グラッセ王国のスタンピード
冒険者ギルドに行くとギルドマスターの部屋に呼ばれた。
「アレクシア殿から聞いたぞ。北の森に強力な魔物が現れた可能性があるんだってな。」
「ええ。そうですね。」
「やっぱりな~。アスラ君も知っている通り、ここ最近、王都近辺の魔物が減ってるんだ。相当やばいやつが潜んでいるのかもしれないな。」
「オレ達で調査しましょうか?」
「そうしてくれるか。」
「はい。」
オレ達は北の森の調査に向かおうと北門に向かった。すると、北門に兵士達5人が慌てて駆け込んできた。門番の兵士が聞いた。
「どうしたんだ?そんなに慌てて!」
「スタンピードだ!魔物達がこっちに向かっているんだ!すぐに王城に連絡を!」
「わかった!」
どうやら魔物の大群が王都に向けて進行しているようだ。
「なあ。リン。」
「なに?」
「魔物って知能が低いんだろ?」
「そうよ。」
「何でスタンピードが起こるんだ?」
「いくつか理由があるわよ。ほとんどが小規模なんだけれど、その場合は強力な魔物が現れてそれから逃げようとしてるケースね。もう一つは大規模なパターンよ。その場合は誰かに誘導されてる可能性があるわね。」
「そうなのか?でも、もし後者だったらだれが何の目的でスタンピードを起こさせたんだろうな。」
「そんなこと私が知るわけないでしょ!」
オレとリンのやり取りをマロンが下を向いて聞いていた。
「わたしのせいかも!」
「どういうことだ?」
「今、魔大陸は混乱してる!ディアブ王国のカエサル王とマジョリカ王国のマジョリーヌ女王が争ってる。」
「どうしてそれが原因になるんだ?」
「マジョリーヌ女王は私の母。だから私を狙ってるのかもしれない。」
「その可能性は十分にあるわね。アスラ!なんとしてもマロンを守るわよ!」
「ああ、当然だ!言われなくてもそうするさ。」
オレ達は一旦よろず屋に行った。
「あらっ!早いわね。どうしたの?」
「ターシャさん。ラーシャと一緒にこの家の地下に避難してください。」
「どうして?何かあったの?」
「どうやらスタンピードが起きたようなんです。まだどの程度の規模かわからないんですけど。大規模なものなら危険ですから。」
「ダメよ。アスラ君。他の人達だって避難できないんでしょ?だったら、私達も非難しないわ。けが人も出るでしょうから、私とラーシャが光魔法で治療するわよ。」
そうだ。ターシャもラーシャもエルフ族だ。魔法が使えても不思議ではないのだ。
「わかりました。じゃあ、お願いします。でも、危ないと思ったらすぐに逃げてくださいね。」
「わかったわ。それで、3人はどうするの?」
「バンコクさんのところに行って状況を確認します。」
「わかったわ。」
オレ達がよろず屋を出ようとしたところで、慌ててやってきた兵士達に声をかけられた。
「ハーハーハー アスラ殿ですか? ハーハーハー」
「そうだけど。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「ハーハー アレクシア様から3人を直ぐにお城にお連れするようにと。」
オレ達3人は王城に呼ばれた。兵士に連れていかれて王城の会議室で待っていると、そこにジェイムス国王とアレクシアがやってきた。
「待たせて申し訳ないな。」
「いいえ。大丈夫ですよ。」
「もう聞いたかもしれないが、北の森でスタンピードが発生したようなんだ。」
「はい。さっき北門のところで聞きました。」
「なら、話が早いな。どうだろう。わが軍に協力してもらえないだろうか?」
「その前に聞きたいことがあるんですけど。」
「なんだい?」
「スタンピードの規模はどのくらいなんですか?」
「報告によると魔物の数はおよそ5,000だ。」
「5,000?!大群じゃないですか?」
「ああ、大群だな。もしかすると、この王都は壊滅するかもしれないな。」
「それで、あとどのくらいで到着する予定なんですか?」
「斥候からの報告だと、明日の朝にはこの王都に来るかもしれないんだ。」
「なら、人々を非難させる時間がないじゃないですか?」
「そうだな。完全に私の失態だ。この王都の近郊には魔物のいる森があるのだから、私がもう少し警戒していればよかったのだが。国民には申し訳ないことをしたと思っているさ。だから、もしこの王都に魔物達が入ってくるようなことがあれば、この城を避難所にするつもりだ。」
「わかりました。オレ達も何とか協力しましょう。3人ですからどの程度役に立てるかわかりませんけど。」
「君達が協力してくれるなら兵士100人と同等の戦力さ。」
するとリンが小さい声で言った。
「10,000人の間違いでしょ!」
「えっ?!」
「いえ、何でもないです。」
オレ達は王城から帰る途中、3人で話し合った。
「なあ。リン。オレこの国好きなんだよな~。」
「だから何よ?」
「この国の人達が死んでいくのは我慢できないんだ。でも、もしオレ達が本気になったらこの国にはいられないだろ?」
「そうね~。」
「だったらよろず屋に行こうか。」
「どうしたのよ?急に。」
「ターシャさんには散々世話になったからさ。ターシャさんとラーシャちゃんには、念のために前もってお礼を言っておきたいんだ。」
「そうね~。あの人達には大分世話になったもんね~。いいわ。行きましょ。」
「私もラーシャちゃんにお別れしたい。」
オレ達がよろず屋に行くと、2人は倉庫から大量のポーションを取り出していた。
「そのポーションどうするんですか?」
「アッ、びっくりした~!」
「すみません。驚かすつもりじゃなかったんですけど。」
「いいのよ。これはけが人が出た場合のための準備よ。私とラーシャだけだと魔力切れしそうだからね。」
「そうなんですね。」
「ちょっと話があるんですけど。いいですか?」
オレが真剣な顔で言ったためか、ターシャもラーシャも手を止めてこっちにやってきた。
「ターシャさん。ラーシャちゃん。今までお世話になりました。」
「えっ?!どういうこと?この街を出て行くつもりなの?」
「すぐじゃないですよ。スタンピードがおさまったら、もしかしたら出て行くことになるかもしれないんで。前もって挨拶しておきたかったんです。」
ターシャは何かを感じ取ったようだ。
「そうなのね。わかったわ。なら、家の鍵は預かっておくわね。いつ帰ってきてもいいようにそのままにしておくから。」
「ダメですよ。それだと家賃が入らないじゃないですか?」
「いいのよ。3年待ってるわ。そしたら片付けるから。」
「わかりました。」
その後、ラーシャに泣かれて困った。思わずマロンももらい泣きしたようだ。
「マロンちゃん。またね。待ってるよ!」
「うん。わかった!」




