン



 ロックゴーレムを討伐したオレ達は、洞穴の奥へと進んで行った。



「暗いわね。」


「しょうがないな~。『ライト』」



 オレ達の周りを光球が照らす。すると奥に祭壇のようなものがあった。



「なんか古代遺跡と同じだな。」


「そうね。」



 祭壇におかれた水晶の玉をライオンの口にはめ込むと祭壇が動き始めた。そして奥の扉を開けると、そこには金銀財宝ではなく丁寧に保管された宝珠が出てきた。



「何かしらね。」


「分からないよ。でも、これを取り返して欲しいって言われたんだから、持っていくしかないよね。」


「どこに?」


「海に行ってみようか。」



 オレ達は急いで海に行った。そして海に向かってその宝珠を掲げると、いきなり宝珠が光始め、全身が眩しい光で覆われた美女が現れた。



「あなた方が助けてくれたんですね?ありがとうございます。」


「昨日の夜、頼まれましたから。」


「そうですか?みんなも心配してくれていたんですね。」


「ところであなたは誰なんですか?」


「あっ、申し遅れました。私は人魚の女王エメルです。」


「オレはアスラ。こっちはリンとマロンです。」


「3人とも人族ではありませんよね?」


「・・・・」


「これでも私は人魚の女王ですよ。あなた方の魔力や魂の色が見えますから。」


「・・・・」


「ごめんなさいね。助けてくれた方々を困らせてしまったようですね。もう聞きません。」


「ありがとうございます。それで、エメルさんに聞きたいんですけどいいですか?」


「なんでしょう?」


「人魚の寿命ってどのくらいあるんですか?」


「そうですね~。普通は200年から300年ぐらいでしょうか。」



 そうなると、恐らくエメルさんが知っている人魚はもう誰もいないだろう。エメルさんに何と説明すればいいんだろうか。



「言いづらいのですが、恐らくエメルさんは4000年近く宝珠の中に捕まっていたんだと思います。」


「えっ?!」


「以前行った古代遺跡と同じ作りをしてましたから。」


「そうなんですか~。」



 やはりエメルさんは戸惑っているようだ。すると、リンが言った。



「良かったじゃない。人魚達が滅んでなかったわけだし、それに4000年経った今でもあなたのことを心配してくれていたんだから。」


「そうですよね。リンさんの言う通りですね。私は同族達に感謝しなければなりませんね。」


「そうですね。オレが会った女性もかなり心配していましたから。」


「わかりました。あなた方には助けていただいたお礼にこれをお渡ししましょう。」



 目の前にブレスレットが3つあった。



「何ですか?これ。」


「これを付ければあなた方が想像する姿に変身できるようになります。私も今はこうして人族の姿をしていますが、本当の姿は違うんですよ。」



 エメルはいきなり人魚の姿になって海に入った。



「なるほど。すごく便利ですね。」


「喜んでいただけたようですね。ではまた会いましょう。」



 エメルが海に入るとたくさんの人魚達がエメルの周りに集まってきた。そして、エメルは彼女達に囲まれながら海の中に消えていった。エメルを見送った後、オレ達は急いで船に戻った。


本日より第3部が始まりました。是非読んでください。

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