アスラ、再び魔王になる!
ターシャとラーシャに別れの挨拶をした後、オレ達は北の森に向かった。ところどころに王国の兵士達がいた。情報を伝達するためだろう。それを無視してオレ達は走った。そして崖の上まで来ると数百メートル先にはぞろぞろと歩いてくる魔物達がいた。見渡す限り魔物で溢れかえっている。その一番奥の方からかなり強い魔力が感じられた。
「アスラ!思った通りね。魔族がいるわよ。」
「ああ。わかってる。マロンはなるべく前に出るな。」
「どうして?」
「奴の目的がお前の可能性があるからさ。」
「わかった。」
ここでオレは深呼吸した。
フー
「さあ。行くか!」
オレ達3人は剣に魔法を付与して魔物達に飛び込んでいった。最前列にいるのはゴブリンやウルフ系の魔物、それにボア系の魔物が続いている。いくら倒してもどんどん後ろからやってくる。キリがない。しびれを切らしたのか、リンが魔法を放った。すると、魔物達の中に炎が上がった。
「アスラ!キリがないわよ!魔法を使うしかないわ!」
しばらくして、一番後方にいた魔族らしき存在が黒い翼をはためかせてやってきた。
「ここにいたか!マロン!」
「お前はルシフ!」
「そうだ。俺様のことをよく覚えていたじゃないか!ようやく見つけたぞ!お前を見つけるのには苦労したさ。」
オレは魔族に言った。
「なぜスタンピードを起こしたんだ!」
「わかりきったことだ!あの街を潰せばマロンも死ぬからな。最悪こうして出てくれば俺様が殺せばいいだけだしな。ハッハッハッハッ」
「貴様~!許さん!罪のない人々を犠牲にしようとは!」
「お前は何者だ?お前のような小物には俺様は倒せねぇよ!」
ルシフが俺に短刀を何本も投げた。オレはそれを剣で叩き落とす。
カキン バシッ
「ほ~!少しはやるようじゃないか。人間!」
オレは大きくジャンプして空中にいるルシフに斬りかかった。剣こそ届かなかったが、ルシフの頬から血が流れた。
「き、き、貴様~!よくもよくも俺様の身体に傷をつけたな!許さねぇ!」
ルシフの身体から黒いオーラが現れた。どうやら本気モードのようだ。オレとマロンがルシフと対峙している間もリンは魔物達を狩っている。
「お前なんか、黒龍に比べれば全然だ!どっからでもかかって来いよ!」
「生意気な奴だ!」
ルシフが次々に魔法を放つ。だが、オレがことごとくそれを無効化していく。
「貴様!人族ではないな!何者だ?」
「見ての通りだ!こっちから行くぞ!」
『風烈斬』
オレが剣振るうとルシフの右手が斬り落とされた。
ギャー
オレはルシフにゆっくりと近づいていく。すると、斬り落とされた右手がオレに向かって飛んできた。そして、その右手から真っ赤な光が放たれた。オレの身体が動かない。
「ハッハッハッハッ やはり人間だな。こんな罠に引っかかるとはな。いいだろう。そこで見ていろ!お前の目の前でマロンを殺してやるから!」
「マロン!逃げろ!」
マロンはオレの言葉を無視して剣を抜いてルシフに斬りかかった。
「アスラ兄を置いて逃げられない!」
だが、今のマロンの攻撃ではルシフには効かない。マロンはルシフに捕まった。
「放せ!放せ!」
「放すわけがないだろう!」
マロンの首元にルシフの鋭い爪がゆっくりと近づいていく。限界だ。オレはとうとう魔法を使った。
「わが身を解き放て!『アンロック』」
すると俺の身体が光り、拘束していた赤い光は消えていった。そして、マロンを捕まえているルシフに駆け寄った。
「マロンを放せ!下種野郎!」
グサッ
背中に強烈な痛みを感じた。後ろを見ると、そこにもう一人のルシフがいた。オレの胸からは血が噴き出している。
「ハッハッハッハッ まったく、馬鹿な奴だ!俺様は魔族だぞ!分身ぐらい使えるに決まっているだろ!ま~、すでに聞こえてねぇだろうけどな。心臓を突き刺したんだからな。」
「アスラ兄!アスラ兄!立ってー!死んじゃやだー!」
マロンの声をリンが聞いたようだ。リンが倒れているオレのところまでやってきた。
ドックン ドックン ドックン
そして、ルシフに向かって言った。
「あなた、死ぬわよ!」
「ふざけるな!お前が俺様を殺せるのか!」
「私じゃないわよ!アスラがあんたを殺すわ!」
「そいつならお前の目の前で死んでんじゃねぇか!」
倒れているオレの身体から真っ黒なオーラが溢れ出した。そして、辺り一帯に冷たい風が吹き荒れ始める。その魔力の大きさにルシフの顔が青ざめていく。
「さっき黒龍とか言ってたよな!も、も、もしかして、そいつは、ま、まさか・・・魔王なのか?!」
オレの背中に漆黒の翼が現れ、全身から強烈な光が放たれた。周りにいた魔物達が怯え始める。リンも純白の翼を広げて上空に舞い上がった。
「あ~あ。この姿にはなりたくなかったんだけどな~。もうこの国にもいられないじゃないか!この責任は取ってもらうぞ!ルシフ!」
「何が魔王だ。こっちには人質がいるんだ!俺を殺せるもんならやってみろよ!」
後ろからルシフの分身が攻撃しようと近づいてきた。だが、オレに近づいただけで分身は消えてしまった。
「どうなってるんだ?」
「お前はバカか?奥の手は最後に見せるもんだろ!時間がもったいないからいいや!」
オレは右手を前に出して魔法を唱える。
「切り裂け!『シャドウビーム』」
オレの手から放たれた黒色の光が大きく曲がりながらルシフの両腕を斬り落とした。
ギャー
マロンが黒い翼を広げてリンのもとまで飛んでいく。ルシフの両腕からは血が流れている。
「グホッ 殺せ!俺の負けだ!早く殺せ!」
ルシフは諦めたように見せていたが、身体からあふれる闘気はオレを騙せない。ルシフの腕が少しずつ本体に近づいているのも見逃さない。恐らくルシフはオレの隙を見て攻撃してくるか、それとも自爆してマロンもろとも死ぬつもりなのだろう。
「何言ってんだ!お前、全然諦めたないじゃないか!そんなセリフに騙されるわけがないだろうが。」
チッ
ルシフの腕が本体にくっついた。そしてオレ達に向かって魔法を放とうとしている。だが、オレの方が速い。
「すべてを飲み込め!『シャドウドラゴン』」
上空に巨大な漆黒の竜が現れ、くねくねと動きながら大きな口を開けてルシフに向かって行く。
「この魔法は何なんだ?!貴様はやはり・・・魔王が現れたというのは・・・・・・」
ルシフは漆黒のドラゴンに頭から飲み込まれた。そして跡形もなく消えてしまった。下を見ると、魔物達がどんどん森に帰っていく。
「どうするの?この魔物達。」
「放っておくさ。」
「どうしてよ。」
「ここで殺しちゃったら冒険者達の収入がなくなるだろ!」
「そういうことね。」
「ありがとう。アスラ兄。」
「なにが?」
「私を守ってくれた。」
「当然だ。リンもマロンもオレの家族なんだから。」
オレ達は地上に降り立って元の姿に戻った。リンとマロンがオレと手をつないできた。
「さあ、これからどこに行こうか?」
「そうね~。食べ物がおいしいところがいいわね。」
「私、強くなれるならどこでもいい。」
「じゃあ、フェアリー大陸にでも行くか?」
「いいわよ。」
「賛成!」
オレ達は転移で王都の港まで戻った。そして、フェアリー大陸行きの船を探して船に乗った。
一方、その頃王城では斥候の兵士が国王達に報告していた。
「スタンピードがおさまったというのは本当か!」
「はい。前線にいた兵士の話によると冒険者風の男1名と女2名が魔物達の中に斬りこんでいったようです。そこに魔族が突然現れて交戦になったようです。」
「それでどうなったんだ。」
「はい。冒険者風の男が殺されたと思ったら、いきなり漆黒の翼を広げた魔族へと変化して、女を人質に取っていた魔族を討伐したそうです。」
「どんどん話せ!」
「はい。冒険者風の女も一人は純白の翼、もう一人は漆黒の翼を生やしていたそうです。」
「やはり3人とも人族ではなかったか。それで、その3人はどうしたんだ?」
「はい。3人とも突然その場から姿が消えたそうです。」
アレクシアがジェイムス国王の顔を見ている。
「やはり、アスラが魔王だったか。するとリンは見張り役の天使といったとこか。」
「見張り役ですか?」
「多分な。アスラが暴走しないようにナデシア様が遣わしたのだろうな。」
「魔王の力とはそれほど強大なのですか?」
「俺もよく知らんが、黒龍は10日ほどで世界を滅ぼしたという伝説がある。魔王はそれと同等、もしくはそれ以上の存在だからな。」
「なるほど、それならば納得です。彼から発せられる気は尋常ではありませんでしたから。」
「いずれにしても、彼らはこの国の救世主だったようだな。」
「はい。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。これで第2部が終了です。第3部もありますので、是非引き続き読んでください。
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