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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
グラッセ王国
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グラッセ王国のジェイムス国王

 オーク討伐を終えたオレ達は、宿に戻ってターシャ達と合流した。そして、全員で美味しく晩御飯を食べて、もう一度お風呂に入って寝た。翌日、あらためてオレ達は街を散策することにした。



「公爵家の統治がいいのかもしれないけど、活気があってやっぱり賑やかよね。」


「そうですね。ターシャさんは王都以外の街に行ったことがあるんですか?」



 ターシャがなんか気まずそうにしている。



「私は王都以外に行ったことがなくて。」


「そうなんですね?でも、どうしてこの国で暮らそうと思ったんですか?」


「エルフ王国から追い出されたんですよ。」



 なんか意外な答えだった。他のみんなも驚いていた。するとラーシャが聞いた。



「お母さん。私も知りたい。どうして追い出されたの?」


「私がね。あなたのお父さんに恋をしたからよ。昔はエルフ族はエルフ族としか結婚してはいけなかったの。でも、私は人族の男性を好きになってしまって。」


「そうだったのか。私も知らなかった。だが、私が知っているエルフ族は人族や獣人族と結婚しているぞ。」


「そうですね。今は他の種族との交流も増えましたから、そんな決まりはないようですね。」


「なら、帰ろうと思えば帰れるんじゃないの。」


「そうですね。リンさんの言う通り、帰ろうと思えば帰れますね。でも・・・」



 なんかターシャが言いたげだったが、その後は誰も聞かなかった。暗い雰囲気になったところで、気を利かせたのかマロンがラーシャに言った。



「ラーシャちゃん。あの店を見に行く。指輪、見たい。」



 マロンとラーシャは小物を売っている屋台に走って行った。オレ達もその後をついていく。



「リン。なんかターシャさんってオレに似てるよな。」


「何が?」


「帰りたいけど帰れないって。」


「そうね。アスラは絶対に無理ね。」



 スチュワート王国でアスラは魔王としての姿を見せてしまった。だからアスラは帰れないと思っているのだが、スチュワート王国では魔王が黒龍討伐の英雄になっていることを知らなかったのである。



「ラーシャちゃん。これ可愛い。」


「こっちもいいわ。」


「いいよ。2人とも好きなものを買って。」


「本当?アスラ兄ちゃんって優しいよね。」


「うん。アスラ兄はリン姉と違って優しい。」


「ちょっと!マロン!それどういう意味よ!」


ハッハッハッハッ



 そしてみんなで昼食を食べた後、温泉街を後にしてバビロンの公爵屋敷に戻った。公爵屋敷の広い居間でみんなで話をしている。



「あ~。いよいよ明日帰るのか~。なんかもっとこの街にいたいわよね~。」


「リンさんはよほどのこの街が気にいったんですね。だったら、リンさん達は自由なんだからこの街に住んじゃえばいいじゃない。」


「どうする?アスラ。」


「ダメだよ。マロンの修行もあるし、それに冒険者の仕事だってあるだろ?」


「そっかー。残念!」



 解散した後、オレは一人でのんびりと庭を歩いていた。すると、そこにターシャがやってきた。



「いいかしら?」


「どうしたんですか?」


「昼間の件だけど。」


「ええ、いいですよ。」



 ターシャが真剣な顔で話し始めた。



「実は私の姉が今のエルフ王国の女王エリザベートなのよ。」



 これにはさすがに驚いた。



「そうなんですか~!」


「ええ。別に隠すつもりはなかったんだけどね。私は姉に言われて、人族の国がエルフ族を奴隷にしないか見張っているのよ。」


「そうだったんですね。でも、どれくらいこの国にいるんですか?」


「そうね~。もうかれこれ50年以上いるわね。」


「え~?!」


「エルフ族は長生きなのよ。20歳頃までは人族と同じなのよ。でも、その後は年の取り方が違うの。そうね~。私達の寿命が250年から300年ほどなんだけど、300歳になっても人族の40歳ぐらいにしか老化しないのよ。」


「そうなんですか~。ところで、ターシャさんって何歳なんですか?」


「あらっ!アスラ君!女性に年齢は聞くもんじゃないですよ!まあ、アスラ君ならいいけどね。私は100歳ぐらいかしらね。覚えていられないのよ。」


「え~!全然見えないですよ!」


「ありがとう。」



 ここでターシャが聞いてきた。



「アスラ君もリンさんもマロンちゃんも人族じゃないわよね?」


「えっ?」


「隠してもダメよ。これでも私はエルフの王族よ。魔眼が使えるんだから。」


「そうなんですか~。でも、オレ達のことを話すわけにはいかないんですよ。絶対に。」


「そうなのね。まあ、アスラ君達の種族がなんであろうと悪の存在じゃないからいいけどね。これ以上は聞かないわ。」


「ありがとうございます。」



 そして翌朝、オレ達は馬車で王都バビロンに向かった。



「アスラ!ちょっと気になることがあるんだ。」


「なんですか?」


「この前のオークなんだがな。あの近くには本来オークはいないんだよ。」


「どういうことです?」


「あのオーク達はどこからかやってきたとしか思えないんだ。」



 すると、リンが言った。



「多分、強力な魔物が現れて住処を追われたのよ。」


「その通りだ。私もリンと同じ考えだ。だが、もしそうだとすると、それがどこかってことなんだが。」


「オークが出たのは温泉街の西側ですよね?もしかすると・・・」


「やはり気付いたか。さすがアスラだな。王都バビロンの北側には広大な森がある。オーク達はそこにいたんではないかと思う。」


「だとすると、王都の北側に強力な魔物が現れたってことよね?」


「ああ、リンの言う通りだ。私は王都に戻ったらすぐに王城に向かうよ。陛下に報告しないといけないからな。」



 そして馬車は何の問題もなく王都バビロンに到着した。解散した後、オレとリンとマロンは自分達の家に帰った。



「あ~。我が家が一番寛ぐな~。」


「そうね~。なんだかんだ言ってもやっぱり我が家よね~。」


「リン姉。言ってることが違う!あの街に残りたいって言ってた。」


「いいのよ。マロン。人の気持ちは常に変化するんだから。」



 3人とも相当疲れていたらしく、その日はすぐに寝たのだが、起きたらお日様が高い位置まで昇っていた。オレ達3人は冒険者ギルドに行く前にターシャの店に立ち寄ることにした。すると、よろず屋にアレクシアと20代半ばの若い男性がいた。



「おはようございます。みなさん。」


「おはよう。アスラ君。リンさん。マロンちゃん。」


「そちらの方は?」



 するとアレクシアが答えた。



「ああ、私の幼馴染のジミーだ。」


「僕はジミーだよ。君がアスラ君だね。噂はアレクシアから聞いているよ。」


「はい。オレがアスラです。こっちはリンとマロンです。」


「思っていたよりかわいい顔してるんだね?アレクシアからすごく強いと聞いていたから、もっと筋肉粒々でマッチョな男性を想像していたよ。」


「別にオレはそんなに強くないですよ。」


「そうなのかい?でも、ギルドマスターのバンコクからも聞いたよ。短時間にキングクラブを5匹も討伐したんだろ!」


「別にオレ一人で討伐したわけじゃないですから。」



 どうやらこの人はギルドマスターとも仲がいいようだ。騎士団長のアレクシアがよそよそしいのも気になる。もしかするとこの人は・・・・。オレはあえて国王の名前で話しかけた。



「あの~。失礼ですけど、ジェイムスさん。」


「なんだい?アスラ君。」



 やはりこの人はグラッセ王国の国王ジェイムスだ。



「ジェイムスさんって国王陛下ですよね?」



 すると、ターシャもラーシャも驚いたようだ。



「どうしてわかったんだい?」



 オレは片膝をついた。リンとマロンは立ったままだ。



「リン!マロン!頭を下げて!」



 リンとマロンが慌ててオレの真似をする。



「いいんだよ。3人とも。今はお忍びなんだから。でも、どうしてわかったんだい?」


「アレクシアさんの態度もおかしかったし、ギルドマスターのバンコクさんを呼び捨てにしていましたから。」


「なるほどね。君は強いだけでなく頭もいいみたいだね。でも、その挨拶の仕方は貴族の作法だよね。どうして君が貴族の作法を知ってるんだい。」



 しまった。小さいころからマイヤーに教え込まれたことが行動に出てしまった。



「見よう見まねですよ。よく貴族の方が挨拶しているのを見ましたから。」


「そうかな~。貴族の作法はそんなに簡単じゃないと思うんだけどな~。それに君はスチュワート王国から来たんだろ。」


「はい。」



 するとジェイムスの目が真剣になった。



「確か~、スチュワート王国で金色の髪で緑の瞳をしているのは、ホフマン侯爵家の人間だけだと思うんだがね~。」


「そ、そ、それは~」



 侯爵?どういうことだ?お父様は伯爵だったはずだ。



「そうか。ホフマン家が『侯爵』と聞いて驚いているということは、事情を知らないようだね。10年前、スチュワート王国ではカザリオン侯爵家とフランクリン辺境伯家が反乱を起こしてね。それを国王軍が鎮圧したのさ。その功からホフマン家は侯爵に陞爵したんだよ。」


「オレ達はスチュワート王国の田舎に住んでましたから、よく知らないんです。」



 オレが惚けるとジェイムス国王はさらに続けた。



「その反乱の際に黒龍と魔王が現れてね。魔王が黒龍と戦って同士討ちになったようだけど、最後に『黒龍殺しの英雄シュバルツ』が黒龍を討伐したらしいよ。魔王も黒龍もその場で光の粒子になって消えたんだってさ。」


「そうなんですか~。なら、黒龍も魔王も滅んだんですね。」


「ま~。そうだね。でも不思議なんだよ。その魔王になったのは、今話をしていたホフマン侯爵家の一人息子のアスラっていう少年らしいんだ。」


「アスラですか?偶然ですね。スチュワート王国にはよくある名前ですから。それに、それって10年前の話ですよね?10年前、オレはまだ5歳ですよ。」



 絶対にここで認めるわけにはいかない。認めてしまえばこの国から出て行かなければいけなくなる。



「まあ、これ以上は詮索しないよ。アレクシアからもバンコクからも君は善人だと聞いているからね。君が魔王であるはずがないよね。」



 最後の言葉にマロンの顔がゆがんだ。マロンにとっては魔王は英雄であり、憧れの存在なのだ。するとリンが口を挟んだ。



「あなた方は魔王は悪だと思ってるんでしょ!誰が決めたのよ!確かに大昔にいた魔王の中にはそういう存在もいたかもしれないわね。でも、人族はどうなのよ!権力争いで戦争を起こしたり、エルフ族達を誘拐したり、同じ人族を奴隷にしたり、よっぽど人族の方が悪じゃないの!」


「君は確か~。リンさんと言ったね。なんかまるで君は人族じゃないみたいな言い方だよね。」


「私は人族よ。『今はね!』」



 リンの言葉にみんなが驚いたようだ。国王陛下も目を丸くしている。恐らくリンの存在が高貴な存在であると認識したのだろう。



「わかったよ。このグラッセ王国は君達を迎え入れよう。これからもこの国の民のために魔物の盗伐をお願いするよ。」


「はい。」



 ジェイムス国王は帰り際に一言言った。



「いつの日か私もナデシア様に会ってみたいものだよ。ハッハッハッハッ」



 そしてオレ達は冒険者ギルドに行った。馬車の中の話が気になったのだ。その途中、オレはリンにお礼を言った。



「ありがとうな。リン。」


「いいのよ。本当のことだもん。」


「アスラ兄は悪くない!魔王様は善!」


「ありがと。マロン。」



 オレは2人の頭を撫でた。


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