古代遺跡の街バビロン
マロンの修行のために古代遺跡の街バビロンに行くことになった。バビロンはアレクシアの実家がある海辺の街だ。ターシャとラーシャも一緒に行くことになり、愉快な旅行になりそうな感じだ。
「いよいよ。今日ね。」
「ああ、マロンは?」
「とっくに起きてるわよ。」
どうやらリンもマロンもよほど楽しみなのだろう。いつもならオレが起こさないと起きないくせに、しっかりと起きて準備をしていた。
「アスラ!早くしなさいよ!行くわよ!」
荷物は全てオレの空間収納に仕舞った。おかげで手ぶらだ。オレ達が行くとすでに馬車が到着していた。どうやら馬車は公爵家の物のようだ。
「お待たせしました。」
「遅いぞ!すでに2人とも馬車に乗って待ってるぞ!早く乗れ!」
「はい。」
すでに馬車にはターシャ、ラーシャが乗っていた。最後にアレクシアが乗って出発だ。馬車は海沿いの道を走る。潮風が馬車の中に吹き込んできて物凄く気持ちがいい。
「ところで、アスラ。古代遺跡に何の用事があるんだ?」
「特に用事はないんですけど、ここにいるマロンの訓練をしたくて。」
「そうなのか?確かにあの辺りには魔物が多いからな。私としても助かるがな。」
馬を休ませるため定期的に休憩をとる。外にいるとアレクシアが声をかけてきた。
「アスラ。捕縛した奴らから聞いたが、お前もリンも相当な腕のようだな。私と模擬戦をしてくれないか。」
アレクシアはこの国の騎士団長だ。この国でも最強の武人の一人なのだ。そんな彼女に勝ってしまうのはまずい。だが、手を抜いて試合をすればすぐに見抜かれてしまう。オレが困っていると、マロンが言ってきた。
「アスラ兄と試合する前に、私と試合して!」
「マロンとか言ったな。お前はまだ修行中だろ?」
「大丈夫。私、試合してみたい。」
審判はリンが務めることにした。木剣があるわけではないので、ある程度になったら試合終了とすることにした。
「始め!」
リンの合図とともにマロンが動く。マロンが素早くアレクシアの懐に入ろうとしたが、アレクシアがそれを許さない。
カキン カッキン
最初はマロンの素早い動きに戸惑っていたが、どうやらスピードに慣れて来たようだ。マロンが攻撃を仕掛けたが、アレクシアはそれを受け止めるのでなく受け流した。マロンが勢いよすぎて体制を崩しかけた瞬間、アレクシアが下から剣を振り上げた。
バッキーン
マロンの剣が大きく弾かれ、アレクシアの剣がマロンの喉元に突き付けられた。
「降参!」
アレクシアが転んでいるマロンに手を差し出した。マロンもそれを掴んで起き上がった。
「マロン。お前何歳だ?」
「13歳。」
「13歳でその強さか。将来が楽しみだな。」
「でも、負けた。いつかは勝てるようにする。」
「そうだな。ハッハッハッハッ」
再び馬車に乗って移動し始めた。馬車に戻ったマロンの目が少しうるんでいた。よほど悔しかったのだろう。
「マロン。アレクシアさんはこの国で最強の戦士だ。今は勝てなくても仕方ないさ。オレ達と修行すればきっと強くなるから。」
「うん。」
それからも何度か休憩して、その日の夕方にバビロンの公爵屋敷に到着した。さすがに公爵屋敷は大きい。門の入口から屋敷の前まで公園の中にいるようだった。
「着いたわよ。」
「ワー!大きいな~!お母さん。あっちに噴水があるよ!」
「そうね~。荷物を置いたらマロンちゃんと一緒に遊んでもらったら。」
「マロンちゃん。後で一緒に遊ぼ!」
「わかった。」
とりあえず、オレ達は屋敷の中に案内された。玄関ではメイド達が待っていた。
「お帰りなさいませ。お嬢様。」
「4~5日ほど滞在する予定だ。みんなを部屋に案内してやってくれ!」
「はい。」
どのメイド達も手際がいい。さすが公爵家だ。オレ達の部屋は2Fの奥に並んでいた。窓からは広い庭と噴水が見えた。部屋で寛いでいるとリンとマロンがやってきた。
「アスラ!みんながいたらマロンの修行はできないわ。夜にしましょ。」
「そうだな。」
「夜?警備がいる。抜け出せない。」
「大丈夫だ。夕ご飯を食べたら、修行の準備をしてオレの部屋に来てくれ。そしたらわかるから。」
「わかった。」
夕食前に時間があったので、オレもリンもマロンと一緒に庭に出た。これだけ広い庭なのに雑草が生えていない。よほどまめに手入れをしているのだろう。マロンはラーシャと一緒に庭を走り回っている。マロンは表情こそ薄いが、結構楽しんでいるようだ。すると、アレクシアとターシャがやってきた。
「明日の予定だがな。私達は街に買い物に行ってくる。アスラとリンとマロンは古代遺跡に行くんだろ?」
「そうですね。古代遺跡はここから近いんですか?」
「ああ、そうだな。歩いて1時間ほどのところだ。ただ、この前も言ったが結構魔物が多いから気をつけろよ。」
「はい。」
その日、本当はロッテンシティーの森にマロンを連れて修行に行くつもりだったが、疲れていたのでそのまま寝ることにした。そして翌朝、オレとリンとマロンは古代遺跡に向かった。3人とも身体強化の魔法をかけて走って移動する。1時間の距離と言われたが30分ほどでついてしまった。
「アスラ。あれがそうじゃないの?」
「そうだな。」
目の前には林がある。木の間からその先に巨大な丸い柱が倒れているのが見えた。オレ達はその柱に向かって歩き始めた。
キャッキャツキャッ
オレ達が木々の間を歩いていると、真っ赤な目をしたサルの魔物レッドアイモンキーが群れで襲い掛かってきた。さらに、その奥からホーンウルフの群れがやってくるのが見える。アレクシアが言った通りだ。この辺りには魔物が多いのかもしれない。
「リン!マロン!気をつけろ!」
「了解!」
オレとリンは剣に魔法を付与して戦う。だが、マロンは剣に魔法を付与していない。そのため、どうしても切れ味が悪くなってしまっているようだ。レッドアイモンキーがマロンを集中的に攻撃し始めた。石を手に取り、それを投げつけてくるのだ。
バコッ ボコッ
「アスラ!このサルども、本当に邪魔ね。」
「ああ。」
「魔法で片付けるさ。」
レッドアイモンキーはオレ達から距離をとるために木の上にいる。剣での攻撃がしづらい場所にいるのだ。
「敵を貫け!『シャドウアロー』」
オレの頭上に現れた黒い矢がレッドアイモンキーを射抜いていく。足や腹を射抜かれたレッドアイモンキーが地面に落下する。
ギャッ ギャッ ギャ
「マロン!今だ!」
マロンが地面に落下したレッドアイモンキーを切り裂いていく。その様子をホーンウルフが見ていたが、形勢が不利と見るや一斉に逃げ出した。
「ふー!終わったな。」
「そうね。」
「ごめん。足手まといだった。」
オレ達に助けられたマロンが少し悲しげだ。するとリンがマロンの指導を始めた。
「マロン!誰もいないときは魔法を使いなさいよ!剣に魔法を付与できないの?」
「できない。やり方知らない。」
「いい。教えてあげるから!ちゃんと聞いてなさいよ!」
「うん。」
「体の中の魔力を手に集中させるのよ。そして、剣が手の延長のような感覚で手に得意な魔法を流し込むのよ。やってみなさい!」




