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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
グラッセ王国
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スパイダー討伐作戦(2)

 みんながスパイダーについて話し合ってから数日後の朝、ターシャが慌ててオレ達の家にやってきた。



「そんなに慌ててどうしたんですか?ターシャさん。」


「ラーシャが、ラーシャがわざと誘拐されたようなんです。」


「どういうことですか?」


「朝起きたらこんな手紙が置いてあったんです。お願いです!アスラ君!リンさん!ラーシャを、あの子を助けてください!あの子は私の命なんです!!!」


「わかりました。オレとリンで何とかします。バンコクさんとアレクシアさんに連絡してください。」


「わかりました。」



 オレは魔力感知でラーシャの居場所を探した。



「リン!行くよ!」


「了解よ!」



 オレ達は急いで家を出た。ターシャはバンコクと合流してアレクシアのところに向かった。



「アスラ!居場所が分かったんでしょ?」


「ああ、ドッジ公爵の屋敷だよ。」


「やっぱりね。急ぎましょ。」



 ドッジ公爵の屋敷は貴族街の中でも最も大きい。オレの住んでいた王都ビザンツの伯爵屋敷よりも数倍大きい。屋敷の門の前では兵士達が見張っている。



「どうする?」


「姿を消して侵入するしかないだろ!」



 2人で姿を消して塀の中に侵入すると、建物がいくつもあった。どうやら一番奥の大きな建物が公爵の屋敷のようだ。塀の中にも屋敷の周りにも大勢兵士達がいる。ラーシャの反応は公爵の屋敷ではなく、その隣の建物から感じられた。



「リン。向こうの屋敷のようだよ。」


「急ぎましょ。」



 オレ達は姿を消したまま屋敷の中に入って行ったが、どこにも見当たらない。すると、奥の部屋から人相の悪い男達が出てきた。どうやらスパイダーのメンバーのようだ。



「今回のあのエルフの娘は相当な高値が付くぞ!」


「そうだな。売り渡す前に味見したいとこだがな。」


「馬鹿!そんなことしてみろ!こっちの命がないぞ!」


「そりゃそうだな。ハッハッハッハッ」


「だけどよ~。あの公爵様もえげつないよな~!気に入った娘は売り渡す前におもちゃにしてるんだろ!」


「しー!誰かに聞かれたらどうするんだ!」


「誰もいやしねぇよ。」



 男達の会話を聞いていて、オレの中に怒りがどんどん込み上げてくる。壁や天井がミシミシと音を立て始めた。



「アスラ!アスラ!」



 オレはリンの声で我に戻った。そして、2人の前に姿を見せた。急にオレが現れたことに男達は驚いて後ろに転んだ。



ドカッ



「お、お、おまえらいつからそこにいたんだ!」


「ずっといたさ。お前達の話はしっかりと聞かせてもらったよ。」


「おい!やばいぞ!」


「やるしかなさそうだな!」


「ああ!」



 2人は腰の剣を抜いて向かってきた。オレは剣に魔法を付与して2人の片足を斬り落とした。



スッパン


ギャー



「痛ぇよ~!」


「大丈夫だ。血は出ないようにしてある。死ぬことはない!そのままそこに居ろ!」



 そして、奥の部屋に行くとそこには誘拐された子ども達が3人縛られていた。



「アスラ兄ちゃん。助けに来てくれたの?」


「ああ、そうさ。」



 するとリンが叱った。



「ラーシャちゃん!あなたなんてことするの!ターシャさんがどれほど心配しているかわかってるの!」


「お母さんも知ってるよ。だって、お母さんと2人で計画したんだもん。」


「えっ?!」



 どうやらオレとリンはターシャに一杯食わされたようだ。あまり協力的でなかったオレ達を、どうしても巻き込みたかったのだろう。それだけオレ達の力を信じているということだ。



「ターシャさんて何者なんだろうな。」


「そんなこと後でいいでしょ!それよりもここから脱出よ。」



 オレ達は猫耳族の少女と狐耳族の少女、それにラーシャを連れて建物の外に出た。すると、オレ達を見つけた兵士達が大きな声を出した。



「侵入者だー!侵入者がいるぞー!」



 オレ達の前には兵士達やスパイダーのメンバー達がぞろぞろと集まってくる。そして、公爵の屋敷からニタニタと笑いながらドッジ公爵がやってきた。ドッジ公爵の周りには腕の立ちそうな兵士が5人ほどいる。そのリーダーのような男が言った。



「お前達は何者だ?」


「そんなこと言うわけないだろ!」


「まあ、関係ないがな。どうせ男のお前だけはここで死ぬんだからな。その後で、そっちの小娘はたっぷりと可愛がってやるさ。」



 兵士達がじりじりと迫ってくる。



「どうする?アスラ。」


「結構な人数がいるからな~。」


「なら、少しだけ力を出しちゃおうか?」


「そうだね。少しだけならいんじゃないかな。」



 すると、公爵を守っていた兵士達が怒り出した。



「貴様らなめているのか!ごちゃごちゃと訳のかからんことを!もういい!こいつらを殺せ!」



 兵士達が一斉に襲い掛かってきた。リンが後ろをオレが前を相手する。オレもリンも剣を抜いて兵士達の間を駆け抜ける。すると、片手、片足を斬り落とされた兵士達が大声でわめきながら地面を転がった。



ギャー



「た、助けけてくれー!」



 公爵の前にいた兵士達がオレに向かって剣を振ってきた。



カッキン



 少しは歯ごたえがありそうだ。だが、ただ速いだけでオレの敵ではない。



スッパン


バキン


ドス



 偉そうにしていた兵士達も地面を転がっている。残るは公爵だけだ。



「お、お、お前達は何者だ?わしは公爵だぞ!こんなことをしてただで済むと思っているのか!」



リンが公爵の右腕を斬り落とした。



ギャー



「悪党はそのまま苦しんで死ねばいいのよ。でも、楽には殺さないわよ!あなたが苦しめてきた人達の分もしっかり苦しんでもらうからね。」



 なんかリンが切れてる。



「お金ならいくらでもやる!だから命だけは助けてくれ!」



 そこにアレクシアが兵士を連れてやってきた。



「ドッジ公爵!誘拐の容疑であなたを捕縛します。」


「何を言う!こいつらがその子ども達を誘拐しようとしていたんだ!わしは助けただけではないか!早くこの者達を捕らえよ!」



 オレの我慢が限界のようだ。全身から怒りのオーラが溢れ始めた。辺り一帯に冷たい空気が流れ込んでくる。公爵も公爵の部下の兵士達も、そしてアレクシアの連れてきた兵士達までもが怯え始めた。



「アレクシアさん。こいつはダメですね。ここで始末してもいいですか?」

 

「アスラ!アスラ!ダメだから!」



バッコン



 リンが力一杯オレの頭を殴った。正気を取り戻したオレの身体からオーラが消えていく。



「アスラ!こいつらの処分は国で行う。協力感謝する。連れて行け!」



 兵士達が公爵とその部下達、スパイダーのメンバー達を連行して行った。残ったオレとリン、それと子ども達はそのまま公爵屋敷を後にしてよろず屋に戻った。そこにはターシャ、バンコク、カレラ、カエデがいた。



「お帰り。ラーシャ。」


「お母さん。やっぱりお母さんの言った通りだったよ。アスラ兄ちゃんもリン姉ちゃんもすごく強かった。」


「そうでしょ。ごめんなさいね。アスラ君。リンさん。騙すようなことをして。」


「いいんですよ。この国が少しでも平和になれば。なっ!リン!」


「そうね。でも、報償はしっかりもらうから。それよりスラム街のアジトの方はどうしたのよ!」


「冒険者達で殲滅したさ。」


「やればできるじゃん。」


「そうだな。」



ハッハッハッハッ



 突然、バンコクが真剣な顔になってオレとリンに言った。



「アスラ君。リンさん。もしかすると、報酬だけじゃなく、王城に呼ばれて貴族様になるかもしれないぞ!」



 オレとリンはお互いの顔を見て同時に言った。



「それはお断りします!」


「やっぱりな。そういうと思ったよ!」



ハッハッハッハッ



 その後、獣人族の子ども達は冒険者ギルドで預かって、カレラとカエデが親を見つけ出して親元へと返した。2人の両親は泣いて喜んだと聞いた。


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