魔族の少女マロン登場!
ラーシャ誘拐事件以来、何故かラーシャがオレ達の家に毎日のように遊びに来るようになった。そして、公爵達の処分の報告のためアレクシアが尋ねてきた。
「アスラ殿。リン殿。二人には大変世話になったな。感謝する。」
何故か、オレもリンも『殿』つきになっていた。
「アレクシアさん。『殿』はやめましょう。今まで通りで結構ですから。」
「そうか。だが、2人のことを少しでも疑った自分が許せないのだ。」
「大丈夫ですよ。オレ達気にしてませんから。」
「そうか。」
アレクシアの話によるとドッジ公爵とその側近達は死罪、犯罪に加担した兵士やスパイダーのメンバーは国家奴隷として採掘場に連れて行かれたようだ。
「ところで二人に聞きたいのだが、二人は一体何者なんだ?」
「どうしてですか?」
「捕らえた者達に聞いたのだが、50人もの兵士達をほんの数分で倒したそうではないか。それに、アスラのあの闘気は人間技とは思えない。そなた達の国に現れたという黒龍や魔王となんか関係があるのか?」
「この前も言いましたけど、オレ達は田舎に住んでいたから良く知らないんですよ。それに黒龍も魔王も10年前に討伐されたんですよね?」
「確かにな。スチュワート王国の『英雄』によって討伐されたとは聞いているが。」
「それにまだ魔王がいるなら、聖教国で勇者が召喚されるんじゃないですか?」
「アスラの言う通りだな。勇者が召喚されたという話は聞いてないな。」
「でしょ?オレ達には関係ありませんよ。」
「それもそうだな。私の考えすぎのようだ。すまない。」
「いいんですよ。それより、オレ達そろそろ冒険者の仕事に行きたいんですけど。」
「ああ、すまなかった。」
アレクシアは兵士達を連れて帰って行った。オレとリンも冒険者ギルドに出かけた。ギルドに到着すると今までとは反応が違った。オレ達の姿を見た瞬間、酒場にいる冒険者達に緊張が走った。なにせ、オレもリンもSランクになったからだ。
ラビーが話しかけてきた。
「アスラ君、リンさん。今日も依頼?」
「はい。何か困っていることがあれば依頼を受けたいんですけど。」
「そうね~。最近は王都周辺には強力な魔物もいないのよね~。」
「わかりました。なら、掲示板を見てみます。」
掲示板を見ていると12~13歳ぐらいにしか見えない少女がいた。だが、彼女からは異質な魔力を感じる。
「リン。これにしよう。」
オレ達は王都の西の森に現れたキングベアの討伐を受けることにした。西の森に向かう途中でオレはリンに聞いた。
「さっきギルドにいたあの少女って人族なのか?」
「違うわね。やっぱりアスラも気づいたんだ。あの子は魔族よ。ほとんどの魔族は人族とお同じ姿をしているのよ。でも、魔力が多くて強力な魔法を使えるの。だけど変ね。この大陸に魔族がいるなんて。どうしたのかしら?」
「ターシャさんのようなエルフ族よりも魔法が使えるのか?」
「同じぐらいじゃないのかな~。でも、個人差があるわよ。エルフ族も魔族もね。」
「因みにオレは人族だよな?」
「どうかな~。魔王になっちゃったんだから魔族になったかもね。」
「え~!種族が代わることがあるのか?」
「あなた何も知らないのね!前に話したけど、エルフ族やドワーフ族、獣人族は妖精から進化した妖精族よ。」
「それは知ってるさ。」
「なら魔族のことも知ってるんじゃないの?」
「知らないよ。」
「なら教えてあげるわよ。基本的に魔族って言うのは人族から派生した種族なの。例えばバンパイア族は、始祖が人の血を吸って大勢を殺めた罪から落とされた種族ね。中には始祖の天使が地上に落とされた堕天使族なんて言うのもいるけどね。」
「そうなんだ~。お父様の書棚にはそんなことが書かれた本はなかったよ。」
「あまり知られていないからね。ただ、ほとんどの魔族は人族の中で魔力が強大になった人達よ。魔女のようにね。」
「へ~。知らなかったよ。」
そしてキングベアが潜んでいる森に行くとギルドにいた少女がいた。
「待ってた!魔王様!」
オレもリンも背中の剣に手をかけた。
「なんのことかな~。オレには心当たりがないんだけど。」
「あたしは誤魔化されない。魔王様が現れたって聞いて魔大陸から来た。すごく探した。でも見つけた。」
“リン!あの子はやっぱり・・・”
“そうね。間違いなく魔族よ。どうするの?”
「どうして魔王を探してたんだ?」
「魔大陸には2つ国がある。でも、絶対的な強者がいない。だから争うの。あたしは魔王様のように強くなる。そして争いを止めるの。お願い!あたしを強くして!」
「君の名前は?」
「マロン。」
「マロンか。オレはアスラだ。彼女はリンだ。」
「魔王様は魔王様。」
「ダメだ!オレのことはアスラと呼んでくれ!そうでなければ断る。」
「わかった。アスラ様。」
「アスラだ!いいな!」
「わかった。アスラ兄。」
「それでいい。えっ?!アスラ兄?・・・・まあ、いいか。」
オレ達は3人で森の中に入って行った。魔力感知でキングベアを探した。すると、意外にも近くに反応があった。
「アスラ~。いいの~。本当に。」
「仕方ないじゃないか。あの子がみんなに言いふらしでもしたら、そっちの方が問題だよ。」
「そうだけどさ~。」
「それにあの子は魔大陸の平和を望んでいるんだろ!立派じゃないか!」
「まあね。」
ただ、今現在のマロンの実力がどの程度なのか確かめる必要があった。
「マロン。この先にキングベアがいる。倒してみろ!」
「うん。」
マロンが腰の剣を抜いてゆっくりとキングベアに近づいていく。キングベアが気づいたようだ。キングベアもこちらに向かってきた。マロンはまるで宙を舞うかのような動きでキングベアに斬りつけた。だが、キングベアの硬く鋭い爪で防がれる。逆にキングベアがもう片方の手で攻撃を仕掛けた。
バッキン
マロンが剣で防いだが力負けだ。大きく弾き飛ばされた。そこをキングベアが速度を上げて襲い掛かる。堪らずマロンは魔法を使った。
「斬り裂け!『エアーカッター』」
魔法の威力も今一つだ。キングベアの動きを止めることはできたが、致命傷にはならない。
「アスラ。限界のようよ。」
「ああ、わかってる。」
「マロン。後ろに下がっていろ。」
マロンがオレの後ろに下がった。キングベアの標的がマロンからオレに変わったようだ。咆哮をあげて攻撃してきた。
グオー グオー
オレは背中の剣を抜いて剣に魔法を付与する。剣からはゆらゆらと真っ黒の炎が揺らめいている。そして剣を横に振ると、少し遅れてキングベアの身体が上下2つに分かれた。
ドカッ
「やっぱりアスラ兄は強い!思った通り!」
「何言ってるのよ!こんなのアスラや私には準備体操にもならないわよ。」
「本当?」
オレはマロンに笑って見せた。マロンはしばらく下を向いて考えた。そしてオレを見て口を開いた。
「アスラ兄!私を鍛えて!」




